【完結】VRゲームの世界でキミを待つ

一ノ瀬麻紀

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04 街を探索

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「ユキが入ってるそのバッグは『マジックバッグ』と言って、たくさん物が入るんだ」

 ユキが寝ているバッグを指さすと、ラパンが説明をしてくれた。

「見た目より収納スペースは広いんだ。中で仕切られていて、常温・冷蔵・冷凍スペースがある。ほかにも色々分類ができて使いやすいんだよ。シロの持っているそのマジックバッグは、高性能のものだな」
「すごく便利なんだね。僕、使いこなせるかな。それに……ユキは中に落ちないの?」
「大丈夫。普段は、普通のバッグとして使えるようになってるからね」
「良かった。それなら安心だ。でも……」

 僕は言いかけた言葉を、そのまま飲み込んだ。
 ユキがここにすっぽり収まっていたら、物の出し入れが大変そうだなぁ……と思ったけど、やっぱり可愛いからいっか。

「ここは、武器屋と防具屋が一緒になっている。体験版では今の装備で十分だから、改めて買う必要はないだろう」

 1つの建物で、武器屋と防具屋の出入り口が分かれていた。そして店頭のショーウインドウには、大剣や小型のナイフが飾られていた。
 うわぁ、かっこいい!
 ラパンは買わなくて良いとは言ったけど、やっぱり中を見てみたいなぁ……。
 僕が名残惜しそうに武器屋の方を見ていると、それに気づいたラパンは歩き出した足を止めた。

「気になるところは、また後でゆっくりまわればいいさ」
「うん!」

 ラパンは、すごく気遣いができる人なんだろう。いつも僕のことをすごく気にかけてくれるし、何かあるとすぐ気づいてくれる。
 まぁ、出会い方があんなだったし、僕は危なっかしくて、ちゃんと見ていないとって心配されているのかな。
 やっぱり僕って、現実世界だけじゃなく、ゲームの世界でもみんなに心配をかけちゃうのか……。

 なんか急に申し訳なくなって、気持ちが少し萎んでしまった。

「どうした? 何かあったか?」
「え? あ、ああ。大丈夫だよ! 何もないって。……さ、次は何かな?」

 心配かけないようにしないと!
 僕は、萎んでしまった心を奮い立たせるようにして、元気に歩き出した。

「ここは食事処。ちょっと入ろうか」
「うん! なんかすごくいい匂いがする!」

 気を取り直して、食事処の中に入っていく。
 店内には食欲をそそる匂いが立ち込めていた。
 こんな匂いまでリアルって、本当にすごい。一気にお腹が空いてきた。

 案内されたテーブルに座ると、あたりを見まわした。
 冒険者らしい人から、親子連れまで、いろんな人たちがいる。

「ここは、食事もできるし、アルコール提供もしている。色々な人が集まってくるから、情報収集にもいい場所なんだ」
「情報収集? RPGでよく見る酒場みたいな?」
「そうそう。それと一緒だな。今は体験版だからNPCだけど、製品版では大勢のプレイヤーが集まってくる。クエストの情報だったり、時には地図にも載っていない街やダンジョン情報が得られたりするんだ」
「地図にも載っていない街!? すごい!」

 ラパンの話を聞いているだけで、ワクワクが止まらない。
 この世界では走っちゃダメ! とか、そんな危険なところに行ってはいけない! とか、僕を止める人はいないんだね!
 ――僕は、自由なんだ!
 嬉しくて、今すぐにでも思い切り外を走りたい気分だった。

「これは体験版だから、できることは限られてしまうけど、それでも十分に楽しめるはずだ」
「街の中の探索と、この辺りの草原をぐるぐる回ってるだけでも、何日も過ごせそうだよ!」

 僕がニコニコしながらそう言うと、ラパンはぷっと吹き出した。

「流石にそれだけじゃ、体験版をプレイしてる意味がないだろ」
「あはは。そうだね」
「まずは、住人の声に耳を傾けてみるんだ。何か気になる話題はないか?」

 ラパンが言うように、僕は周りの声を拾うように意識を集中した。うさぎ獣人だからなのか、周りの声がとてもよく聞こえる。ざわつく店内でも、声を聞き分けることができた。

「何か気になる話はあったか?」
「僕が気になったのは、隣街の異変についてかな」
「隣町の異変?」
「あの街だけ時が止まってしまって、住人は凍りついたように動きを止めたままらしい……と言う話です」
「なるほど、時が止まったように動かない……か」

 ラパンは少し考え込んだようにうーんと唸った後、「わかった」と小さくつぶやいた。

「よし、何か食べるか」
「うん!」
「食べる!」

 今までずーっと静かにしていたユキが、急に声をあげたから、僕はびっくりしてしまった。
 あまりにも静かにしているから、存在を忘れかけてしまったよ。ごめんね、ユキ。

「ユキ、起きたの?」
「うん、起きた! たくさん寝たから、お腹がすいたよ」
「サポートキャラって、食事とるの?」
「食べなくても大丈夫だけど、僕は食べるよ」

 ユキはそう言いながら、バッグから飛び出し、ぴょんっと僕の肩に乗った。
 鼻をピクピクさせて匂いを嗅いでいる。きっといい匂いがして目を覚ましたんだろう。

 僕は何度目かの、サポートキャラとは? という疑問を感じながらも、肩に乗ったユキを優しく撫でた。
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