11 / 13
円満夫婦の後日談
♡きっとそれが最初から欲しかった
しおりを挟む
兄の唇が、どんどん身体を降りていくのを、クレイヴェルはただただ甘受していた。
これが兄の優しい慈悲なのだと思い込んで、悲しい歓喜で、その唇と舌の愛撫を受け入れた。
兄にこのように迫られたことなど、初めてだった。
それが自分の酷い精神状態を労るためなのだと、冷静な部分で思って、それでもいいか、とクレイヴェルは思った。
「兄上、兄上はほんとに皇妃の役目をしていて偉いねぇ……」
「……、……」
え。
と、思った。褒められて、このような顔をした兄を初めて見た。そもそも苛立った表情など、それほど見たこともない。
そんな風に思っていれば、フォルスの歯が、クレイヴェルの腹に食い込んで、歯型を残す。
これも初めてのことだった。繁殖期の狂乱の最中ならばいざ知らず、このように理性のある内に、乞われも命令もされずに、兄が自分に痛みを与えて跡を付けてくるなど。
「あ、にうえ。どうしたの……」
「役目だからじゃない。俺がしたくてしている」
言い放って、フォルスはまた愛撫を身体に落としていった。兄に脱がされるのも初めてだった。そして、乞わずに、陰茎を口に含まれるのも。
じゅぶっ、じゅぶっ、といやらしい音が部屋に響き渡る。激しい愛撫に、繁殖期の若い身体が耐えられずにすぐ精を吐き出せば、フォルスはその精を余さずに飲んで、また頭を振って愛撫を再開した。
なんて美しい献身だろう。
そうぼんやりと思ったクレイヴェルの耳に、種類の違う水音が混じりはじめる。くち、くち、と密やかに鳴るそれは、自分の股ではないところで鳴っている。
兄が、自らの手で、自分の陰部を慰めていた。
「ヴェル、ヴェル……、早く、早く挿れてやりたい……っ早く挿れて、俺のものにしたい……っ」
譫言のように呟きながら、フォルスはクレイヴェルへの口淫も、自らの陰部への責めも激しくしていった。
繁殖期を過ぎて、兄の陰部はさして開いても濡れてもいないように見えた。
だが二度目の射精を飲みほして、フォルスはその穴で、クレイヴェルの反り返った凶器を飲み込もうと、その切っ先を導いた。
「……っく、ぅ……う……」
「あ、にうえ……っ」
あまりの狭さに、クレイヴェルも呻いた。入っていかない。兄の顔には、苦痛の色が浮かんでいた。だというのに、繋がろうと腰を揺らして受け入れようとしている。
こんな必死でみっともない交尾など、初めてだった。
「兄上、無理、むりだろう、これは……っ、兄上、裂ける……っ」
「いい、いい、裂けても、いいから……」
じっとりと冷や汗の浮かんだ額のその下、フォルスの紫の目が、痛みの涙で湿っていた。
「兄上!」
クレイヴェルはフォルスの身体を押しのけた。
気持ちいいことしか、この人にしたくないのに。どうして。
「ああくそ……っ!ヴェル、まだ俺を見限るな、まだ、まだ出来るから、まだ……」
「兄上、本当に……本当に、そんなになるまで、俺が、欲しい、の」
「欲しい。だからヴェル、ヴェル……指を貸してくれ……っ」
「う、ん……」
フォルスのあまりの剣幕に気圧されて、クレイヴェルはただただ言われるままに指を差し出した。
その指を絡めとったフォルスが、舌でその指先を舐めてしゃぶる。そうして唾液でべとべとになった指を、自らの手と絡ませたまま、陰部へと導く。
「……っふ……んぅ、ん……っ♡」
二人分の指先で、フォルスの陰部がゆっくりと溶けていく。兄の手の促すままに指先を曲げれば、その穴はどんどんクレイヴェルのためだけの場所を開けていった。
「ヴェル……っ♡ヴェル……っ♡♡♡」
指先を促されている間にも、ちゅう、ちゅう、とフォルスの唇がクレイヴェルの身体に落とされる。その度に強く吸われて跡が残り、さらに味わうように甘噛みされて、クレイヴェルの陰茎は昂った。
俺の、俺の雌が、必死に俺を誘惑している。
俺を欲しがって、一生懸命に穴を拡げている。
