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08 現実世界では
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気がつくと僕は、座り心地のよいチェアにゆったりと座っていた。
『お疲れ様でした。このまま終了いたしますが、よろしいでしょうか?』
AIアシスタントの声が流れると、ゲームにログインした時と同じように、目の前にパネルが現れた。
僕が『はい』を選択すると、パネルに『ログアウト完了』の文字が浮かび上がり、スッと消えた。
同時に、顔を覆っていたゴーグルが、左右から静かにスライドしながら、チェアのヘッドレストへと滑らかに収納されていった。
覆われていたものがなくなると、視界が開けて一気に明るさを取り戻す。
まだ少しぼーっとする頭を抱えながら、僕はチェアから立ち上がった。
「お疲れさま。初めてのVRゲーム体験はどうだった?」
そう言いながら部屋に入ってきたのは、僕より5歳年上の霜月昴さん。現実世界で僕のことを気にかけてくれる、優しいお兄さんだ。
軽い茶髪で、明るい笑顔と優しげな瞳が印象的な昴さんは、このVRゲームの体験を勧めてくれた人だ。
「あ! 昴さん! すっごく楽しかったです!」
僕がさっきまで座っていたのは、最近評判の無重力マッサージチェアを思わせるVRマシン。身体を優しく包み込む流線型のデザインが特徴的だ。
外から見ると、まるで普通のマッサージチェアなのに、リアルVRゲームの世界に没入できるすごいマシンなんだ。
「楽しめたんだね、よかった。頑張った甲斐があったよ」
「まさかあんなにリアルだと思わなかったから、びっくりして……けほっ」
僕は興奮気味にそう話すと、少し息苦しくなって、こんこんと咳が出てしまった。
「ほら、そんなに興奮しちゃだめだろ。さぁ、部屋に戻ろう」
「は……い」
さっきまで、どんなに動いても苦しくならないし、咳も出なかったのに。
僕は自分の胸に手を当てながら、早く落ち着けるように、何度か深呼吸を繰り返した。
「リベラリアの世界では、たくさん跳ねても、全然苦しくならなかった。……明日もまたログインできるかな」
「朝の診察で問題なければ、また明日もリベラリアに冒険に行けるよ」
「うん。……また会えるといいな」
僕は昴さんに付き添われながら病室に戻ると、昴さんはベッドのリクライニングを操作して、僕がベッドに寄りかかって座れるようにしてくれた。
そのあと昴さんも、僕の横に椅子を持ってきて腰掛けた。
僕、篠宮真白は17歳の高校2年生。
今日から一週間程度、ずっとお世話になっている子ども病院で、検査入院をすることになっている。
小学校の途中までは、僕はどこにでもいる普通の小学生だった。なのに小学校高学年くらいから体調を崩すことが増えて、卒業間際に高熱を出して入院してしまった。
何日も目を覚まさなくてみんなに心配をかけた……らしい。話には聞いてるけど、その辺りの記憶が曖昧だから、僕自身は覚えていないんだ。
「昴さん、僕ね、ゲーム世界で新しい友達ができたんです」
「友達?」
「強くてかっこいいラパンと、小さくてふわふわでかわいい、うさぎのユキです」
「そっか。友達ができて良かったね」
昴さんは、僕が高熱で入院してしまった時からお世話になっているから、僕に友達がいないことを知っている。
だから、ゲームの中とはいえ、友達ができたことを喜んでくれると思うんだ。
僕は病気になったことで、治療のために離れた中学校へ通うことになってしまった。しかも入学式には出られず、学校に行った時にはもう僕はクラスで浮いた存在になってしまっていた。
お医者さんに、激しい運動は控えるように言われているから、体育は見学だし運動部も入れない。
だから文化部に入ったものの、やっぱり馴染めずに辞めてしまった。部活動参加が強制じゃなかったのが、せめてもの救いかな。
結局、誰とも馴染めずに高校生になってしまった。
そんな僕が、昴さんの勧めで新しい体験をすることになった。それが、RPGタイプのフルダイブ型リアルVRゲームなんだ。
今日は初めてのログインで、さっきログアウトしたばかりだ。
なるべく興奮しすぎないように、僕はVRゲーム『リベラリア』で体験したことの一部を、ゆっくりと話し出した。
「なぜかわからないけど、僕、草原スタートになっちゃったんです」
「え? 大丈夫だったの?」
「親切な人に、助けてもらったんです」
「ああ、それは良かったよ。びっくりした」
昴さんは、ほっと胸を撫で下ろした様子で僕を見ると、「ゲームだからと言って無理はしないでね」と言って、いつものように、優しく頭をポンポンと撫でてくれた。
……あれ? そういえば、ラパンも同じように頭を撫でてくれたっけ。なんか、2人とも雰囲気も似ているかもしれない。優しくて暖かくて……。
「その助けてくれた人っていうのが、一番最初の友達なんです」
「強くてかっこいいっていう人だね。なんか妬けちゃうな」
「昴さんも、かっこいいです!」
「あはは、ありがとね」
なんか、取ってつけたみたいになっちゃったけど、でも僕の本音だ。
昴さんもとてもかっこいいし、優しいし、僕の憧れの人。
僕は、まだたくさん話したいことがあるから、ゲーム体験の続きを話し出した。
「ゲームの中なのに、お腹も空くし、料理もとっても美味しかったんです」
「真白は、どんなものを食べたの?」
「光るきのこの、クリームシチューです。加熱したのに、お皿の中できのこが光ってたんですよ」
「あはは、それは珍しいね」
