【本編完結】あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~

一ノ瀬麻紀

文字の大きさ
55 / 86
星司と月歌(スピンオフ1)

10. ずっと友達

しおりを挟む
由比ゆいくんは、本当にそれでいいのか……?」
「うん、いいよ。それよりも、佐久さくくんと飯田いいだくんに再会できて、元気そうな姿を見れたほうが嬉しい!」

 由比くんは、にかーっとした笑顔でそう言った。
 森島もりじまくんを始め、ご両親や周りの人たちに守られ、大切に育てられたのだろう。こんなに純粋で真っ直ぐな人は、そうそう出会えるものではないと思う。
 そして、由比くんは自分がそうしてもらったように、沢山の人を幸せにしてきたのだろう。
 ……僕もその中のひとりだ。友達がいなかった僕の初めてのオメガの友達。あんなことをしてしまったけれど、一緒に過ごした時間はかけがえのない大切な時間だ。

「正直……すぐに、普通に接するというのは、難しいかもしれない。二度と会うことはないと思っていたのに、偶然にも再会してからの急展開すぎて、俺たちの感情も追いついていない」

 星司せいじくんは、そこで一呼吸置いた。森島くんも、由比くんも、口を挟まずに黙って聞いてくれている。

「……それでも、由比くんがそう言ってくれるのなら。……これからも、月歌るかの友達でいてやってほしい」

 星司くんはそう言いながら立ち上がると、深く頭を下げた。
 僕もその隣で、二人に向かってゆっくりと頭を下げた。

「もうやだなー。顔を上げてよ~。飯田くんも佐久くんも、ずっと友達だよ!」

 顔を上げると、嬉しそうににこにこ笑う由比くんと、その由比くんを優しいほほ笑みで見守る森島くんがいた。


 その後、まだなんとなくギクシャクするものの、少しずつ自然に話せるようになってきた。今日急に慣れ親しんだ友達のように話せるかと言うと、それはまだ無理だけど、これからも何度も会えるのだから、少しずつ慣れていけばよいと思う。

「あ! そうだ! おれ、森島麻琴まことになったから、名前で呼んでほしいんだ」
「二人は結婚したんだね。おめでとう」
「ありがとう! 飯田くんたちは?」
「うん、僕たちも夫夫ふうふになったよ。……だから、僕も名前で呼んでくれると……嬉しいな」

 ずっと名字で呼び合っていたから、なんか気恥ずかしくてモジモジしてしまう。
 それに、ほんと、もう二度と会うことはないだろうと思っていたから、また名前を呼び会える日が来るとは思っていなかったし、名字ではなく下の名前で呼べるなんて、夢みたいだ。

「えっと……月歌くん?」
「麻琴……くん?」

 二人でなぜか、語尾にクエスチョンマークを付けて、ちょっと首を傾げて名前を呼んでみた。
 そして、ちらっと麻琴くんの顔を見ると、同じように僕の方をちらりと見て、照れたように笑った。

「改めてよろしくね!」

 そう言って麻琴くんの差し出した手を、僕は握り返した。とても優しいぬくもりだった。

「佐久くんのことも、星司くんと呼ばせてもらうね。佐久くん二人だもんね。……うちの蒼人も下の名前で呼んでね。おれも森島だからさ」
「よろしく」

 ニコニコの麻琴くんの隣から、すっと手が差し出された。相変わらず表情の変化が少ないけど、さっき麻琴くんに向けていたほほ笑みは慈愛に満ちていた。本当に麻琴くんのことが大好きなんだろうな。

「よろしくお願いします」

 僕と星司くんは同時にあいさつをすると、順番に森島くん……じゃなくて蒼人くんとも、握手を交わした。

「では、今日はもう帰ります。後日町長さんに連絡をしますので、改めて詳細をお話させていただきます」

 蒼人くんは再びお仕事モードになると、そう言って会釈をして立ち上がった。

「じゃあ、帰ろうか」
「うん。今日は楽しかった! 星司くん、月歌くん、またね!」

 蒼人くんが手を差し出すと、嬉しそうに麻琴くんがその手を取り立ち上がった。そして僕たちの方を見て、嬉しそうに手を振った。
 僕も手を振り返すと、車に乗り込む二人を見送った。

「本当に、良かったのかな……」

 完全に二人の乗る車が見えなくなってから、僕はポツリとつぶやいた。
 僕の言葉に、星司くんは繋いだその手をぎゅっと握りしめた。

「俺達のしてきたことは一生忘れてはいけない。けど、あの二人が友達だと言ってくれる限りは、偽りなく接していけたらいいなと思っている」
「うん……そうだね」

 次に会った時は、この子のことも伝えよう。
 僕は少しふっくらしてきたお腹を優しく撫でた。
しおりを挟む
感想 145

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

処理中です...