「……っぁ♡あ、ぅ……っ♡あっ……♡」
指先を促すばかりでなく、フォルスの腰は淫らに揺れて、自らクレイヴェルの指に雌穴で甘えて媚びている。愛しい雄の指先を、ぐりぐりと擦りつけて、ぐちぐちと埋めて、自分で快感を求めて、愛液を垂れ流している。
「ヴェル、ヴェル……っ♡もう、もう入る、もう入るな……っ♡♡♡」
「うん……うん、入る、入るよ……」
フォルスは泣きそうな必死な顔で笑って、そうしてクレイヴェルの指先を引き抜くと、その指先に噛みついてキスをした。
ああ、本当に。本当に、欲しがって、くれている。
交尾なんてもう、しなくていい体で、俺を欲しがって、自分から身体を拓いて、こうして。
自分から、俺を迎えて、くれて。
「……っん、あ、あ、あ……っ」
ぬぷ、ぬぷっ、ずるるる……っ♡
自分で全部、入れて、くれた。
「兄上……」
「……っごめんな、ヴェル……、あんなに、お前が、綺麗だって言って、くれた、のに、こんな醜い欲を、ずっと、隠して、て……っ」
つう、と頬を伝う涙が美しかった。
世の道理で言うのなら、それは醜い独占欲なのかもしれなかった。けれどクレイヴェルにとって、それこそがこの世で一番輝いて見えた。
この公正明大で聡明の兄が隠した醜い独占欲こそが、唯一クレイヴェルの飢えを消してくれる、そう思った。
「好き、好きだ、ヴェル……っ、欲しい、欲しいんだ、俺の、俺だけのものになって……」
「兄上……っ」
「俺がずっと、お前を気持ちよくさせてあげるから。他の雌と、交尾しないでくれ……」
ゆっくり、ゆっくりと兄の腰が揺れて動く。クレイヴェルの精を搾り取ろうと、自分のものにしようと、欲しがって揺れている。
「見てて、見て、ヴェル、こういうの、好きだろう……?」
そうして兄は、繁殖期の狂乱でないから羞恥で顔を染めて、クレイヴェルを誘惑するために、くにくに、と自分で乳首をいじって見せつけもした。
ああ、俺が。
俺がこの人を堕とした。
そんな痴態で自分の雄を誘惑する、雌に堕とした。
俺だけの雌に堕として、俺の唯一になりたい雌に、堕とした。
兄上、俺の兄上…っ俺の、俺のフォルス…っ♡♡♡そんな、そんな風に俺を誘惑するの……っ♡♡♡
「好き……♡兄上が、エッチになってるの、好き、すきだよ……♡」
「あ、あ…っ、ヴェル、ヴェル、吸って、ねぇ、ヴェル…っ」
「うん…っ♡うん、兄上、兄上……っ♡」
「……っぁ、んあ…っ、あっ……♡♡♡」
誘いのままに、じゅう、と乳首に吸い付けば、フォルスは喉を晒して喘いで、きゅうと性器でクレイヴェルを締め付けた。
幸せだった。兄が全身で抱きしめてくれる時、クレイヴェルはいつだって幸せだった。
この人のものになれたら、どんなに幸せだろう、と思った。
思うことも許されないと思っていたから、考えもしなかったそれが、形になる。
兄のものに、なりたい。
「兄上、本当に、俺のこと兄上のものにしてくれるの…っ♡」
「したい、したい……っ、ん、ぅ……っ♡ぁ……あっ♡ヴェル、なって、なって、俺だけのものになって……っ♡♡♡」
両手で乳首を弄ってやりながら、下から突き上げれば、兄の乾いた肌がだんだんと湿っていく。
海竜の、本能的な繁殖の欲求ではない。ただただ、兄が自分を求めて熱を上げている。
「兄上。……なら、逃げたらだめだよ。俺のこと、兄上が最後まで責任とって、ちゃんと愛してくれないとだめだよ……ッ!!」
「うん、うん……っ♡ヴェル、ヴェル、ずっとずっと愛してる、愛してるから、俺だけ、俺だけにして……っ♡」
ずっと、なんて、どうやって信じたらいいのだろう。
でも、兄は自分のずっとを信じてくれた。
死ぬまで、死んでも、ずっとずっとお嫁さんだからね。クレイヴェルのその言葉を信じて、堕ちてくれた。堕ちて堕ちて、その生涯全ての繁殖を、弟のために使ってくれた。
怖い、と思った。
まだ来ぬ日の、愛を信じるということを。
