救世主くん!君の推しと裏ボス、付き合ってますよ!(…なんだけど、ウチの弟と青春始まってる?)

末野みのり

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本編

3-1 スローライフは衣食住から

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 十七歳にもなって、あんなに白熱するとは……。
 あっち向いてホイが……。
 おかげで電波ないのに掛かってきた電話のこととか、ぬるっと人外ド天才してきたユリウスに対する恐怖心は落ち着いて眠る事ができた。ほんとにアーウィンとルドガーに助けられている。

「お……はよ……、ごめん、雑魚寝に付き合わせて」
「久しぶりで楽しかったよ。昔はルドガーと結構やってたし」
「お~ガキの頃な」

 やっぱりこっちでも昔からの付き合いなんだ。幼馴染って、いいよな……。
 しみじみしてる間に、アーウィンは寝起きからテキパキと召使いの人に色々頼んで朝の準備を進めてくれた。

「この服アーウィンの?」
「兄上のお下がりの僕の服」
「ヒョッ」
「出た」

 ルドガー!!笑うな~~~!!
 お、お、推しの服とかオークションとか参加せずに本物着れていいんですかぁ!?

「お、お、お金いります……?」
「じゃあもらっておこうかな」
「ノるなよ。こっちで使えるわけじゃねぇんだから、帰った時のために少しでも多く残しておいたほうがいいだろ」

 もしかしてルドガーの方が常識人という説はある?アーウィンの方が人生エンジョイ勢の香りがしてきたぞ。俺の修学旅行発言にもノッて来てたし……。

「でもオタクには推しのために貢がなければならぬ時が……?」
「どうしても貢ぎたいなら本人にやれよ。この後会うんだから」
「い……息がちゃんと出来る自信がない」
「僕の顔で練習しとく?」

 ずい、とアーウィンが顔を近づけてきた。確かに顔はよく似ている。ゲーム中でも、似ている話はめちゃくちゃしてたし……。
 でもなんか、なんかこう……。

「いや……アーウィンはアーウィンだなって感じ……」
「ええ?だってユウの知ってるゲームの中の兄上って十七歳でしょ。今の兄上より僕の方が近くない?」

 全体的な体格とかはそうなはずなんだけど、表情が違いすぎるんだよな。

「クロードさんと比べると、顔からポジティブと陽気が溢れすぎてんだよ、お前」
「それ」
「それだったかぁ」

 あっけらかんとアーウィンは言った。ほんとにそれ。それにしても、クロードが深刻な顔しがちだったの、魔竜討伐の状況的なことだけじゃなかったんだ。

「結構見間違えられるから、いけるかと思って」
「まあ背格好大分似てきたしな」

 似てるんだけどな、見た目は本当に。
 表情でこんなに印象違うんだってびっくりするぐらい違う。もちろん、ゲームの中のアーウィンとも。
 魔竜討伐に失敗した勇者の弟として、称賛も罵声も受け続けたゲームの中のアーウィンは、本当に疲れ果てた顔で、誰のことも信じてなさそうな顔をしていたから。

「じゃあ、ひとまず深呼吸してから行こうか。大丈夫大丈夫、兄上のファンでデルウッド侯爵って人がいてね、もうそれはそれはすごい挙動不審オタクしてくれてて、兄上も慣れてるから。理解は全然してないけど」
「クロード・フォン・ユーノヴェルト、オタクに理解のないタイプなんですか!?解釈一致すぎる!!」
「新規情報でオタクを興奮さすな」

 ルドガー、オタクに理解はないけど身内がオタクなせいで行動パターン分かっているタイプだった。助かる。

「え~、オタクに嬉しすぎる解釈一致……困惑苦笑されたい……」
「厄介オタク始めるな。普通に友だちの兄ちゃんに会うつもりで行けって」
「ルドガーやめて。それはそれで別の緊張感が出てくる」

 友だちの身内に会うの、めちゃくちゃ緊張しない!?俺だけ!?

「うーん、それ僕も緊張してきたな。家族に友だちって紹介したことないし……。あっち向いてホイめちゃくちゃ強いとか紹介する?」
「それは教えなくていいから!!」

 ええまあ、結構勝ったんですよね、昨日のあっち向いてホイ大会。
 でもさすがにそれ教えてもらっても困惑するだろ。救世主の能力があっち向いてホイなの。
 今のところ、それで困ることなさそうなのが本当にスローライフすぎる。スローライフすぎて、ただのゆる日常ジャンルなんだよな。




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