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⑤ 念願叶って、再会できました
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「引き止めちゃってごめんなさい。僕、アルっていいます」
初めましてなのに急に声をかけ引き止めたのにもかかわらず、青年は嫌な顔ひとつせず言われるままに椅子へと腰掛けた。そして、向かい合って自己紹介を始めた僕のことを、じーっと見つめ軽く頷いたあと、自身も口を開いた。
「俺は、レオナルド。みんなレオって呼ぶよ」
青年の口から出てきた名前に、僕の心臓は一気に飛び跳ねた。もし、僕の期待通りなのだとしたら、こんなに嬉しいことはない。ずっと夢見ていたことだから。僕の期待はどんどん膨らんでいく。
でも早とちりだったら困るから、ワクワクとした気持ちを懸命に抑えて、僕は祈るような気持ちで言葉を続けた。
「間違っていたら、ごめんなさい。……前に、真っ白な猫を飼っていませんでしたか?」
「うん、飼っていたよ。……病気で亡くしてしまったけどね」
「ああ! やっぱり!」
僕の問いかけに、青年……ううん、『レオ』は、迷いなく答えた。人違いだったら、こんなにスムーズに答えられるはずがない。僕は確信すると同時に、嬉しくて思わず立ち上がった。
何の手がかりもなくてもう諦めかけていたけど、きっと神様が出会わせてくれたんだ。僕のことを早く思い出してほしくて、生まれ変わる前の僕のことを伝えた。
「僕、その白猫のアルです。……レオに会いたくて、生まれ変わったんです!」
ライオネルに、知らない人の前で獣人の姿を見せるなと言われたことはすっかり忘れて、猫獣人の姿のまま尻尾をピーンとたててゆっくりと左右にゆらした。
目の前にいるレオは、確かに記憶の中にあるレオとそっくりだ。漆黒の髪が綺麗でいつも見とれていたのを思い出す。レオは「髪色変えたほうがいい?」って聞くから、僕はそのままがいいのにって考えてたら、自然と耳は斜め後ろに倒れるし尻尾はブンブン揺れちゃうし。そんな僕を見て「アルはおれの黒髪が好きなんだね」って言いながら笑ってたっけ。
「ありがとう。……生まれ変わってまたこうして会えるなんて、奇跡だね」
レオはニコニコしてそう答えるけれど、僕の記憶の中の無邪気に笑うレオの姿とは違って、何故か作り物の笑顔のような気がした。本当にレオの生まれ変わりなら、もっと喜んでくれるはずだ。でも目の前のレオは、まるで他人事のような受け答えしかしてこない。僕は無意識に眉をひそめる。
それに、僕は病気で死んで異世界転生をしてきた。同じ世界にレオがいるのなら、僕と同じように外見が変わっている可能性が高い。こんなにも、転生前のレオと同じような外見になるものなのだろうか。
一度そんな事を考え始めたら、嬉しい気持ちが一気にしぼんできてしまった。けれどきっと僕が知らないだけで、同じような容姿で転生する人もいるのかもしれない。一度湧き出た不安を心の中に閉じ込めると、僕はレオに向かってずっと言いたかった言葉を伝えることにした。
「レオに会いたかった。ずっとありがとうって言いたかった。……病気の僕を助けてくれてありがとう。最期まで大切にしてくれてありがとう」
僕の瞳からは、自然と涙が溢れ出てきた。レオはちょっと困ったようにハンカチを取り出すと、僕の涙を拭ってくれた。
◇
カフェの戸締まりをしてヘレンに鍵を返したあと、僕は誘われるがままにレオの自宅へと足を踏み入れていた。
「コーヒーが美味しいと言うから行ったけど、飲み損ねちゃったな。……アルくんは、コーヒー飲める? アイスティーの方がいいかな?」
「……あ、じゃあアイスティーで」
アルくん……? レオ、僕のことそんなふうに呼んでなかったよね? 間違えちゃったのかな?