でも兄がそうしてくれたから、自分も信じて、その幸福に溺れてしまおう、と思った。
「……兄上のものに、して」
そうして告げた、その唇にフォルスが食いつく。
兄の両手が両耳を塞いで、世界からクレイヴェルを切り離した。ぐちゅぐちゅ、と舌で交合する音しか聞こえなくなって、愛しい兄に捕まえられて囚われた。
口蓋の裏を舐め上げられれば、ばちばち、と頭の中で飢餓感が弾け飛ぶ。絶頂するかのような快感と幸福で、クレイヴェルは兄の体に縋り付いた。
そうして、長い口付けを離したフォルスの体が、大きく揺れる。
ぐちゅっ、ぐちゅっ、と大きな水音を立てて、雌の性器と雄の性器が擦り合う。
「っヴェル、ヴェル、俺の、俺のヴェル…っ!!」
兄が、自分の腹の上で腰を振っている。
兄が、自分を欲しがっている。
「ヴェルっ、もうっ、もう俺のものになったんだからっ!絶対、絶対にっ!お前の子種っ、一滴だって他の雌にやったらだめだからな…っ!俺の、俺のだから…っ♡」
「やらないっ♡やるわけないっ♡♡♡兄上っ♡兄上っ♡全部っ全部兄上のっ♡♡」
ぐしゃりと泣き笑いになったフォルスが、めちゃくちゃにクレイヴェルにキスをする。母の乳に必死に縋り付く赤子のように、何一つ繕えない無様なキスで。
そんなに、そんなに俺のことを欲しがっているの。
兄上、兄上。初めて見る、そんな必死な顔。
「ヴェルっヴェル……っあい、愛してる、愛してる、ヴェル……っ俺のヴェル……っ!!」
ああ、知らなかった。
俺は。
本当は、本当は!
ずっと、これが、欲しかった。
兄上に、狂って欲しかった。俺に狂って、俺を、俺と同じ強さで求めて欲しかった。
愛で狂って、同じところまで堕ちて欲しかった。
堕ちてきて、くれた。
「……っ兄上っ♡兄上っ♡♡♡俺も、俺もっ♡♡♡愛してる、愛してる……ッ!!♡♡♡」
「っぁ、あ……っ♡♡あっ♡あっ♡あっ♡あーっ♡♡♡♡あーっ♡♡♡♡♡」
両手で腰をつかんで陰茎を押し込んで、クレイヴェルはフォルスを絶頂に押し上げた。クレイヴェルもまた、激情のままにフォルスの中へと射精した。
フォルスの体ががくがくと揺れて、クレイヴェルの体にしなだれかかる。つう、とフォルスの唾液がクレイヴェルの胸元に落ちた。
「……っ、はぁ、は……っ、ヴェル、若い子に目移りしたら、だめだぞ……おまえ、俺を、ここまでしたんだから……」
「うん、うん……しない、しないよ……」
フォルスは苦しそうに笑って、クレイヴェルに触れるだけの口付けを落とした。
ほんの触れるだけのキスに、身体は熱を上げ始めている。この美しい雌に奉仕して、愛を乞おうといきり立って固く膨らみ続けている。
「俺は、あなただけの雄だよ。だから全部、あなたが受け止めて。俺の愛も欲も、全部だよ。……全部、いいね」
「ヴェル、クレイヴェル。欲しい。お前が好きで、お前の全部、欲しくて、欲しくて……、だから全部、俺にくれ」
フォルスはいまだ震えの収まらない太腿を揺らして、クレイヴェルの陰茎を体の内側で撫でて擦った。
クレイヴェルの、繁殖期の若い身体はそれだけで煽られて、子宮に狙いを定めて反り返る。
兄の息はまだ荒い。繁殖期を過ぎた体だ、何度も何度も交われるわけがない。
けれど、兄が求めている。
「……壊れるよ、兄上。いいの」
「俺は、それが欲しい。ヴェル。……俺の、ヴェル」
すり、と兄の手がクレイヴェルの頬骨を擽る。誘っている。
俺の愛で狂って、壊れると分かっているのに、誘っている。ならばいいかと思った。
俺は兄上のものなんだから。全部全部、あげる。あなたが壊れても、全部全部。
「……うん。兄上。俺の、フォルス」
フォルス、フォルス。
俺の愛。
俺の狂気。
俺の全部、あなたに入れて。
その後は、兄の求めのままに、クレイヴェルはフォルスの体をゆすり続けた。繁殖期であれば淫らに反応して艷やかな声を上げていた身体は、次第にただただ呻くように声を漏らし、絶頂に追いやられればガクガクと身体を痙攣させて、だらりと力を失った。
余人が見れば、ほとんど暴力に等しい交尾だった。
ただ、兄が自分を求めている、という精神的安寧を得たクレイヴェルは、時折理性を取り戻し、兄にもうやめようか、と尋ねた。
その度にフォルスは首を横に振って、唇を開いてクレイヴェルにキスをねだった。もはや手足で誘惑するほどの力も残されていないのに、全盛期の雄の繁殖期を全て受け入れようとしていた。
何度も何度も絶頂に追いやって、身体の奥底に精を吐き出して、それでも収まらぬ興奮を、フォルスはまた欲しがって。
求められて嬉しくて、クレイヴェルは兄を何度も呼んだ。兄上、兄上。フォルス、俺のフォルス。呼べば兄が嬉しそうに笑うから、また熱情は燃え上がった。
そうして何度、繋がったか。
兄の体が芯を失って、だらりと項垂れている。
わかっている。繁殖期を過ぎれば、このような交尾など耐えられるわけがないのを。
「あ……、あー……っ、あー………っ」
兄の口がだらしなく開いている。正気を失ったかのように、涎を垂らしながら、絶頂の境もわからぬ耽溺に堕とされ続けている。
「ねえ兄上、もう交尾やめる?辛いでしょ、ねぇ……」
何度も精を吐き出して、ほんの欠片の理性を取り戻したクレイヴェルが尋ねる。
「や、だ……おれ、の……ヴェル……おれ、の……」
それでもフォルスはクレイヴェルを求めた。求められて、クレイヴェルの理性は、また簡単に壊れて崩れ落ちる。
こんなに。
こんなに、こんなに!
兄上が、兄上が、俺を求めている!
俺を、他の雌に取られたくなくて、必死に俺を受け入れてくれている!
「あは……♡♡はは…っ♡♡♡じゃあ、本当に……壊すよ、兄上。あなたの体、母親も、王様も、何も出来なくなるまで、壊すからね……♡♡♡」
「う、ん……おい、で、ヴェル……」
そうして、またそれから、何度も交わった。
何度もフォルスは気絶して、それでもクレイヴェルを求め続けた。
性欲のあまりに深く繋がった繁殖期の頃より、余程強く、フォルスは確かな自分の意思で、クレイヴェルを求め続けた。
兄がクレイヴェルの過ぎた独占欲も肉欲もすべて、独り占めしてくれるのが嬉しくて、嬉しくて。
クレイヴェルは、自分すら気付いていなかった心の奥底が満たされて、これ以上はない、と思っていたのに、もっともっと兄のことが恋しくなって、愛しくなって、求めのままに、兄のものになった。
全部全部、兄だけのものに、なった。
「……ふ、ふふ、もう固くならないや。俺の子種、全部、だしちゃった」
「……、……」
ほとんど声も出ない口で、フォルスがクレイヴェルを呼んだ。
「……ぜんぶ、おれの」
ほとんど吐息で言ったフォルスは、穏やかに笑って、そのままことりと気絶して眠りに落ちた。
「……うん、全部、兄上の。俺の全部、兄上の、だからね……」
ずっとずっと、この人から産まれたかった。
でももう体は入れないから諦めていたのに、兄は心に全部入れてくれた。
俺の全部、全部入れてくれた。
俺が兄上の全部食べて。兄上が俺を全部入れてくれて。
これを愛と呼ぶのか、狂気と呼ぶのか、その違いなんて、もうどうでもいい気がした。
だから幸せに溺れて、クレイヴェルもまた、眠りに落ちた。
これが兄の優しい慈悲なのだと思い込んで、悲しい歓喜で、その唇と舌の愛撫を受け入れた。
兄にこのように迫られたことなど、初めてだった。
それが自分の酷い精神状態を労るためなのだと、冷静な部分で思って、それでもいいか、とクレイヴェルは思った。
「兄上、兄上はほんとに皇妃の役目をしていて偉いねぇ……」
「……、……」
え。
と、思った。褒められて、このような顔をした兄を初めて見た。そもそも苛立った表情など、それほど見たこともない。
そんな風に思っていれば、フォルスの歯が、クレイヴェルの腹に食い込んで、歯型を残す。
これも初めてのことだった。繁殖期の狂乱の最中ならばいざ知らず、このように理性のある内に、乞われも命令もされずに、兄が自分に痛みを与えて跡を付けてくるなど。
「あ、にうえ。どうしたの……」
「役目だからじゃない。俺がしたくてしている」
言い放って、フォルスはまた愛撫を身体に落としていった。兄に脱がされるのも初めてだった。そして、乞わずに、陰茎を口に含まれるのも。
じゅぶっ、じゅぶっ、といやらしい音が部屋に響き渡る。激しい愛撫に、繁殖期の若い身体が耐えられずにすぐ精を吐き出せば、フォルスはその精を余さずに飲んで、また頭を振って愛撫を再開した。
なんて美しい献身だろう。
そうぼんやりと思ったクレイヴェルの耳に、種類の違う水音が混じりはじめる。くち、くち、と密やかに鳴るそれは、自分の股ではないところで鳴っている。
兄が、自らの手で、自分の陰部を慰めていた。
「ヴェル、ヴェル……、早く、早く挿れてやりたい……っ早く挿れて、俺のものにしたい……っ」
譫言のように呟きながら、フォルスはクレイヴェルへの口淫も、自らの陰部への責めも激しくしていった。
繁殖期を過ぎて、兄の陰部はさして開いても濡れてもいないように見えた。
だが二度目の射精を飲みほして、フォルスはその穴で、クレイヴェルの反り返った凶器を飲み込もうと、その切っ先を導いた。
「……っく、ぅ……う……」
「あ、にうえ……っ」
あまりの狭さに、クレイヴェルも呻いた。入っていかない。兄の顔には、苦痛の色が浮かんでいた。だというのに、繋がろうと腰を揺らして受け入れようとしている。
こんな必死でみっともない交尾など、初めてだった。
「兄上、無理、むりだろう、これは……っ、兄上、裂ける……っ」
「いい、いい、裂けても、いいから……」
じっとりと冷や汗の浮かんだ額のその下、フォルスの紫の目が、痛みの涙で湿っていた。
「兄上!」
クレイヴェルはフォルスの身体を押しのけた。
気持ちいいことしか、この人にしたくないのに。どうして。
「ああくそ……っ!ヴェル、まだ俺を見限るな、まだ、まだ出来るから、まだ……」
「兄上、本当に……本当に、そんなになるまで、俺が、欲しい、の」
「欲しい。だからヴェル、ヴェル……指を貸してくれ……っ」
「う、ん……」
フォルスのあまりの剣幕に気圧されて、クレイヴェルはただただ言われるままに指を差し出した。
その指を絡めとったフォルスが、舌でその指先を舐めてしゃぶる。そうして唾液でべとべとになった指を、自らの手と絡ませたまま、陰部へと導く。
「……っふ……んぅ、ん……っ♡」
二人分の指先で、フォルスの陰部がゆっくりと溶けていく。兄の手の促すままに指先を曲げれば、その穴はどんどんクレイヴェルのためだけの場所を開けていった。
「ヴェル……っ♡ヴェル……っ♡♡♡」
指先を促されている間にも、ちゅう、ちゅう、とフォルスの唇がクレイヴェルの身体に落とされる。その度に強く吸われて跡が残り、さらに味わうように甘噛みされて、クレイヴェルの陰茎は昂った。
俺の、俺の雌が、必死に俺を誘惑している。
俺を欲しがって、一生懸命に穴を拡げている。
「……っぁ♡あ、ぅ……っ♡あっ……♡」
指先を促すばかりでなく、フォルスの腰は淫らに揺れて、自らクレイヴェルの指に雌穴で甘えて媚びている。愛しい雄の指先を、ぐりぐりと擦りつけて、ぐちぐちと埋めて、自分で快感を求めて、愛液を垂れ流している。
「ヴェル、ヴェル……っ♡もう、もう入る、もう入るな……っ♡♡♡」
「うん……うん、入る、入るよ……」
フォルスは泣きそうな必死な顔で笑って、そうしてクレイヴェルの指先を引き抜くと、その指先に噛みついてキスをした。
ああ、本当に。本当に、欲しがって、くれている。
交尾なんてもう、しなくていい体で、俺を欲しがって、自分から身体を拓いて、こうして。
自分から、俺を迎えて、くれて。
「……っん、あ、あ、あ……っ」
ぬぷ、ぬぷっ、ずるるる……っ♡
自分で全部、入れて、くれた。
「兄上……」
