53 / 59
52 奇跡と運命
しおりを挟む
次の日、僕は予定通り退院した。
あのあと、手術を受けることを決めた僕は、昴と一緒に先生の話を聞いた。
とりあえず、これからの流れを簡単に説明され、詳しい話は後日ということになった。
僕が手術を受けると決めたので、改めて検査し問題がなければ、手術のスケジュールを組むことになるそうだ。
「まだ決定というわけじゃないけど、この前の検査入院の時も問題なかったようだし、このまま手術ができる方向で話は進むと思うよ」
「急を要する手術じゃないしね。先生たちと話して、ゆっくり進めていけばいいかなぁ」
体調を崩しやすくなったあの頃から、できないことは増えたけど、それも含めて病気と生きてきた。
これからもずっとそうやって生きていくと思っていたから、いまさら急いで! なんて思わない。ベストな状態で、手術が受けられればって思う。
「退院したばかりだから、話は明日にするか?」
「ううん、大丈夫。先生に手術の意向は伝えたけど、結局詳しい話は後日になったから、正直言うと、昴の知っていることを話してほしいんだ」
僕の病気がどんなものかは、ずっと伏せられていたから僕は知らない。
両親も、昴も、みんな病気について詳しい話をするつもりはなかったみたいだから、僕も聞こうとはしなかった。無理やり聞いて困らせるのも嫌だったから。
「そうだな。真白は知る権利があるよな」
「あ……、昴が話づらいなら、無理しなくていいよ?」
「俺は大丈夫だけど、真白の負担にならないかが心配なんだ」
「今まで、みんなを困らせたくないから聞かなかったけど、本当はちゃんと聞いて、自分の病気と向き合いたかったんだ」
「そうか。でも、ちゃんとした話は先生から聞くのが一番だから、俺は簡単にしか話さないけどいいか?」
「うん、ありがとう」
昴は、僕の負担にならないように、要点を絞って話をしてくれた。
僕の病気が発覚した時はまだ、根本的な治療方法は見つかっていなくて、投薬と定期的な検査で病気と向き合いながら生活をするという選択しかなかった。
その風向きが変わったのは、僕が検査入院している時だった。
「新しい治療法が実用化されたのは少し前なんだけど、実際に執刀できる先生はまだ少なくて、手術を受けられる人も限られていたんだ。でも、今度この病院に赴任してくる先生が、その手術を行える数少ない専門医でね。真白の手術を一番に引き受けてくださることになったんだ」
「そんな、奇跡みたいなことがあるんだね」
「きっと、前向きに頑張っていた真白だから、神は味方についてくださったんだ」
まるで何か物語のような話だけど、これは紛れもなく現実の話なんだ。
僕は今まで夢に見てきたことを、実現するための第一歩を踏み出す。
「じゃあ、神様の想い……ずっとそばで支えてくれた、昴の想いにも応えないとね」
「みんなが、真白の頑張りを、応援してるよ」
僕は、改めて決意を固めるかのように、昴を見て大きくうなずいた。
僕の病気が発覚したのは、体調を崩しやすくなった小学校高学年。高熱を出す前のことだった。
ある日やけに体全体が熱いと思ったら、高熱を出し……そのあと目が覚めたら、僕の隣には知らないお兄さんが立っていた。
そのあと、僕が記憶を失っている間のことを、話してくれた。
家族や親戚とも話し合って、決められたことが2つあった。
1つは、僕に病気の詳しい話をしないこと。もう1つは、僕が『昴の記憶だけ』を失っていると言う事実を隠すこと。みんな、それを守るために気をつけてくれていた。
そこからは、僕も覚えている。いつもそばにいた昴は、近所の優しいお兄さんだった。でも、なぜ僕のそばにいるのか、その時の僕に理由はわからなかった。
「真白が俺のことを……忘れてしまったあとも、約束を果たすために、俺はゲームについて一生懸命学んだ。それまでは、なんとなく親の会社を継ぐのかなって思ってたんだ」
僕が昴のことだけを忘れてしまっていたことを思い出したのか、昴は一瞬辛そうに顔をしかめた。
「そして体験版を、真白にプレイしてもらえるところまで漕ぎつけた。前にも話したけど、俺はいつまでも近所のお兄さんのままでいなければならなかったから、せめてゲームの中だけでもと考えたんだ」
「だから、ラパンになって、僕に会いに?」
「そう。体験版は一人プレイ専用なのに、真白が知らないのをいいことに、都合の良いことを言った。『奇跡』なんかじゃなかったのに」
しゅんとしょげたように言う昴に、悪いと思いながらも、思わずクスッと笑ってしまった。まるで飼い主に怒られた犬みたいだ。
「でも、僕はラパンのおかげで助かったんだし、ラパンのおかげでログインがとても楽しくなった。それに、ラパンのアドバイスがあったとはいえ、僕の意思で行動してたんだ。そして僕は、ラパンにどんどん惹かれていき、両思いになって恋人にもなった」
きっかけは、ラパンが意図的に僕のデータにログインしたことかもしれない。
けど、僕がラパンを好きになったのは、僕自身の感情だ。誰に何を言われたわけじゃない、僕の大切な想いだ。
