【完結】君を知らないまま、恋をした

一ノ瀬麻紀

文字の大きさ
7 / 59

06 初心者の部屋

しおりを挟む
 初心者の部屋では、まず最初にパネルの見方を教えてもらい、その後自分のステータスなどについて教えてもらった。さっき受付で見たのは、やっぱりステータス画面だったみたいだ。

 そういえば、このゲームにログインしてから、まだ一度も自分のステータス画面を見てなかったなぁと思い返す。
 でもまぁ、いきなりモンスターに襲われちゃうし、助けてくれたラパンがなんでも知ってるから、全てお任せしてきちゃったんだよね。
 だけどちゃんとこの初心者の部屋で勉強して、この世界のこともっと知りたいな。せっかくVRゲームの世界に入れたんだから。

 この世界の僕を知る第一歩だと思って、ステータス画面を見たら、『うさぎ獣人 シロ』としか書いていない。レベルも不明のままになっている。
 何か職業についていると思ったのに、ちょっと残念だ。RPGゲーム好きとしては、僧侶とか魔法使いとか憧れるのに、何も肩書きがないとは……。
 ルナさんに質問したら、製品版になると、職業もあるしレベル上げもできるようになる。体験版はあくまでも、この世界を楽しんでもらうためのものだと説明してくれた。うん、ラパンもそんなこと言ってたな。

 次に説明してくれたのは、この世界の目的の一つ、クエストだ。依頼は多種多様らしいけど、RPGらしく、討伐系や採取系が多いらしい。
 けれど、子供の遊び相手になって欲しいとか、中には恋人のふりをして欲しいという依頼もあるらしい。その依頼主に何があったのか気になるところだけど……。

「正式に募集されている依頼の他に、街の住人や街の外で出会うモンスターなど、フリーの依頼もあります」
「モンスターからも依頼があるんですか?」
「モンスターの中にも、争いを好まない者もいます。その中には高い知能を持ち、独自の生活を築き上げているたちもいます」
「へぇ。びっくりです。ちょっと会ってみたいかも」

 そのあと僕たちは、戦闘の練習をさせてもらった。
 ラパンは別部屋で待機しているから、僕1人で戦わなきゃいけない。そう思って不安だったけど、なんとユキがボンッと大きくなった。ちょうど背中に乗れるくらいだ。

「ユキ大きくなれるの?」
「うん、僕はサポート役だからね。戦闘のサポートもできちゃうんだ」

 自慢げにふんっと顔をそらすと、大きくなった耳がブンっと揺れる。迫力あるなぁー。

「最初に野ネズミが登場します。まずはこの剣で戦ってみてください」

 ルナさんに渡された剣で、言われたように戦ってみたけれど、結果は散々だった。どうやら僕は、剣を使った戦闘に向いてないらしい。
 ステータス画面を見る感じだと、初期数値は魔法系の方が長けていそうだと言われた。

 体験版だから本来は平均的数値にはなるらしいけど、僕の初期値は魔法系で、特に補助魔法が得意なようだった。んー? なんでだろ……。

 補助魔法が得意らしいとわかったので、次はユキに、攻撃力と素早さを上げる魔法をかけてみた。ユキは問題なく野ネズミをやっつけた。もっとレベルの高い敵も出してみたけど、それも難なく倒した。
 サポートキャラのユキが前衛で戦って、僕が補助魔法でサポート? うーん、なんか複雑な気持ちだけど、僕には前衛は向いてないみたいだから、仕方がないか。

 でも、バッグに入って丸くなって寝てるだけだったり、起きたと思ったらお腹空いたーとご飯を食べたり、サポートらしいサポートをしてこなかったユキが、実はこんなに頼りになるとわかったのは良かったかもしれない。
 僕の前に見える頼もしい背中は、大きくなっても変わらずもふもふで、丸いしっぽも、倒した後に嬉しそうに振り返るその顔も、いつものユキだった。

「ルナさん、ありがとうございました」
「何度目かのログインでも、ご希望であればこちらを利用できますので、何かありましたらまたお越しくださいませ」
「はい、また寄らせてもらいます」

 初心者の部屋には、図書室のような部屋もあって、この世界の歴史なども見れるようになっていた。製品版では、この世界の歴史が関わる、大きな物語が動き出すらしい。
 今日はゆっくり見れなかったけど、今度また見にきたいと思った。

「シロ、俺がいなかったけど、大丈夫だったか?」

 初心者の部屋の入り口まで戻ると、心配そうにラパンが声をかけてきた。
 まるで保護者みたいだ。いや、間違ってはいないか。……でもなんか、モヤっとするのはなんでだろう。
 僕はその気持ちを振り払い、初心者の部屋であったことを話した。

「うん、大丈夫だったよ。ねぇ、ユキがおっきくなったんだよ」
「ああ、サポートキャラは、ただの案内役ではなく、従魔のような存在なんだ」
「従魔?」
「登録した時点で、シロとユキは契約したことになっているんだ」
「へー、そうだったんだ」

 知らない事実を聞かされて、僕は目を何度もパチパチと瞬かせてしまった。

 契約をすると、離れていてもコンタクトが取れるし、データなども共有できるらしい。
 僕がオフラインの時でも、ユキのデータにアクセスして、指示をしておくこともできる……って説明されたけど、僕にはよくわからなかった。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。 勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

どうか溺れる恋をして

ユナタカ
BL
失って、後悔して。 何度1人きりの部屋で泣いていても、もう君は帰らない。

ラベンダーに想いを乗せて

光海 流星
BL
付き合っていた彼氏から突然の別れを告げられ ショックなうえにいじめられて精神的に追い詰められる 数年後まさかの再会をし、そしていじめられた真相を知った時

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

処理中です...