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④ 転生について調べても、あまり進展はありません
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数日過ごしてみて分かったことは、アルはだいたい日の入りから日の出まで猫獣人の姿になる。俺はほぼその逆。なにか不思議な力が働いていて、その力が強い時は耳や尻尾を上手に隠し、完全な人間体になることが出来る。力が弱くなると猫獣人の姿でしかいられず、完全に弱まると猫になる。
入れ替わる時間は少し曖昧で、交差する少しの間だけなら、二人同時に猫獣人の姿でいられるようだ。会話だけなら片方が完全に猫になってしまっても、相手が獣人なら会話は可能ということも分かった。
けれどやはり調べ物をするには、二人同時に会話できる獣人の姿の時のほうが効率が良いので、タイミングを見計らって情報収集をすることにした。
まずは、アルは転生前の記憶が残っているから、その経緯を聞き出した。そして次は俺の番なんだけど、同じ転生者でも全く記憶がないので、ヒントとなるような情報は話せなかった。その代わり、アルの知らないこの街のことを話した。
「アルと俺が転生してきたあの公園に、何かがあると思うんだけどなぁ……」
「にゃーん……」
俺は机の上に地図を広げ、公園の位置を指でトントンとたたいた。それに相槌を打つように、隣でアルがにゃんと一声。アルも進展がないのがもどかしいのか、自分の真っ白な毛を懸命に毛繕いしていた。
アルに初めて会った時はグレーの毛並みの猫だと思っていたけど、外で迷子になっていたから汚れてしまっただけのようだった。家に連れ帰りお風呂に入れると、見事なまでに真っ白な毛並みが蘇った。俺はアルの真っ白でサラサラの毛を撫でるのが好きだ。頭から背中にかけて撫でると、アルも気持ちよさそうに喉を鳴らした。
いつもはふたりとも猫獣人の姿の時に調べ物をするのだけど、今日は書店の定休日なので、昼間から転生についての情報をまとめていた。
とは言っても、周辺での聞き込みや過去資料なども探してみたものの、転生についての解明への糸口は、なにひとつ見つかってはいなかった。
◇
結局何も進展がないまま、半年が過ぎようとしていた。この頃になると、アルは耳と尻尾を隠した人間体になることにも慣れ、最近では一人で街に出かけるようになった。今までは俺の付き添いなしでは出かけなかったのに、少しさみしい気持ちになった。
同じ頃、俺はくり返し同じ夢を見るようになった。ただ、夢の内容は起きると忘れていて、ただ心が暖かくなるような懐かしさだけが残る。なにか、大切な気持ちを忘れてしまっているような気がしても、思い出せなかった。
「アルは、飼い主さんと話がしたいから、人間になりたいって願ったんだよね?」
「うん。弱ってた僕を助けてくれて、なのに病気にかかっていたことがわかったから大変だったと思う。でもとっても大切にしてくれたから、僕は幸せだった。会ってありがとうを伝えたいんだ」
アルの飼い主はレオと言うらしい。アルを家族として招き入れる時に、自己紹介をしてくれたと言っていた。そのことだけでも、アルの飼い主はとてもアルを大切にしてくれていたのだろうとわかる。そしてアルもレオの話をする時は、とても嬉しそうで、なんだかそれが少し羨ましい。俺には転生前の記憶がないけど、同じように大切に思っていた人はいたのだろうか。そう考えると、ぎゅっと胸が苦しくなった。
半年過ぎても全く進展がなかったことで、このままアルの夢も叶わないのだろうかと諦めかけた頃、珍しい来客があった。俺は夜には完全に猫の姿になってしまうから、まだ明るいうちにカフェを閉めることになっている。そのために片付けをしている時だった。
「すみません、まだよろしいですか?」
遠慮がちにドアを開けて顔を覗かせたのは、漆黒の髪が印象的な青年だった。
「あー、すみません。もう閉めるんですよ」
申し訳なく思いながらも、流石に雇われてる身としては、勝手な事はできない。丁重にお断りしようとしたら、ドアの向こうから慌てた声が聞こえてきた。
「あ、あの! すみません!」
「はい、なんでしょう?」
「いきなりすみません、お聞きしたいことがあるんですけど、少しお話できませんか?」
青年に声をかけたのは猫獣人の姿のアルだった。まだ猫獣人は珍しい存在だから、なるべく人前に出る時は人間の姿でって言ってあるのに、耳も尻尾も出したままだ。どうやら慌ててやってきたらしい。
青年はアルの言葉に少し驚いたようだったけど、「いいですよ」そう言って目尻を下げた。その返事を確認したアルは俺の方へ向くと、両手を祈るように合わせた。
「ごめん、少しでいいから、席を借りていいかな? 戸締まりはちゃんとして、鍵を返しに行くから」
「分かったよ。俺からヘレンに伝えておく。戸締まりはしっかりな」
「ありがと!」
青年は初めて見る顔で、おそらく街の人間ではないと思う。そんな知らないやつと二人きりにしていいものかと考えあぐねたが、俺はアルの保護者でもないので、止める権利はない。不安は残るものの、いつもヘンリーに、「お前は過保護すぎるんだよ」とい割れるのを思い出し、引き止めたくなる気持ちを抑え込んだ。