これを、奇跡と言わないでなんて言う? これはきっと運命の導きなんだ。
「だから、これは僕たちの……僕たちだけの奇跡。僕たちは、結ばれる運命だったんだよ」
僕は、みるみるうちに顔が明るくなっていく昴の胸に、勢いよく飛び込んだ。
あのあと、手術を受けることを決めた僕は、昴と一緒に先生の話を聞いた。
とりあえず、これからの流れを簡単に説明され、詳しい話は後日ということになった。
僕が手術を受けると決めたので、改めて検査し問題がなければ、手術のスケジュールを組むことになるそうだ。
「まだ決定というわけじゃないけど、この前の検査入院の時も問題なかったようだし、このまま手術ができる方向で話は進むと思うよ」
「急を要する手術じゃないしね。先生たちと話して、ゆっくり進めていけばいいかなぁ」
体調を崩しやすくなったあの頃から、できないことは増えたけど、それも含めて病気と生きてきた。
これからもずっとそうやって生きていくと思っていたから、いまさら急いで! なんて思わない。ベストな状態で、手術が受けられればって思う。
「退院したばかりだから、話は明日にするか?」
「ううん、大丈夫。先生に手術の意向は伝えたけど、結局詳しい話は後日になったから、正直言うと、昴の知っていることを話してほしいんだ」
僕の病気がどんなものかは、ずっと伏せられていたから僕は知らない。
両親も、昴も、みんな病気について詳しい話をするつもりはなかったみたいだから、僕も聞こうとはしなかった。無理やり聞いて困らせるのも嫌だったから。
「そうだな。真白は知る権利があるよな」
「あ……、昴が話づらいなら、無理しなくていいよ?」
「俺は大丈夫だけど、真白の負担にならないかが心配なんだ」
「今まで、みんなを困らせたくないから聞かなかったけど、本当はちゃんと聞いて、自分の病気と向き合いたかったんだ」
「そうか。でも、ちゃんとした話は先生から聞くのが一番だから、俺は簡単にしか話さないけどいいか?」
「うん、ありがとう」
昴は、僕の負担にならないように、要点を絞って話をしてくれた。
僕の病気が発覚した時はまだ、根本的な治療方法は見つかっていなくて、投薬と定期的な検査で病気と向き合いながら生活をするという選択しかなかった。
その風向きが変わったのは、僕が検査入院している時だった。
「新しい治療法が実用化されたのは少し前なんだけど、実際に執刀できる先生はまだ少なくて、手術を受けられる人も限られていたんだ。でも、今度この病院に赴任してくる先生が、その手術を行える数少ない専門医でね。真白の手術を一番に引き受けてくださることになったんだ」
「そんな、奇跡みたいなことがあるんだね」
「きっと、前向きに頑張っていた真白だから、神は味方についてくださったんだ」
まるで何か物語のような話だけど、これは紛れもなく現実の話なんだ。
僕は今まで夢に見てきたことを、実現するための第一歩を踏み出す。
「じゃあ、神様の想い……ずっとそばで支えてくれた、昴の想いにも応えないとね」
「みんなが、真白の頑張りを、応援してるよ」
僕は、改めて決意を固めるかのように、昴を見て大きくうなずいた。
僕の病気が発覚したのは、体調を崩しやすくなった小学校高学年。高熱を出す前のことだった。
ある日やけに体全体が熱いと思ったら、高熱を出し……そのあと目が覚めたら、僕の隣には知らないお兄さんが立っていた。
そのあと、僕が記憶を失っている間のことを、話してくれた。
家族や親戚とも話し合って、決められたことが2つあった。
1つは、僕に病気の詳しい話をしないこと。もう1つは、僕が『昴の記憶だけ』を失っていると言う事実を隠すこと。みんな、それを守るために気をつけてくれていた。
そこからは、僕も覚えている。いつもそばにいた昴は、近所の優しいお兄さんだった。でも、なぜ僕のそばにいるのか、その時の僕に理由はわからなかった。
「真白が俺のことを……忘れてしまったあとも、約束を果たすために、俺はゲームについて一生懸命学んだ。それまでは、なんとなく親の会社を継ぐのかなって思ってたんだ」
僕が昴のことだけを忘れてしまっていたことを思い出したのか、昴は一瞬辛そうに顔をしかめた。
「そして体験版を、真白にプレイしてもらえるところまで漕ぎつけた。前にも話したけど、俺はいつまでも近所のお兄さんのままでいなければならなかったから、せめてゲームの中だけでもと考えたんだ」
「だから、ラパンになって、僕に会いに?」
「そう。体験版は一人プレイ専用なのに、真白が知らないのをいいことに、都合の良いことを言った。『奇跡』なんかじゃなかったのに」
しゅんとしょげたように言う昴に、悪いと思いながらも、思わずクスッと笑ってしまった。まるで飼い主に怒られた犬みたいだ。
「でも、僕はラパンのおかげで助かったんだし、ラパンのおかげでログインがとても楽しくなった。それに、ラパンのアドバイスがあったとはいえ、僕の意思で行動してたんだ。そして僕は、ラパンにどんどん惹かれていき、両思いになって恋人にもなった」