「……っごめんな、ヴェル……、あんなに、お前が、綺麗だって言って、くれた、のに、こんな醜い欲を、ずっと、隠して、て……っ」
つう、と頬を伝う涙が美しかった。
世の道理で言うのなら、それは醜い独占欲なのかもしれなかった。けれどクレイヴェルにとって、それこそがこの世で一番輝いて見えた。
この公正明大で聡明の兄が隠した醜い独占欲こそが、唯一クレイヴェルの飢えを消してくれる、そう思った。
「好き、好きだ、ヴェル……っ、欲しい、欲しいんだ、俺の、俺だけのものになって……」
「兄上……っ」
「俺がずっと、お前を気持ちよくさせてあげるから。他の雌と、交尾しないでくれ……」
ゆっくり、ゆっくりと兄の腰が揺れて動く。クレイヴェルの精を搾り取ろうと、自分のものにしようと、欲しがって揺れている。
「見てて、見て、ヴェル、こういうの、好きだろう……?」
そうして兄は、繁殖期の狂乱でないから羞恥で顔を染めて、クレイヴェルを誘惑するために、くにくに、と自分で乳首をいじって見せつけもした。
ああ、俺が。
俺がこの人を堕とした。
そんな痴態で自分の雄を誘惑する、雌に堕とした。
俺だけの雌に堕として、俺の唯一になりたい雌に、堕とした。
兄上、俺の兄上…っ俺の、俺のフォルス…っ♡♡♡そんな、そんな風に俺を誘惑するの……っ♡♡♡
「好き……♡兄上が、エッチになってるの、好き、すきだよ……♡」
「あ、あ…っ、ヴェル、ヴェル、吸って、ねぇ、ヴェル…っ」
「うん…っ♡うん、兄上、兄上……っ♡」
「……っぁ、んあ…っ、あっ……♡♡♡」
誘いのままに、じゅう、と乳首に吸い付けば、フォルスは喉を晒して喘いで、きゅうと性器でクレイヴェルを締め付けた。
幸せだった。兄が全身で抱きしめてくれる時、クレイヴェルはいつだって幸せだった。
この人のものになれたら、どんなに幸せだろう、と思った。
思うことも許されないと思っていたから、考えもしなかったそれが、形になる。
兄のものに、なりたい。
「兄上、本当に、俺のこと兄上のものにしてくれるの…っ♡」
「したい、したい……っ、ん、ぅ……っ♡ぁ……あっ♡ヴェル、なって、なって、俺だけのものになって……っ♡♡♡」
両手で乳首を弄ってやりながら、下から突き上げれば、兄の乾いた肌がだんだんと湿っていく。
海竜の、本能的な繁殖の欲求ではない。ただただ、兄が自分を求めて熱を上げている。
「兄上。……なら、逃げたらだめだよ。俺のこと、兄上が最後まで責任とって、ちゃんと愛してくれないとだめだよ……ッ!!」
「うん、うん……っ♡ヴェル、ヴェル、ずっとずっと愛してる、愛してるから、俺だけ、俺だけにして……っ♡」
ずっと、なんて、どうやって信じたらいいのだろう。
でも、兄は自分のずっとを信じてくれた。
死ぬまで、死んでも、ずっとずっとお嫁さんだからね。クレイヴェルのその言葉を信じて、堕ちてくれた。堕ちて堕ちて、その生涯全ての繁殖を、弟のために使ってくれた。
怖い、と思った。
まだ来ぬ日の、愛を信じるということを。
でも兄がそうしてくれたから、自分も信じて、その幸福に溺れてしまおう、と思った。
「……兄上のものに、して」
そうして告げた、その唇にフォルスが食いつく。
兄の両手が両耳を塞いで、世界からクレイヴェルを切り離した。ぐちゅぐちゅ、と舌で交合する音しか聞こえなくなって、愛しい兄に捕まえられて囚われた。
口蓋の裏を舐め上げられれば、ばちばち、と頭の中で飢餓感が弾け飛ぶ。絶頂するかのような快感と幸福で、クレイヴェルは兄の体に縋り付いた。
そうして、長い口付けを離したフォルスの体が、大きく揺れる。
ぐちゅっ、ぐちゅっ、と大きな水音を立てて、雌の性器と雄の性器が擦り合う。
「っヴェル、ヴェル、俺の、俺のヴェル…っ!!」
兄が、自分の腹の上で腰を振っている。
兄が、自分を欲しがっている。
「ヴェルっ、もうっ、もう俺のものになったんだからっ!絶対、絶対にっ!お前の子種っ、一滴だって他の雌にやったらだめだからな…っ!俺の、俺のだから…っ♡」
