【完結】VRゲームの世界でキミを待つ

一ノ瀬麻紀

文字の大きさ
26 / 59

25 再会

しおりを挟む
 僕は無我夢中で魔法を念じた。
 何の魔法が発動されているのかわからなくなるほどで、僕の目の前には、炎と水と光が入り混じって、まるで水上花火ショーでも開催しているようだった。

 メチャクチャな魔法が足止めになったのか、ベアウルフが一瞬怯んだ。
 今だ、逃げろ!
 僕の中で警笛が鳴る。
 けど僕は、足がすくんでしまって、その場から動くことができなかった。

 どうしよう、もうダメだ――!

 そう思った瞬間、目の前のベアウルフはギャンっと鳴き声をあげ、光の粒となって消えた。  
 ……あ、あれ? 前にも全く同じことが起きたような……?
 腰が抜けて立てなくなってしまった僕は、ゆっくりと後ろを振り返った。

「また、ベアウルフに襲われてるのか?」

 少し呆れたように言いながらも、表情はとても優しいその人は、さっと手を差し伸べてきた。
 ……ああ、ずっと会いたかった人だ。
 僕の鼓動はどんどん高鳴り、歓喜に満ち溢れた。

「ラパン……!」

 名を呼ぶと同時に、僕はラパンの力強い腕の中に飛び込んだ。

「1人にさせて、ごめんな。……手間取って、来るのが遅くなってしまった」
「寂しかった! 会いたくて、でも会えなくて、ラパンもユキもいなくて、僕1人で……」

 僕はラパンの腕に包まれていると実感した途端、今まで張っていた緊張の糸が、ぷつりと切れた。
 胸に熱いものが込み上げてきて、とうとう僕の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちた。

 僕1人でアイテムも作ったし、モンスターも倒したし……って自慢したくて頑張っていたけど、1人でもできるって思って頑張ってたけど、やっぱり僕は1人ではいられない。
 ラパンやユキと一緒にいたいし、すばるさんとも一緒にいたい。
 今回の出来事で、僕がどれだけ大切にされているのかもわかった。

 僕の中で、ずっと我慢していたものが一気に溢れ出し、声を上げて泣いてしまった。
 その間、ずっとラパンは、黙って僕の背中を優しく撫で続けてくれた。

 どのくらい泣き続けていただろうか。まだ鼻をずるずるとすすってしまうけど、だいぶ落ち着いてきた。

「どう? 少しは落ち着いたか?」

 ラパンは胸の中にいた僕をゆっくり体から離して、僕の顔を覗き込んだ。

「……うん」
「よしよし、よく頑張ったな」

 ラパンは、いつものように僕の頭をポンポンと撫でてくれた。
 ずっと聞きたかった声と温かい手の感触で、僕の涙腺はまた緩んでしまう。

「また……涙出ちゃ……う」

 必死に抑えようとするけど、また目に涙が溜まっていく。

「気にするな、思う存分泣けばいい。この広い草原には、俺たちしかいないからな」
「……草原!?」

 ラパンの言った言葉で、ここは街の外だということを思い出した。……ということは、まだモンスターに遭遇する可能性があるってことだよね? それに、ログアウトボタン消失のこともどうなったのか聞かないと!

「街に戻らないと! 僕、ログアウトできなくなったんだ!」

 ラパンに会えた喜びで忘れてたけど、今僕は大変なトラブルに巻き込まれている最中じゃないか。

「ああ、そのことなんだが……。病院には事情を話してあるから、大丈夫だ」
「え……?」
「エラーは解消したから、ログアウトしよう。……戻ったら、話がある」
「話って……?」

 僕は、ラパンの言葉の意図を汲もうと考えてみたけど、急な話で理解が追いつかない。
 ラパンは、ログアウトボタン消失のトラブルを知っていて、エラーも解消したからと言って、戻ったら話がある……?
 え、まさか……。

「ちゃんと話をするから、とりあえず一度街に戻ろう。メプさんのところに世話になっていたんだろう? 顔を出してから、ログアウトしよう」
「うん……」

 僕は戸惑いながらも、ラパンの言う通りだと思った。相手がNPCだとしても、ここリベラリアの世界でちゃんと存在して、僕たちと同じように生活している。お世話になったら礼儀を通すのは当然だよね。
 そのあと、ラパンの用意していた聖水でモンスターを寄せ付けないようにしながら、グリーンヒルへ戻った。

「おかえりなさ~い。お家に帰れそうなのねぇ~。よかったよかった~」
「うむ、元に戻っておるな。今なら大丈夫じゃ」
「シロチ、お家に帰るの? 帰る前にモモチを抱っこしなさい?」
「シロ、僕のこと忘れてたでしょ……」

 メプさんのお土産屋さんに向かうと、お店の外で、メプさん、ユーアさん、モモチ……そしてユキが待っていた。
 サポートキャラのメンテナンスも、エラーのせいだったのか。
 僕はユキに向かって『おいで』と手を差し伸べると、ユキはぴょんっと跳ねていつものように肩に飛び乗った。そしてなぜか一緒になって、モモチもジャンプして僕の胸にダイブしてきた。

「ご心配をおかけしました。一度家に帰ってゆっくりしてから、また後日改めてご挨拶に来ますね」

 僕が深々と挨拶をすると、みんな口々に「シロが悪いんじゃないし」というようなことを言ってくれた。

「ユキ、明日はログインしたらすぐ呼び出すからね。……モモチ、抱っこさせてくれてありがとう」

 モモチを抱きしめながら、ユキをそっと撫でた。
 明日またログインできるかわからない不安を感じながらも、いつもと変わらない態度でみんなに挨拶をする。

「では、また明日よろしくお願いします」

 僕はそう言うと、パネルを出した。メイン画面の下に、ちゃんと『ログアウトボタン』を見つけた。
 みんなに見送られながら、僕はラパンと一緒にログアウトした。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

邪魔はさせない

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 病棟で知り合った2人。生まれ変わって異世界で冒険者になる夢を叶えたい!

【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。 一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。 もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。 ルガルは生まれながらに選ばれし存在。 国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。 最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。 一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。 遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、 最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。 ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。 ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。 ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。 そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、 巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。 その頂点に立つ社長、一条レイ。 冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

【完結】みにくい勇者の子

バナナ男さん
BL
ある田舎町で農夫をしている平凡なおっさんである< ムギ >は、嫁なし!金なし!の寂しい生活を送っていた。 そんなある日、【 光の勇者様 】と呼ばれる英雄が、村の領主様に突然就任する事が決まり、村人達は総出で歓迎の準備をする事に。 初めて会うはずの光の勇者様。 しかし、何故かムギと目が合った瞬間、突然の暴挙に……?     光の勇者様 ✕ 農夫おっさんのムギです。  攻めはヤンデレ、暴走ロケット、意味不明。 受けは不憫受け(?)だと思いますので、ご注意下さい。ノリよくサクッと終わりますm(__)m 頭空っぽにして読んで頂けると嬉しいです。

王子様と一緒。

紫紺
BL
田中明夫は作家を目指して10年、全く目が出ない男だ。 ある日、書店の前で金髪青い目の青年が突然話しかけてきた。最初は胡散臭く思っていたのだが……。 南の国の第2王子アスラン、その護衛トーゴー、田中が住むアパートの大家や住人の奨励会員などなど。 様々な人間模様と恋模様が織りなすBL多めのラブコメ開幕です!

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

【本編完結済】神子は二度、姿を現す

江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結 ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。 死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが 神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。 戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。 王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。 ※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。 描写はキスまでの全年齢BL

処理中です...