きっかけは、ラパンが意図的に僕のデータにログインしたことかもしれない。
けど、僕がラパンを好きになったのは、僕自身の感情だ。誰に何を言われたわけじゃない、僕の大切な想いだ。
これを、奇跡と言わないでなんて言う? これはきっと運命の導きなんだ。
「だから、これは僕たちの……僕たちだけの奇跡。僕たちは、結ばれる運命だったんだよ」
僕は、みるみるうちに顔が明るくなっていく昴の胸に、勢いよく飛び込んだ。
73
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―
綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。
一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。
もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。
ルガルは生まれながらに選ばれし存在。
国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。
最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。
一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。
遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、
最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。
ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。
ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。
ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。
そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、
巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。
その頂点に立つ社長、一条レイ。
冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
【完結】みにくい勇者の子
バナナ男さん
BL
ある田舎町で農夫をしている平凡なおっさんである< ムギ >は、嫁なし!金なし!の寂しい生活を送っていた。 そんなある日、【 光の勇者様 】と呼ばれる英雄が、村の領主様に突然就任する事が決まり、村人達は総出で歓迎の準備をする事に。 初めて会うはずの光の勇者様。 しかし、何故かムギと目が合った瞬間、突然の暴挙に……? 光の勇者様 ✕ 農夫おっさんのムギです。 攻めはヤンデレ、暴走ロケット、意味不明。 受けは不憫受け(?)だと思いますので、ご注意下さい。ノリよくサクッと終わりますm(__)m 頭空っぽにして読んで頂けると嬉しいです。
王子様と一緒。
紫紺
BL
田中明夫は作家を目指して10年、全く目が出ない男だ。
ある日、書店の前で金髪青い目の青年が突然話しかけてきた。最初は胡散臭く思っていたのだが……。
南の国の第2王子アスラン、その護衛トーゴー、田中が住むアパートの大家や住人の奨励会員などなど。
様々な人間模様と恋模様が織りなすBL多めのラブコメ開幕です!
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
【本編完結済】神子は二度、姿を現す
江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結
ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。
死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが
神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。
戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。
王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。
※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。
描写はキスまでの全年齢BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる