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79. 幸せを伝える
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「こんにちは~。フィル、いるー?」
僕は今日、久しぶりに生家となるハイネル家を訪れていた。
アーホルン公爵家へ移り住み、結婚式をあげたのがちょうど三年前になる。
初めはハイネル家の立て直しのために、家に足を運ぶことは何度もあった。けれどもう僕はアーホルン公爵家の人間だから、そう頻繁に顔を出せるわけではない。
それにここ一年くらいには、フィルの頑張りもあり、ハイネル家はかなり持ち直していた。もう、アーホルン公爵家の支援がなくても、自立できるまでになっていた。
「ミッチ! もうそんな時間なんだね。あれ? フレッドも一緒?」
フィルが普段仕事でよく籠もっているという、書斎へ足を運んでみたら、フィルがひょこっと顔を出した。
僕は事前に来ることを連絡していたけど、普段は忙しくて一緒に来ることの少ないフレッドまでも隣りにいるのだから、驚くのは無理もない。
「今日は、話したいことがあって来たんだ」
僕は隣に並び立つフレッドと目を合わせると、二人でうなずき合った。
そんな僕たちを見て、フィルは「ちょっと待っていてね。お父様とお母様に知らせてくるから」と言いながら、書斎から出ていった。
アーホルン公爵家からの旅路は順調で、予定よりも早く到着したから、少し街を散策してきた。それでも時間を持て余してしまった僕たちは、約束の時間よりも少し早く訪ねてきたんだ。
事前に約束は取り付けてあったから、それほど待つことなく、フィルがお父様とお母様を連れて戻ってきた。
みんなで書斎に入ると、フィルは急いで机の上の書類をまとめ、皆を椅子に座るように促した。
「今日はお時間をいただき、ありがとうございます」
着席すると、まずはフレッドがあいさつを口にした。その後に僕も言葉を続けた。
「今日僕たちが来たのは、大切なお知らせがあるからです」
「大切なお知らせ?」
フィルの言葉に、僕とフレッドは大きくうなずいた。
「僕は、ヒートがなかなか来ませんでした。お抱えの医師にも相談しましたが、とにかく焦ることはないと言われました。初めはプレッシャーを感じていましたが、フレッドも、周りの人々も、僕が僕らしく過ごすことを優先してくれ、のびのびと過ごすことが出来ました。そのおかげで、僕にも人並にヒートがやってきて……」
そこまで言うと、ぼくはふぅ……と一呼吸置いた。
ゆっくり部屋の中を見渡すと、みんなの表情が徐々に変わっているのを感じた。
そこで僕は、みんなの方を見ていた視線を下に落とし、自分のお腹を見ると優しく撫でた。
「今、僕のお腹の中には……新しい命が宿っています」
僕は下を向いて、優しくお腹を撫でていた手を止め、顔をあげた。
目の前には、時が止まったかのように、目を見開き固まっている僕の家族。
想像通りの反応に、僕はクスクスと笑い声を発した。
「ミッチェル、本当なのか?」
「ミッチに……赤ちゃん?」
「新しい命が……?」
お父様もお母様もフィルも、まるで壊れてしまわないようにと、言葉を大切に紡いでいく。
「うん、そうだよ。……僕とフレッドの子を、授かることが出来ました」
まだ信じられないと言った様子の家族に、僕は再び報告をした。
すると、フィルが椅子から立ち上がり、僕のところに駆け寄ってきた。
「ミッチ! おめでとう! 僕、嬉しいよ。とっても嬉しいよ!!」
本当は抱きつきたいのに、僕のお腹のことを気にかけてくれているのだろう。両手を掴んで、ブンブンと上下に振った。
お父様は、「うむ」と満足気にうなずいて、お母様は言葉をなくして、流れる涙を静かに拭っていた。
結婚してからすぐに子供を望んだけど、ストレスに晒されて生活をしていたから、なかなかヒートが来なかった。それがまたプレッシャーとなり、ストレスの原因となるという悪循環。
焦る僕に、無理はしなくて良い、自然に任せようと言ってくれたフレッド。アーホルン家のお父様もお母様も、のんびり過ごしましょうと言って、旅行などを勧めてくれた。
僕は本当に恵まれていた。跡取り問題で急かされることもなくおおらかに見守ってくれた。
そのおかげで、僕はリラックスした日々を送ることができ、待望の我が子を授かることができた。
僕は再びゆっくりとお腹を撫でた。
「君に会えるのを、みんなが楽しみにしているんだよ」
まだ見ぬお腹の子に、僕は優しく語りかけた。
僕は今日、久しぶりに生家となるハイネル家を訪れていた。
アーホルン公爵家へ移り住み、結婚式をあげたのがちょうど三年前になる。
初めはハイネル家の立て直しのために、家に足を運ぶことは何度もあった。けれどもう僕はアーホルン公爵家の人間だから、そう頻繁に顔を出せるわけではない。
それにここ一年くらいには、フィルの頑張りもあり、ハイネル家はかなり持ち直していた。もう、アーホルン公爵家の支援がなくても、自立できるまでになっていた。
「ミッチ! もうそんな時間なんだね。あれ? フレッドも一緒?」
フィルが普段仕事でよく籠もっているという、書斎へ足を運んでみたら、フィルがひょこっと顔を出した。
僕は事前に来ることを連絡していたけど、普段は忙しくて一緒に来ることの少ないフレッドまでも隣りにいるのだから、驚くのは無理もない。
「今日は、話したいことがあって来たんだ」
僕は隣に並び立つフレッドと目を合わせると、二人でうなずき合った。
そんな僕たちを見て、フィルは「ちょっと待っていてね。お父様とお母様に知らせてくるから」と言いながら、書斎から出ていった。
アーホルン公爵家からの旅路は順調で、予定よりも早く到着したから、少し街を散策してきた。それでも時間を持て余してしまった僕たちは、約束の時間よりも少し早く訪ねてきたんだ。
事前に約束は取り付けてあったから、それほど待つことなく、フィルがお父様とお母様を連れて戻ってきた。
みんなで書斎に入ると、フィルは急いで机の上の書類をまとめ、皆を椅子に座るように促した。
「今日はお時間をいただき、ありがとうございます」
着席すると、まずはフレッドがあいさつを口にした。その後に僕も言葉を続けた。
「今日僕たちが来たのは、大切なお知らせがあるからです」
「大切なお知らせ?」
フィルの言葉に、僕とフレッドは大きくうなずいた。
「僕は、ヒートがなかなか来ませんでした。お抱えの医師にも相談しましたが、とにかく焦ることはないと言われました。初めはプレッシャーを感じていましたが、フレッドも、周りの人々も、僕が僕らしく過ごすことを優先してくれ、のびのびと過ごすことが出来ました。そのおかげで、僕にも人並にヒートがやってきて……」
そこまで言うと、ぼくはふぅ……と一呼吸置いた。
ゆっくり部屋の中を見渡すと、みんなの表情が徐々に変わっているのを感じた。
そこで僕は、みんなの方を見ていた視線を下に落とし、自分のお腹を見ると優しく撫でた。
「今、僕のお腹の中には……新しい命が宿っています」
僕は下を向いて、優しくお腹を撫でていた手を止め、顔をあげた。
目の前には、時が止まったかのように、目を見開き固まっている僕の家族。
想像通りの反応に、僕はクスクスと笑い声を発した。
「ミッチェル、本当なのか?」
「ミッチに……赤ちゃん?」
「新しい命が……?」
お父様もお母様もフィルも、まるで壊れてしまわないようにと、言葉を大切に紡いでいく。
「うん、そうだよ。……僕とフレッドの子を、授かることが出来ました」
まだ信じられないと言った様子の家族に、僕は再び報告をした。
すると、フィルが椅子から立ち上がり、僕のところに駆け寄ってきた。
「ミッチ! おめでとう! 僕、嬉しいよ。とっても嬉しいよ!!」
本当は抱きつきたいのに、僕のお腹のことを気にかけてくれているのだろう。両手を掴んで、ブンブンと上下に振った。
お父様は、「うむ」と満足気にうなずいて、お母様は言葉をなくして、流れる涙を静かに拭っていた。
結婚してからすぐに子供を望んだけど、ストレスに晒されて生活をしていたから、なかなかヒートが来なかった。それがまたプレッシャーとなり、ストレスの原因となるという悪循環。
焦る僕に、無理はしなくて良い、自然に任せようと言ってくれたフレッド。アーホルン家のお父様もお母様も、のんびり過ごしましょうと言って、旅行などを勧めてくれた。
僕は本当に恵まれていた。跡取り問題で急かされることもなくおおらかに見守ってくれた。
そのおかげで、僕はリラックスした日々を送ることができ、待望の我が子を授かることができた。
僕は再びゆっくりとお腹を撫でた。
「君に会えるのを、みんなが楽しみにしているんだよ」
まだ見ぬお腹の子に、僕は優しく語りかけた。
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