先ほど無理やり心の奥にしまい込んだ違和感が、再び湧き上がってきた。でも、レオは僕がいなくなってから何匹もペットを飼ったかもしれない。若い頃に世話していた猫のことなんて、記憶が曖昧になっているのかもしれない。
僕はもう一度湧き出た違和感を再び仕舞い込むと、ぱっと顔を上げてレオを見た。
「レオはいつ頃こっちの世界に来たの? 神様に会えた? 僕ね、挨拶をしようとしたのに会えなくて……」
「ごめんね、実はこっちに来たときのことは良く覚えていなくて。……記憶が混濁しちゃってるのかな。これから話していくうちに思い出せるかもしれない。色々と教えてね。……はい、アイスティー。チーズケーキもあるから持ってくるね」
僕が次々と質問するのに対して、レオは申し訳無さそうに答えたあと、その場から逃げるようにキッチンの方に消えていった。
そっか、やっぱり僕のことちゃんと覚えていたわけじゃないんだ……。
僕はちょっと寂しかったけど、さっきから感じていた違和感の正体がわかって、少しだけホッとした気持ちになった。レオには申し訳ないけど、ちょっとだけでも疑ってしまったんだから。
僕は少し寂しさを感じつつも、転生なんてすごい体験をしたのだから仕方がないかと、出されたアイスティーを一気に飲み干した。
初めましてなのに急に声をかけ引き止めたのにもかかわらず、青年は嫌な顔ひとつせず言われるままに椅子へと腰掛けた。そして、向かい合って自己紹介を始めた僕のことを、じーっと見つめ軽く頷いたあと、自身も口を開いた。
「俺は、レオナルド。みんなレオって呼ぶよ」
青年の口から出てきた名前に、僕の心臓は一気に飛び跳ねた。もし、僕の期待通りなのだとしたら、こんなに嬉しいことはない。ずっと夢見ていたことだから。僕の期待はどんどん膨らんでいく。
でも早とちりだったら困るから、ワクワクとした気持ちを懸命に抑えて、僕は祈るような気持ちで言葉を続けた。
「間違っていたら、ごめんなさい。……前に、真っ白な猫を飼っていませんでしたか?」
「うん、飼っていたよ。……病気で亡くしてしまったけどね」
「ああ! やっぱり!」
僕の問いかけに、青年……ううん、『レオ』は、迷いなく答えた。人違いだったら、こんなにスムーズに答えられるはずがない。僕は確信すると同時に、嬉しくて思わず立ち上がった。
何の手がかりもなくてもう諦めかけていたけど、きっと神様が出会わせてくれたんだ。僕のことを早く思い出してほしくて、生まれ変わる前の僕のことを伝えた。
「僕、その白猫のアルです。……レオに会いたくて、生まれ変わったんです!」
ライオネルに、知らない人の前で獣人の姿を見せるなと言われたことはすっかり忘れて、猫獣人の姿のまま尻尾をピーンとたててゆっくりと左右にゆらした。
目の前にいるレオは、確かに記憶の中にあるレオとそっくりだ。漆黒の髪が綺麗でいつも見とれていたのを思い出す。レオは「髪色変えたほうがいい?」って聞くから、僕はそのままがいいのにって考えてたら、自然と耳は斜め後ろに倒れるし尻尾はブンブン揺れちゃうし。そんな僕を見て「アルはおれの黒髪が好きなんだね」って言いながら笑ってたっけ。
「ありがとう。……生まれ変わってまたこうして会えるなんて、奇跡だね」
レオはニコニコしてそう答えるけれど、僕の記憶の中の無邪気に笑うレオの姿とは違って、何故か作り物の笑顔のような気がした。本当にレオの生まれ変わりなら、もっと喜んでくれるはずだ。でも目の前のレオは、まるで他人事のような受け答えしかしてこない。僕は無意識に眉をひそめる。
それに、僕は病気で死んで異世界転生をしてきた。同じ世界にレオがいるのなら、僕と同じように外見が変わっている可能性が高い。こんなにも、転生前のレオと同じような外見になるものなのだろうか。
一度そんな事を考え始めたら、嬉しい気持ちが一気にしぼんできてしまった。けれどきっと僕が知らないだけで、同じような容姿で転生する人もいるのかもしれない。一度湧き出た不安を心の中に閉じ込めると、僕はレオに向かってずっと言いたかった言葉を伝えることにした。
「レオに会いたかった。ずっとありがとうって言いたかった。……病気の僕を助けてくれてありがとう。最期まで大切にしてくれてありがとう」
僕の瞳からは、自然と涙が溢れ出てきた。レオはちょっと困ったようにハンカチを取り出すと、僕の涙を拭ってくれた。
◇
カフェの戸締まりをしてヘレンに鍵を返したあと、僕は誘われるがままにレオの自宅へと足を踏み入れていた。
「コーヒーが美味しいと言うから行ったけど、飲み損ねちゃったな。……アルくんは、コーヒー飲める? アイスティーの方がいいかな?」
「……あ、じゃあアイスティーで」
アルくん……? レオ、僕のことそんなふうに呼んでなかったよね? 間違えちゃったのかな?
先ほど無理やり心の奥にしまい込んだ違和感が、再び湧き上がってきた。でも、レオは僕がいなくなってから何匹もペットを飼ったかもしれない。若い頃に世話していた猫のことなんて、記憶が曖昧になっているのかもしれない。
僕はもう一度湧き出た違和感を再び仕舞い込むと、ぱっと顔を上げてレオを見た。
「レオはいつ頃こっちの世界に来たの? 神様に会えた? 僕ね、挨拶をしようとしたのに会えなくて……」
「ごめんね、実はこっちに来たときのことは良く覚えていなくて。……記憶が混濁しちゃってるのかな。これから話していくうちに思い出せるかもしれない。色々と教えてね。……はい、アイスティー。チーズケーキもあるから持ってくるね」
僕が次々と質問するのに対して、レオは申し訳無さそうに答えたあと、その場から逃げるようにキッチンの方に消えていった。
そっか、やっぱり僕のことちゃんと覚えていたわけじゃないんだ……。
僕はちょっと寂しかったけど、さっきから感じていた違和感の正体がわかって、少しだけホッとした気持ちになった。レオには申し訳ないけど、ちょっとだけでも疑ってしまったんだから。
僕は少し寂しさを感じつつも、転生なんてすごい体験をしたのだから仕方がないかと、出されたアイスティーを一気に飲み干した。
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