俺は荷物をまとめると、書店の二階にいるヘレンのもとへ行き、事情を話した。アルのことは心配だけど、こんなに近くにヘレンもいるし大丈夫だろう。完全に猫の姿になってしまう前にと、急いで帰宅の途についた。
入れ替わる時間は少し曖昧で、交差する少しの間だけなら、二人同時に猫獣人の姿でいられるようだ。会話だけなら片方が完全に猫になってしまっても、相手が獣人なら会話は可能ということも分かった。
けれどやはり調べ物をするには、二人同時に会話できる獣人の姿の時のほうが効率が良いので、タイミングを見計らって情報収集をすることにした。
まずは、アルは転生前の記憶が残っているから、その経緯を聞き出した。そして次は俺の番なんだけど、同じ転生者でも全く記憶がないので、ヒントとなるような情報は話せなかった。その代わり、アルの知らないこの街のことを話した。
「アルと俺が転生してきたあの公園に、何かがあると思うんだけどなぁ……」
「にゃーん……」
俺は机の上に地図を広げ、公園の位置を指でトントンとたたいた。それに相槌を打つように、隣でアルがにゃんと一声。アルも進展がないのがもどかしいのか、自分の真っ白な毛を懸命に毛繕いしていた。
アルに初めて会った時はグレーの毛並みの猫だと思っていたけど、外で迷子になっていたから汚れてしまっただけのようだった。家に連れ帰りお風呂に入れると、見事なまでに真っ白な毛並みが蘇った。俺はアルの真っ白でサラサラの毛を撫でるのが好きだ。頭から背中にかけて撫でると、アルも気持ちよさそうに喉を鳴らした。
いつもはふたりとも猫獣人の姿の時に調べ物をするのだけど、今日は書店の定休日なので、昼間から転生についての情報をまとめていた。
とは言っても、周辺での聞き込みや過去資料なども探してみたものの、転生についての解明への糸口は、なにひとつ見つかってはいなかった。
◇
結局何も進展がないまま、半年が過ぎようとしていた。この頃になると、アルは耳と尻尾を隠した人間体になることにも慣れ、最近では一人で街に出かけるようになった。今までは俺の付き添いなしでは出かけなかったのに、少しさみしい気持ちになった。
同じ頃、俺はくり返し同じ夢を見るようになった。ただ、夢の内容は起きると忘れていて、ただ心が暖かくなるような懐かしさだけが残る。なにか、大切な気持ちを忘れてしまっているような気がしても、思い出せなかった。
「アルは、飼い主さんと話がしたいから、人間になりたいって願ったんだよね?」
「うん。弱ってた僕を助けてくれて、なのに病気にかかっていたことがわかったから大変だったと思う。でもとっても大切にしてくれたから、僕は幸せだった。会ってありがとうを伝えたいんだ」
アルの飼い主はレオと言うらしい。アルを家族として招き入れる時に、自己紹介をしてくれたと言っていた。そのことだけでも、アルの飼い主はとてもアルを大切にしてくれていたのだろうとわかる。そしてアルもレオの話をする時は、とても嬉しそうで、なんだかそれが少し羨ましい。俺には転生前の記憶がないけど、同じように大切に思っていた人はいたのだろうか。そう考えると、ぎゅっと胸が苦しくなった。
半年過ぎても全く進展がなかったことで、このままアルの夢も叶わないのだろうかと諦めかけた頃、珍しい来客があった。俺は夜には完全に猫の姿になってしまうから、まだ明るいうちにカフェを閉めることになっている。そのために片付けをしている時だった。
「すみません、まだよろしいですか?」
遠慮がちにドアを開けて顔を覗かせたのは、漆黒の髪が印象的な青年だった。
「あー、すみません。もう閉めるんですよ」
申し訳なく思いながらも、流石に雇われてる身としては、勝手な事はできない。丁重にお断りしようとしたら、ドアの向こうから慌てた声が聞こえてきた。
「あ、あの! すみません!」
「はい、なんでしょう?」
「いきなりすみません、お聞きしたいことがあるんですけど、少しお話できませんか?」
青年に声をかけたのは猫獣人の姿のアルだった。まだ猫獣人は珍しい存在だから、なるべく人前に出る時は人間の姿でって言ってあるのに、耳も尻尾も出したままだ。どうやら慌ててやってきたらしい。
青年はアルの言葉に少し驚いたようだったけど、「いいですよ」そう言って目尻を下げた。その返事を確認したアルは俺の方へ向くと、両手を祈るように合わせた。
「ごめん、少しでいいから、席を借りていいかな? 戸締まりはちゃんとして、鍵を返しに行くから」
「分かったよ。俺からヘレンに伝えておく。戸締まりはしっかりな」
「ありがと!」
青年は初めて見る顔で、おそらく街の人間ではないと思う。そんな知らないやつと二人きりにしていいものかと考えあぐねたが、俺はアルの保護者でもないので、止める権利はない。不安は残るものの、いつもヘンリーに、「お前は過保護すぎるんだよ」とい割れるのを思い出し、引き止めたくなる気持ちを抑え込んだ。
俺は荷物をまとめると、書店の二階にいるヘレンのもとへ行き、事情を話した。アルのことは心配だけど、こんなに近くにヘレンもいるし大丈夫だろう。完全に猫の姿になってしまう前にと、急いで帰宅の途についた。
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