【完結】君を知らないまま、恋をした

一ノ瀬麻紀

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39 いつもと違う仲間

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「じゃあ真白ましろくん、ログインしよっか」
「はい」

 僕のログイン情報は管理されているから、僕のリベラリア内でのアバターネームがシロだということも、うさぎ獣人だということも、うさぎのサポートキャラを登録していることも、蒼馬そうまさんは全て知っている。
 すばるさんに僕の付き添いを頼まれた時に、会社に登録されている情報を確認済みだと言っていた。

「グリーンヒルの入り口で合流ね~」
「分かりました」

 僕は、初ログインの時に、草原に降り立つという失敗をしている。多分そのことも知ってるから、気にかけてくれたんだろうな。
 ちょっと恥ずかしいけど、蒼馬さんも僕を優しい視線で見守ってくれるから、ホッと気持ちが落ち着く。

 集合場所の確認をしてから、僕たちはそれぞれVRマシンに乗り込んだ。
 そして、いつものようにログイン作業をしていく。
 ゲーム内の時間は止まっているとはいえ、10日ぶりのログインはちょっぴりドキドキした。

 僕がこのゲームを始めた時は、体験版だからプレイ人数が極端に少なくて、他の人には滅多に合わないと説明されていた。
 でも実はそれは違っていて、僕のことを心配した昴さんが、制作者側の権限で僕のセーブデータにログインしていたらしいんだ。

 もちろん僕に断りもなくというのは大問題なんだけど、ちょっと変だなと思うことはあったんだ。だから、もしかしてって気持ちもどこかにあって。
 そのことを昨日昴さんは、全て話してくれた。僕が大丈夫気にしないでと言ったのに、何度も謝ってくれた。

『本来ならば、真白に事前に許可をとるべきだったんだ。……本当にごめん! なんか俺、ストーカーみたいで気持ち悪いよな』

 そう言って、何度も何度も頭を下げた昴さんを見て、僕がどれだけ大切にされているのか実感することができた。

『気持ち悪いなんてことないよ。僕は嬉しい……昴さんが、こんなに僕を心配してくれたんだってわかったから』

 昴さんになら、ストーカーされてもいい。愛されていると感じられるから……。

 僕は、昨日の昴さんとのやりとりを思い出し、自然と口元が緩んだ。
 僕はオープンワールドがやりたかったわけじゃないから、そんなにこだわりはない。
 むしろ、僕だけの空間だという方が特別感はあるし、子どもの頃から遊んでいた、コマンド RPGのようでいいなって思うんだ。

『ログインを確認しました。リベラリアの世界をお楽しみください』

 今までと変わらないAIアシスタントの音声だけど、昨日の昴さんの話を聞いた後だから、なんかいつものログインとは違う気がする。
 音声案内が遠のいたと思うと、もう僕はグリーンヒルの入り口に静かに立っていた。



「あっ!」

 目の前にいるのが『蒼馬』さんだと言うのは、すぐわかった。
 アバターだけど、人間だし、現実の蒼馬さんとほとんど変わらない姿だった。
 明るい茶髪に、ニッと笑うと見える八重歯まで一緒だし、チャラそうな雰囲気もそのままだ。

「あはは! 自己紹介しなくても、すぐわかっただろ?」
「は、はい……」

 僕があからさまな態度をとったせいで、蒼馬さんは僕の考えていることがすぐ分かったんだと思う。
 さっきまで現実世界で話していた笑顔のままで、愉快そうに笑った。

「色々考えんの面倒だし、まぁいっかって、アバターもまんまだし、名前も『ソーマ』にしたんだ」
「そうなんですね。……あ、僕は真白、アバターネームはシロです。うさぎが好きなので、うさぎ獣人にしました」
「ご丁寧にどうも。……うん、かわいいね。すごく似合ってる」

 蒼馬さんは、ニヤニヤしながらうさぎ獣人の僕を見て言った。
 昴さん以外の歳の近い男の人に、そんなふうに褒められたことがなかったので、僕の心臓の音が大きくなった気がした。
 でも、なんかお調子者っぽく言うから、もしかして冗談なのかな? ってわからなくなってしまった。

「……あ! ユキを呼ばなきゃ」

 昴さん以外の人に、ちょっとだけでもドキドキしてしまった後ろめたさを隠すように、僕は急に話題を変えた。
 すぐに呼び出さないと、ユキがまた拗ねちゃうから。
 ひとりごとのように呟きながら、僕はユキを呼び出した。

 ユキは僕の目の前にポンっと姿を現すと、いつものように僕の肩に乗った。
 けど、僕の隣に立っているのがラパンじゃないと気づき、僕の耳元に近づいてコソコソと小声で聞いてきた。

「……ん? ねぇシロ、この人誰?」
「えっとね、この人は――」

 僕が紹介しようとしたら、蒼馬さんはすっと一歩踏み出し、僕の肩に乗るユキに向かってさっと手を差し出した。

「俺はソーマ。キミがユキかー。もふもふしたくなる可愛らしさだな。俺のサポートキャラにならないか?」
「……ねぇシロ。なんかこの人、チャラくない?」
「わっ、ユキ、思ってても言っちゃダメ!」
「ほら、シロも思ってるってことじゃん」
「いや、僕は別に……そんなこと……」

 僕とユキがコソコソと話をしていたら、それを見ていたソーマさんが、また豪快に笑った。

「ほんと、わかりやすいのなー! 俺は気にしないから、どんどん思ったこと言ってくれてもいーよ」
「……ちょっとだけ……思いました……」

 モゴモゴ言う僕に、ソーマさんは親指をグーと出して、「仲間なんだから、隠しっこなしな」と、無邪気な笑顔で言った。
 昴さんとは正反対な性格なのに、なんで友達なのか分かった気がする。
 一見チャラそうだけど、蒼馬さん……ソーマさんがいるだけで、その場が明るくなっていく。

「そんなこんなで、よろしくな!」

 ソーマさんがもう一度手を差し出すと、ユキは前足でぺたっとハイタッチした。

「よろしくー、ソーマ」

 どうなるか少し不安になってたけど、どうやら大丈夫そうだ。
 僕も手を差し出し、ソーマさんとユキと3人でハイタッチを交わした。
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