僕は、昴さんがVRゲーム『リベラリア』の制作に関わっているということをすっかり忘れ、楽しかったゲームの中での出来事を次々と話した。
『お疲れ様でした。このまま終了いたしますが、よろしいでしょうか?』
AIアシスタントの声が流れると、ゲームにログインした時と同じように、目の前にパネルが現れた。
僕が『はい』を選択すると、パネルに『ログアウト完了』の文字が浮かび上がり、スッと消えた。
同時に、顔を覆っていたゴーグルが、左右から静かにスライドしながら、チェアのヘッドレストへと滑らかに収納されていった。
覆われていたものがなくなると、視界が開けて一気に明るさを取り戻す。
まだ少しぼーっとする頭を抱えながら、僕はチェアから立ち上がった。
「お疲れさま。初めてのVRゲーム体験はどうだった?」
そう言いながら部屋に入ってきたのは、僕より5歳年上の霜月昴さん。現実世界で僕のことを気にかけてくれる、優しいお兄さんだ。
軽い茶髪で、明るい笑顔と優しげな瞳が印象的な昴さんは、このVRゲームの体験を勧めてくれた人だ。
「あ! 昴さん! すっごく楽しかったです!」
僕がさっきまで座っていたのは、最近評判の無重力マッサージチェアを思わせるVRマシン。身体を優しく包み込む流線型のデザインが特徴的だ。
外から見ると、まるで普通のマッサージチェアなのに、リアルVRゲームの世界に没入できるすごいマシンなんだ。
「楽しめたんだね、よかった。頑張った甲斐があったよ」
「まさかあんなにリアルだと思わなかったから、びっくりして……けほっ」
僕は興奮気味にそう話すと、少し息苦しくなって、こんこんと咳が出てしまった。
「ほら、そんなに興奮しちゃだめだろ。さぁ、部屋に戻ろう」
「は……い」
さっきまで、どんなに動いても苦しくならないし、咳も出なかったのに。
僕は自分の胸に手を当てながら、早く落ち着けるように、何度か深呼吸を繰り返した。
「リベラリアの世界では、たくさん跳ねても、全然苦しくならなかった。……明日もまたログインできるかな」
「朝の診察で問題なければ、また明日もリベラリアに冒険に行けるよ」
「うん。……また会えるといいな」
僕は昴さんに付き添われながら病室に戻ると、昴さんはベッドのリクライニングを操作して、僕がベッドに寄りかかって座れるようにしてくれた。
そのあと昴さんも、僕の横に椅子を持ってきて腰掛けた。
僕、篠宮真白は17歳の高校2年生。
今日から一週間程度、ずっとお世話になっている子ども病院で、検査入院をすることになっている。
小学校の途中までは、僕はどこにでもいる普通の小学生だった。なのに小学校高学年くらいから体調を崩すことが増えて、卒業間際に高熱を出して入院してしまった。
何日も目を覚まさなくてみんなに心配をかけた……らしい。話には聞いてるけど、その辺りの記憶が曖昧だから、僕自身は覚えていないんだ。
「昴さん、僕ね、ゲーム世界で新しい友達ができたんです」
「友達?」
「強くてかっこいいラパンと、小さくてふわふわでかわいい、うさぎのユキです」
「そっか。友達ができて良かったね」
昴さんは、僕が高熱で入院してしまった時からお世話になっているから、僕に友達がいないことを知っている。
だから、ゲームの中とはいえ、友達ができたことを喜んでくれると思うんだ。
僕は病気になったことで、治療のために離れた中学校へ通うことになってしまった。しかも入学式には出られず、学校に行った時にはもう僕はクラスで浮いた存在になってしまっていた。
お医者さんに、激しい運動は控えるように言われているから、体育は見学だし運動部も入れない。
だから文化部に入ったものの、やっぱり馴染めずに辞めてしまった。部活動参加が強制じゃなかったのが、せめてもの救いかな。
結局、誰とも馴染めずに高校生になってしまった。
そんな僕が、昴さんの勧めで新しい体験をすることになった。それが、RPGタイプのフルダイブ型リアルVRゲームなんだ。
今日は初めてのログインで、さっきログアウトしたばかりだ。
なるべく興奮しすぎないように、僕はVRゲーム『リベラリア』で体験したことの一部を、ゆっくりと話し出した。
「なぜかわからないけど、僕、草原スタートになっちゃったんです」
「え? 大丈夫だったの?」
「親切な人に、助けてもらったんです」
「ああ、それは良かったよ。びっくりした」
昴さんは、ほっと胸を撫で下ろした様子で僕を見ると、「ゲームだからと言って無理はしないでね」と言って、いつものように、優しく頭をポンポンと撫でてくれた。
……あれ? そういえば、ラパンも同じように頭を撫でてくれたっけ。なんか、2人とも雰囲気も似ているかもしれない。優しくて暖かくて……。
「その助けてくれた人っていうのが、一番最初の友達なんです」
「強くてかっこいいっていう人だね。なんか妬けちゃうな」
「昴さんも、かっこいいです!」
「あはは、ありがとね」
なんか、取ってつけたみたいになっちゃったけど、でも僕の本音だ。
昴さんもとてもかっこいいし、優しいし、僕の憧れの人。
僕は、まだたくさん話したいことがあるから、ゲーム体験の続きを話し出した。
「ゲームの中なのに、お腹も空くし、料理もとっても美味しかったんです」
「真白は、どんなものを食べたの?」
「光るきのこの、クリームシチューです。加熱したのに、お皿の中できのこが光ってたんですよ」
「あはは、それは珍しいね」
僕は、昴さんがVRゲーム『リベラリア』の制作に関わっているということをすっかり忘れ、楽しかったゲームの中での出来事を次々と話した。
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