【完結】君を知らないまま、恋をした

一ノ瀬麻紀

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12 依頼完了報告

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「ありがと~、助かったわ~。はいこれ、サインをしておいたからね~」

 簡単な依頼だったから、あっという間に作業が完了してしまった。メプさんは、「またよろしくね~」と言いながら、完了のサインを書いた依頼書を手渡してくれた。
 僕は「ありがとうございました」とメプさんにお礼を言うと、お土産屋を後にした。

 建物の外に出て、「終わったら連絡して。また後で落ち合おう」と言ったラパンの言葉を思い出した。
 そうだ、連絡しなきゃ。……そう思ったところで、僕は、連絡する方法を知らないことに気づいた。

「ねぇ、ユキ。ラパンと連絡取りたいんだけど……」
「連絡を取り合うメールボックスは、フレンドにならないと利用できないよ」

 いつも寝てばかりのユキだけど、サポートキャラらしく、僕の疑問に答えてくれた。

 あれ? そういえば、ラパンとフレンド登録してなかった気がする。というか、体験版にその機能ついてるの? 説明あったっけ?

 僕は初めてログインした時からの記憶を辿ってみた。
 フレンド登録について説明があったかもしれないけど、僕は周りはNPCだけだと思ってたから、必要がないと思って気にしなかったのかもしれない。
 プレイヤーのラパンに会ったのだって、すごい奇跡みたいなものなんだし。

 それにいつも、ラパンから声をかけてくれるから、連絡を取り合って会う約束をする必要がなかったんだ。ゲーム内でもいつも一緒だったし、別行動したのは今日が初めてだから……。

 あれこれ考えたって、わからないなら仕方がない。あとでパネル開いて探すか、案内所で聞いた方が早いかもしれない。
 だから僕は、先に報告を済ませることにした。

「とりあえず、依頼完了の報告を先に済ませておこうかな」
「うん、そうだね」

 街の外に出るわけじゃないし、先に報告を済ませたところで、すれ違いは起きないだろう。
 ユキの同意も得たし、僕は街の中心地から、入り口まで戻ることにした。
 依頼所は、相変わらずたくさんの出入りがある。僕も流れに合わせるように、建物の中に入っていった。

 完了報告は、依頼受付とは別の窓口だった。
 依頼を受けた場所の反対側の向かいに行って、窓口でサイン入りの依頼書を渡した。受付の猫獣人は、依頼書を隅々まで確認して、顔を上げた。

「はい、確かに。……では、手続き完了のスタンプを押させていただきます」

 説明が終わると同時に、目の前にシュッとパネルが出てきて『依頼完了』というスタンプが、ポンと押された。
 それと同時に、ゲーム内通貨の合計が500増えた。それが多いのか少ないのかはわからないけど、初めて自分で稼いだお金だから嬉しかった。

 建物を出て、僕は邪魔にならないように道から少し中に入り、木陰で立ち止まった。

「ねぇ、ユキ。ラパンと連絡をとる方法は、他にはないの?」
「うーん……これは体験版だから、基本的に1人プレ――っと、なんでもない!」
「ん? 何か言いかけなかった?」
「ううん、何も言ってないよ? これは体験版だから、仕様が変わったりすることもあって、僕たちサポートキャラにデータが反映されるのに、タイムラグがあったりするんだよ」

 さっきまでのんびり喋っていたユキが、なんか急に饒舌に喋り出した気がする。それに、さっき絶対何か言いかけたのに。
 何かユキが隠している気がしたけど、でもユキはAI搭載のNPCなんだし、そんなことないかと思い直した。

「ここでぼーっと立ってたら、ラパンが見つけてくれるかなぁ」
「それなら、混んでる依頼所よりも、メプさんのところの方がいいんじゃない?」
「ああ、そうだね! さすがユキだ!」

 僕が名案だねってユキを見たら、ちょっと呆れ顔だったような気がするのは、気のせいということにしよう。

「依頼の報酬もらったから、お土産屋さんで何か買おうかな」
「もちろん、僕だよね? うさぎだよね?」

 なぜか、サポートキャラのぬいぐるみを買うという前提で、ユキが僕に詰め寄ってきた。
 その自信はどこからくるんだろうと思ったけど、でも僕が初めて買うつもりなのは、もちろんユキのぬいぐるみだ。
 肩に乗ってるユキをふわふわと撫でながら「もちろん」と言うと、嬉しそうに肩の上で跳ねた。これ、けっこう痛いんだけどね……。

 メプさんのいるお土産屋さんの前まで来ると、途方に暮れているように見えるうさぎがいた。うさぎの周りには、1人ではとても持ち運べないくらいの、たくさんの袋が置かれていた。
 声をかけたいけど、勘違いだったら困るなぁ……と、ユキに相談してみた。

「ねぇユキ、お土産屋さんの前にいるうさぎさん、なんか困っているように見えない?」
「ああ、確かにあれは困っているね」
「そうだよね。どうしたんだろう。声をかけてみようか」
「そうだね、声をかけてみよう」

 ユキと顔を見合わせ頷いた後、僕は驚かせないようにそっと近づき、優しく声をかけた。

「あの~すみません……。もしかして、何かお困りじゃないですか?」
「えっ……?」

 まぁ、普通は突然声をかけられたらびっくりするよね。
 うさぎは短い声を出した後、フリーズしたように動きを止めた。
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