麻紀の色々置き場

一ノ瀬麻紀

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贈り物

ねむさん、ハピバ!

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 俺は人間としての人生を全うしたあと、天国へたどり着き、先に旅立った者たちとの涙の再会。そして現世での辛かったことも全て洗い流され、天国で平和な日々を送る……のかと思っていたのに!!

 俺はなぜか記憶を持ったまま転生していた。しかも一度や二度ではない。覚えているだけでも、両手では足りないくらいだ。しかも、なぜか全部動物への転生なのだ。いつも転生したばかりの頃は記憶がなく、生涯の幕を閉じる間際になって、自分が転生を繰り返していることを思い出す。なのにまた忘れて、転生を繰り返してきた。

 そして何度目かの転生を繰り返し、俺は再び人間に転生していた。どのくらい時が巡り巡ってきたのだろうか。今まで違う点は、今回は人間に転生したせいなのか、初めから転生の記憶を持って生まれ変わっていた。
 まだ、なぜこんなにも転生を繰り返しているのかわかっていなかったけど、最近はよく同じ夢を見るようになっていた。

『ゴリラってかっこいいよな!』

 動物園のゴリラのオリの前で目を輝かせる少年。そしてその場面はスライドショーのように移り変わり、その少年がどんどん成長していく。……気が付くとその少年は随分成長し、家族連れでゴリラの檻の前に立っていた。

 いつもはそこで、電源を落としたテレビのように、プツリと途切れ暗転するのに、今日はさらに場面が切り替わった。
 今まではテレビを見るかのように、ゴリラと少年のシーンを見ていたのに、今日は俺の眼の前に、いつものゴリラがいた。一緒に来ていた子どもたちはあっという間にゴリラに飽きてしまい、どんどん次に行こうとする。俺はもう少し見ていたいからと伝え、家族は先に行ってるよと俺を置いてさっさと行ってしまった。

 俺は一人になれたことに安堵し、改めてゴリラと視線を合わせた。最近は俺が家族と一緒だから、怖がらせてはいけないとわかっているのか、近くまで来ようとはしなかった。けれど今は久しぶりにひとりきりだ。ゴリラは静かに俺の直ぐ側までやってきた。俺も、格子を掴むゴリラのできる限り近くに寄った。

『お前が、人間だったら良かったのに』
 まるで、恋人に向けるような優しい瞳で、俺はゴリラに話しかけた。

『そんなこと、ありえるわけないのにな』
 俺の言葉にゴリラは悲しそうな目をして、格子を掴んでいた手を離し、こちらに向かって手を伸ばした。届くわけはないのに、俺も懸命に手を伸ばす。

『生まれ変われるのなら、俺はお前と……』
 伝えたかった言葉は、最後まで伝えきれたのだろうか。最後の場面まで見ることはできないまま、俺は静かに目を覚ました。

 頬から伝わる、温かい涙。夢だと思って見ていたはずなのに、いつしかこれは夢ではなく自分の記憶で、俺はあのゴリラに確かな思いを抱いていたのだと、確信に変わっていた。
 

 俺は記憶をたどり、その動物園を探してみた。何度も気が遠くなるほどの転生を繰り返しているのだから、同じ場所があるわけがないのはわかっていた。それでも、探さずにはいられなかった。せめて似た場所でもいいから見つけて、俺の叶うことのない思いに区切りをつけたい、そう強く思った。

 幸いなことに、一泊程度で行ける場所に、似た雰囲気の動物園を見つけることができた。これで、俺の転生人生に終止符が打たれるはずだ。
 俺は期待と寂しさと強さと、ぐちゃぐちゃに入り混じった気持ちのまま、動物園へ向かった。初めての場所のはずなのに、懐かしい気持ちに包まれる。園内マップなど知らないはずなのに、自然と足が動いていた。

 園内で一番大きいのではないだろうか。圧倒的存在感を示すその檻は、人間の指示なくしては出られない監獄のような場所のはずなのに、とても神聖な場所のようにさえ感じた。
 そしてそこには、俺と同じように上を向いてたたずむ、ひとりの青年が立っていた。
 俺が気付いたのと同時に、その青年も俺の存在に気付いたようだった。そしてじーっと俺の顔を見たあと、徐々に大きく目を見開いた。そしてツカツカと早足でこちらに向かってきた。

「こちらには良く来られるんですか?」

 良くも何も、ここに来るのは初めてだ。しかも全く知らない人に急に話しかけられて、俺は戸惑い言葉を探してしまう。それでも拒絶できなかったのは、なぜかここから去ってはいけないような気がしたからだ。

「一人で、旅行に……」

 戸惑いながら返事をする俺に、眼の前の彼は優しく微笑んだ。

「急なお誘いで申し訳ないのですが、僕も一人旅なんですよ。もしよろしければ、ご一緒させてもらえませんか?」

 青年はそう言うと、俺の手をぎゅっと握りしめてきた。えっ? と驚いて彼を見上げると、嬉しそうにニコニコと微笑んでいる。
 めちゃくちゃグイグイ来るなと戸惑いながらも、ぎゅっと握りしめられた手が暖かく、そしてとても懐かしい気持ちになったので、その手を振りほどくことができなかった。


 そこから仲良くなるのは、とても早かった。彼の名前はネムと言った。ネムとはとても気が合い、好きなことも好きな食べ物も価値観もとても良く似ていた。そして何より、一緒にいるのがとても心地よかった。お互いに独り身で、気を使う相手もいないし、二人が離れる理由もなかった。

 親密な関係になるのも、そう時間はかからなかった。

「言葉にすると壊れてしまうそうな気がして、ずっと伝えられなかったのですが、今なら聞ける気がします」

 ベッドの中でまどろむ俺に、ネムはそう言って髪をなでた。

「ん? 何をだ?」
「前世のオレのこと、覚えていますか?」
「……ああ、もちろんだ。お前が人間になってほしいと願ったのは、俺だからな」

 俺達が初めて動物園で出会ったあの日、確信を持ったわけではないのに、二人で顔をしっかりと見つめ合ったあと、お互いに会いたかった人だと認識した。何がどうとか理屈じゃなくて、心で感じたんだ。

 けれどあえて確認することはなかった。本当ならすごいことだし、俺の夢の中の話だったのなら、それはそれで良い思い出として胸にしまっておこうと思っていたからだ。今の俺は、ネムが一緒にいてくれるだけで幸せだから、過去をわざわざ持ち出さなくても良いような気がしていた。

「あなたも願っていてくれたんですね」
「もって、お前もか?」
「あんな熱い視線をずっと送ってきていて、何言ってんですか。彼女を連れてきたときとか、家族で来たときとか、オレの心の中は穏やかじゃなかったんですよ」

 むーっと膨れる愛おしい人の髪の毛を、俺はクシャクシャに撫でた。

「ゴリラの時のお前、かっこよかったぞ!」
「今はどうですか?」
「もちろん、今だってかっこいいぞ!」
「なんですか、その取ってつけたようなお世辞は!」

 再びむーっと膨れる恋人が、とても愛おしい。

「ゴリラだろうが人間だろうが、お前がお前でいる限り、俺は何度でも出会いたいと思ってるぞ」

 俺は素早く唇にキスを落とした。

 でももうしばらくは、転生はしなくていいかな。せっかく願いがかなったのだから、人生を全うし幕を下ろすその日まで、二人一緒に並び歩いて行けたらなと思っているよ。末永くよろしくな!


✤✤

Xで、#ねむちゃんハピバ というタグで ねむぞうさん(@nemuzou1704)のお祝いをさせていただきました。
ツイノベしようと思ったけど、長めになったので、アルファさんにポンしようって思って!🤣

ねむさん、ささやかですが気持ちを込めて書きましたので、お受け取りくださいませー。
お誕生日おめでとう🎁✨️

誤字脱字等ありましたらごめんなさい💦
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感想 6

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みんなの感想(6件)

楓乃めーぷる

麻紀さん、この度はこちらにも掲載していただきありがとうございます✨
拙い絵ですが、描かせていただけて嬉しかったです💓
快く許可をいただき、ありがとうございました!

私の紹介まで! 本当にありがとうございます!
同じお名前の方がいらっしゃると思いますが、あざらしアイコンまで説明してくださって優しい✨
太陽君は良い子なので、良いパートナーが見つかるといいですね(*´艸`*)💓

2024.09.02 一ノ瀬麻紀

✤ めーぷるさん ✤

このたびは、素敵なFAありがとうございました💕
太陽の人の良さが滲み出るどころか、溢れ出しちゃってるよ😍
良い子を紹介してあげたいんだけど、まだ見つかってないんだよね😅

本業は文字書きさんなので、しっかり宣伝しないと👍
アルファさん、本文にリンク貼れないからねー。
アドレスは書いたものの、コピペも出来ないし。
なので、トレードマークのあざらしさんをお伝えしました🦭

解除
iku
2024.07.25 iku
ネタバレ含む
2024.07.26 一ノ瀬麻紀

✤ ikuさん ✤

コメントありがとうございます😘

先輩の貫禄🤣🤣
これでも、かなり抑えたみたいだけどね🤭

脱衣所に籠城した際に、ちゃっかりパンツを盗みとる麻琴。転んでもただでは起きない?!😂
蒼人と言い合う姿は、ふわふわしているようで、意外と芯があるようです(笑)

でも、オメガにとっては死活問題だからねぇ。本物がいなければ、代わりのものをよこせとww

うちではまだ見せなかった、ちょっぴりSな蒼人も見ることが出来て、私は満足です🥰
ムッツリドSの称号を与えましょうかね😁


トリュフさんのファンアートも、雨ちゃんを始め皆様の応援RPや、ぷるぷるさんとゆあたんのファンSSも、あっちでもこっちでも応援してくれるikuたんも、ひよこ🐣麻紀の初めてのおつかいを、こっそり見守ってくれている皆様も、ほんとに感謝しかありません🙏

みんな、甘やかすの上手よねー❤️

解除
iku
2024.07.25 iku
ネタバレ含む
2024.07.26 一ノ瀬麻紀

✤ ikuさん ✤

めーぷるさんからのファンSSにコメントありがとうございます🫶

まさか、ファンSSなんていただけるとは思ってなくて、まずびっくりしたというのが先に来て、そのあと嬉しくなって、最終的にニヤニヤニヤニヤする怪しい人となりました(笑)

麻琴の可愛いを表現していただけて、ほんと感謝です💕💕

解除

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