「やらないっ♡やるわけないっ♡♡♡兄上っ♡兄上っ♡全部っ全部兄上のっ♡♡」
ぐしゃりと泣き笑いになったフォルスが、めちゃくちゃにクレイヴェルにキスをする。母の乳に必死に縋り付く赤子のように、何一つ繕えない無様なキスで。
そんなに、そんなに俺のことを欲しがっているの。
兄上、兄上。初めて見る、そんな必死な顔。
「ヴェルっヴェル……っあい、愛してる、愛してる、ヴェル……っ俺のヴェル……っ!!」
ああ、知らなかった。
俺は。
本当は、本当は!
ずっと、これが、欲しかった。
兄上に、狂って欲しかった。俺に狂って、俺を、俺と同じ強さで求めて欲しかった。
愛で狂って、同じところまで堕ちて欲しかった。
堕ちてきて、くれた。
「……っ兄上っ♡兄上っ♡♡♡俺も、俺もっ♡♡♡愛してる、愛してる……ッ!!♡♡♡」
「っぁ、あ……っ♡♡あっ♡あっ♡あっ♡あーっ♡♡♡♡あーっ♡♡♡♡♡」
両手で腰をつかんで陰茎を押し込んで、クレイヴェルはフォルスを絶頂に押し上げた。クレイヴェルもまた、激情のままにフォルスの中へと射精した。
フォルスの体ががくがくと揺れて、クレイヴェルの体にしなだれかかる。つう、とフォルスの唾液がクレイヴェルの胸元に落ちた。
「……っ、はぁ、は……っ、ヴェル、若い子に目移りしたら、だめだぞ……おまえ、俺を、ここまでしたんだから……」
「うん、うん……しない、しないよ……」
フォルスは苦しそうに笑って、クレイヴェルに触れるだけの口付けを落とした。
ほんの触れるだけのキスに、身体は熱を上げ始めている。この美しい雌に奉仕して、愛を乞おうといきり立って固く膨らみ続けている。
「俺は、あなただけの雄だよ。だから全部、あなたが受け止めて。俺の愛も欲も、全部だよ。……全部、いいね」
「ヴェル、クレイヴェル。欲しい。お前が好きで、お前の全部、欲しくて、欲しくて……、だから全部、俺にくれ」
フォルスはいまだ震えの収まらない太腿を揺らして、クレイヴェルの陰茎を体の内側で撫でて擦った。
クレイヴェルの、繁殖期の若い身体はそれだけで煽られて、子宮に狙いを定めて反り返る。
兄の息はまだ荒い。繁殖期を過ぎた体だ、何度も何度も交われるわけがない。
けれど、兄が求めている。
「……壊れるよ、兄上。いいの」
「俺は、それが欲しい。ヴェル。……俺の、ヴェル」
すり、と兄の手がクレイヴェルの頬骨を擽る。誘っている。
俺の愛で狂って、壊れると分かっているのに、誘っている。ならばいいかと思った。
俺は兄上のものなんだから。全部全部、あげる。あなたが壊れても、全部全部。
「……うん。兄上。俺の、フォルス」
フォルス、フォルス。
俺の愛。
俺の狂気。
俺の全部、あなたに入れて。
その後は、兄の求めのままに、クレイヴェルはフォルスの体をゆすり続けた。繁殖期であれば淫らに反応して艷やかな声を上げていた身体は、次第にただただ呻くように声を漏らし、絶頂に追いやられればガクガクと身体を痙攣させて、だらりと力を失った。
余人が見れば、ほとんど暴力に等しい交尾だった。
ただ、兄が自分を求めている、という精神的安寧を得たクレイヴェルは、時折理性を取り戻し、兄にもうやめようか、と尋ねた。
その度にフォルスは首を横に振って、唇を開いてクレイヴェルにキスをねだった。もはや手足で誘惑するほどの力も残されていないのに、全盛期の雄の繁殖期を全て受け入れようとしていた。
何度も何度も絶頂に追いやって、身体の奥底に精を吐き出して、それでも収まらぬ興奮を、フォルスはまた欲しがって。
求められて嬉しくて、クレイヴェルは兄を何度も呼んだ。兄上、兄上。フォルス、俺のフォルス。呼べば兄が嬉しそうに笑うから、また熱情は燃え上がった。
そうして何度、繋がったか。
兄の体が芯を失って、だらりと項垂れている。
わかっている。繁殖期を過ぎれば、このような交尾など耐えられるわけがないのを。
「あ……、あー……っ、あー………っ」
兄の口がだらしなく開いている。正気を失ったかのように、涎を垂らしながら、絶頂の境もわからぬ耽溺に堕とされ続けている。
「ねえ兄上、もう交尾やめる?辛いでしょ、ねぇ……」
何度も精を吐き出して、ほんの欠片の理性を取り戻したクレイヴェルが尋ねる。
「や、だ……おれ、の……ヴェル……おれ、の……」
それでもフォルスはクレイヴェルを求めた。求められて、クレイヴェルの理性は、また簡単に壊れて崩れ落ちる。
こんなに。
こんなに、こんなに!
兄上が、兄上が、俺を求めている!
俺を、他の雌に取られたくなくて、必死に俺を受け入れてくれている!
「あは……♡♡はは…っ♡♡♡じゃあ、本当に……壊すよ、兄上。あなたの体、母親も、王様も、何も出来なくなるまで、壊すからね……♡♡♡」
「う、ん……おい、で、ヴェル……」
そうして、またそれから、何度も交わった。
何度もフォルスは気絶して、それでもクレイヴェルを求め続けた。
性欲のあまりに深く繋がった繁殖期の頃より、余程強く、フォルスは確かな自分の意思で、クレイヴェルを求め続けた。
兄がクレイヴェルの過ぎた独占欲も肉欲もすべて、独り占めしてくれるのが嬉しくて、嬉しくて。
クレイヴェルは、自分すら気付いていなかった心の奥底が満たされて、これ以上はない、と思っていたのに、もっともっと兄のことが恋しくなって、愛しくなって、求めのままに、兄のものになった。
全部全部、兄だけのものに、なった。
「……ふ、ふふ、もう固くならないや。俺の子種、全部、だしちゃった」
「……、……」
ほとんど声も出ない口で、フォルスがクレイヴェルを呼んだ。
「……ぜんぶ、おれの」
ほとんど吐息で言ったフォルスは、穏やかに笑って、そのままことりと気絶して眠りに落ちた。
「……うん、全部、兄上の。俺の全部、兄上の、だからね……」
ずっとずっと、この人から産まれたかった。
でももう体は入れないから諦めていたのに、兄は心に全部入れてくれた。
俺の全部、全部入れてくれた。
俺が兄上の全部食べて。兄上が俺を全部入れてくれて。
これを愛と呼ぶのか、狂気と呼ぶのか、その違いなんて、もうどうでもいい気がした。
だから幸せに溺れて、クレイヴェルもまた、眠りに落ちた。
100
あなたにおすすめの小説
「レジ袋はご利用になりますか?」
すずかけあおい
BL
仕事帰りに寄る、いつものコンビニで五十嵐 歩(いがらし あゆむ)はイヤホンをつけたまま会計をしてしまい、「――――?」なにかを聞かれたけれどきちんと聞き取れず。
「レジ袋はご利用になりますか?」だと思い、「はい」と答えたら、実際はそれは可愛い女性店員からの告白。
でも、ネームプレートを見たら『横山 天志(よこやま たかし)』…店員は男性でした。
天志は歩に「俺だけのネコになってください」と言って…。
陥落 ー おじさま達に病愛されて ー
ななな
BL
眉目秀麗、才ある青年が二人のおじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全九話。
国一番の璃伴士(将棋士)であるリンユゥは、義父に温かい愛情を注がれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日、一人の紳士とリンユゥは対局することになり…。
【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!
ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。
らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。
なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる