皇帝になったので兄を手籠めにして嫁にした

末野みのり

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円満夫婦の後日談

♡きっとそれが最初から欲しかった

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 兄の唇が、どんどん身体を降りていくのを、クレイヴェルはただただ甘受していた。
 これが兄の優しい慈悲なのだと思い込んで、悲しい歓喜で、その唇と舌の愛撫を受け入れた。
 兄にこのように迫られたことなど、初めてだった。
 それが自分の酷い精神状態を労るためなのだと、冷静な部分で思って、それでもいいか、とクレイヴェルは思った。

「兄上、兄上はほんとに皇妃の役目をしていて偉いねぇ……」
「……、……」

 え。
 と、思った。褒められて、このような顔をした兄を初めて見た。そもそも苛立った表情など、それほど見たこともない。
 そんな風に思っていれば、フォルスの歯が、クレイヴェルの腹に食い込んで、歯型を残す。
 これも初めてのことだった。繁殖期の狂乱の最中ならばいざ知らず、このように理性のある内に、乞われも命令もされずに、兄が自分に痛みを与えて跡を付けてくるなど。

「あ、にうえ。どうしたの……」
「役目だからじゃない。俺がしたくてしている」

 言い放って、フォルスはまた愛撫を身体に落としていった。兄に脱がされるのも初めてだった。そして、乞わずに、陰茎を口に含まれるのも。
 じゅぶっ、じゅぶっ、といやらしい音が部屋に響き渡る。激しい愛撫に、繁殖期の若い身体が耐えられずにすぐ精を吐き出せば、フォルスはその精を余さずに飲んで、また頭を振って愛撫を再開した。
 なんて美しい献身だろう。
 そうぼんやりと思ったクレイヴェルの耳に、種類の違う水音が混じりはじめる。くち、くち、と密やかに鳴るそれは、自分の股ではないところで鳴っている。
 兄が、自らの手で、自分の陰部を慰めていた。

「ヴェル、ヴェル……、早く、早く挿れてやりたい……っ早く挿れて、俺のものにしたい……っ」

 譫言のように呟きながら、フォルスはクレイヴェルへの口淫も、自らの陰部への責めも激しくしていった。
 繁殖期を過ぎて、兄の陰部はさして開いても濡れてもいないように見えた。
 だが二度目の射精を飲みほして、フォルスはその穴で、クレイヴェルの反り返った凶器を飲み込もうと、その切っ先を導いた。

「……っく、ぅ……う……」
「あ、にうえ……っ」

 あまりの狭さに、クレイヴェルも呻いた。入っていかない。兄の顔には、苦痛の色が浮かんでいた。だというのに、繋がろうと腰を揺らして受け入れようとしている。
 こんな必死でみっともない交尾など、初めてだった。

「兄上、無理、むりだろう、これは……っ、兄上、裂ける……っ」
「いい、いい、裂けても、いいから……」

 じっとりと冷や汗の浮かんだ額のその下、フォルスの紫の目が、痛みの涙で湿っていた。

「兄上!」

 クレイヴェルはフォルスの身体を押しのけた。
 気持ちいいことしか、この人にしたくないのに。どうして。

「ああくそ……っ!ヴェル、まだ俺を見限るな、まだ、まだ出来るから、まだ……」
「兄上、本当に……本当に、そんなになるまで、俺が、欲しい、の」
「欲しい。だからヴェル、ヴェル……指を貸してくれ……っ」
「う、ん……」

 フォルスのあまりの剣幕に気圧されて、クレイヴェルはただただ言われるままに指を差し出した。
 その指を絡めとったフォルスが、舌でその指先を舐めてしゃぶる。そうして唾液でべとべとになった指を、自らの手と絡ませたまま、陰部へと導く。

「……っふ……んぅ、ん……っ♡」

 二人分の指先で、フォルスの陰部がゆっくりと溶けていく。兄の手の促すままに指先を曲げれば、その穴はどんどんクレイヴェルのためだけの場所を開けていった。

「ヴェル……っ♡ヴェル……っ♡♡♡」

 指先を促されている間にも、ちゅう、ちゅう、とフォルスの唇がクレイヴェルの身体に落とされる。その度に強く吸われて跡が残り、さらに味わうように甘噛みされて、クレイヴェルの陰茎は昂った。
 俺の、俺の雌が、必死に俺を誘惑している。
 俺を欲しがって、一生懸命に穴を拡げている。

「……っぁ♡あ、ぅ……っ♡あっ……♡」

 指先を促すばかりでなく、フォルスの腰は淫らに揺れて、自らクレイヴェルの指に雌穴で甘えて媚びている。愛しい雄の指先を、ぐりぐりと擦りつけて、ぐちぐちと埋めて、自分で快感を求めて、愛液を垂れ流している。

「ヴェル、ヴェル……っ♡もう、もう入る、もう入るな……っ♡♡♡」
「うん……うん、入る、入るよ……」

 フォルスは泣きそうな必死な顔で笑って、そうしてクレイヴェルの指先を引き抜くと、その指先に噛みついてキスをした。
 ああ、本当に。本当に、欲しがって、くれている。
 交尾なんてもう、しなくていい体で、俺を欲しがって、自分から身体を拓いて、こうして。
 自分から、俺を迎えて、くれて。

「……っん、あ、あ、あ……っ」

 ぬぷ、ぬぷっ、ずるるる……っ♡

 自分で全部、入れて、くれた。

「兄上……」
「……っごめんな、ヴェル……、あんなに、お前が、綺麗だって言って、くれた、のに、こんな醜い欲を、ずっと、隠して、て……っ」

 つう、と頬を伝う涙が美しかった。
 世の道理で言うのなら、それは醜い独占欲なのかもしれなかった。けれどクレイヴェルにとって、それこそがこの世で一番輝いて見えた。
 この公正明大で聡明の兄が隠した醜い独占欲こそが、唯一クレイヴェルの飢えを消してくれる、そう思った。

「好き、好きだ、ヴェル……っ、欲しい、欲しいんだ、俺の、俺だけのものになって……」
「兄上……っ」
「俺がずっと、お前を気持ちよくさせてあげるから。他の雌と、交尾しないでくれ……」

 ゆっくり、ゆっくりと兄の腰が揺れて動く。クレイヴェルの精を搾り取ろうと、自分のものにしようと、欲しがって揺れている。

「見てて、見て、ヴェル、こういうの、好きだろう……?」

 そうして兄は、繁殖期の狂乱でないから羞恥で顔を染めて、クレイヴェルを誘惑するために、くにくに、と自分で乳首をいじって見せつけもした。
 ああ、俺が。
 俺がこの人を堕とした。
 そんな痴態で自分の雄を誘惑する、雌に堕とした。
 俺だけの雌に堕として、俺の唯一になりたい雌に、堕とした。
 兄上、俺の兄上…っ俺の、俺のフォルス…っ♡♡♡そんな、そんな風に俺を誘惑するの……っ♡♡♡

「好き……♡兄上が、エッチになってるの、好き、すきだよ……♡」
「あ、あ…っ、ヴェル、ヴェル、吸って、ねぇ、ヴェル…っ」
「うん…っ♡うん、兄上、兄上……っ♡」
「……っぁ、んあ…っ、あっ……♡♡♡」

 誘いのままに、じゅう、と乳首に吸い付けば、フォルスは喉を晒して喘いで、きゅうと性器でクレイヴェルを締め付けた。
 幸せだった。兄が全身で抱きしめてくれる時、クレイヴェルはいつだって幸せだった。
 この人のものになれたら、どんなに幸せだろう、と思った。
 思うことも許されないと思っていたから、考えもしなかったそれが、形になる。
 兄のものに、なりたい。

「兄上、本当に、俺のこと兄上のものにしてくれるの…っ♡」
「したい、したい……っ、ん、ぅ……っ♡ぁ……あっ♡ヴェル、なって、なって、俺だけのものになって……っ♡♡♡」

 両手で乳首を弄ってやりながら、下から突き上げれば、兄の乾いた肌がだんだんと湿っていく。
 海竜の、本能的な繁殖の欲求ではない。ただただ、兄が自分を求めて熱を上げている。

「兄上。……なら、逃げたらだめだよ。俺のこと、兄上が最後まで責任とって、ちゃんと愛してくれないとだめだよ……ッ!!」
「うん、うん……っ♡ヴェル、ヴェル、ずっとずっと愛してる、愛してるから、俺だけ、俺だけにして……っ♡」

 ずっと、なんて、どうやって信じたらいいのだろう。
 でも、兄は自分のずっとを信じてくれた。
 死ぬまで、死んでも、ずっとずっとお嫁さんだからね。クレイヴェルのその言葉を信じて、堕ちてくれた。堕ちて堕ちて、その生涯全ての繁殖を、弟のために使ってくれた。
 怖い、と思った。
 まだ来ぬ日の、愛を信じるということを。
 でも兄がそうしてくれたから、自分も信じて、その幸福に溺れてしまおう、と思った。

「……兄上のものに、して」

 そうして告げた、その唇にフォルスが食いつく。
 兄の両手が両耳を塞いで、世界からクレイヴェルを切り離した。ぐちゅぐちゅ、と舌で交合する音しか聞こえなくなって、愛しい兄に捕まえられて囚われた。
 口蓋の裏を舐め上げられれば、ばちばち、と頭の中で飢餓感が弾け飛ぶ。絶頂するかのような快感と幸福で、クレイヴェルは兄の体に縋り付いた。
 そうして、長い口付けを離したフォルスの体が、大きく揺れる。
 ぐちゅっ、ぐちゅっ、と大きな水音を立てて、雌の性器と雄の性器が擦り合う。

「っヴェル、ヴェル、俺の、俺のヴェル…っ!!」

 兄が、自分の腹の上で腰を振っている。
 兄が、自分を欲しがっている。

「ヴェルっ、もうっ、もう俺のものになったんだからっ!絶対、絶対にっ!お前の子種っ、一滴だって他の雌にやったらだめだからな…っ!俺の、俺のだから…っ♡」
「やらないっ♡やるわけないっ♡♡♡兄上っ♡兄上っ♡全部っ全部兄上のっ♡♡」

 ぐしゃりと泣き笑いになったフォルスが、めちゃくちゃにクレイヴェルにキスをする。母の乳に必死に縋り付く赤子のように、何一つ繕えない無様なキスで。
 そんなに、そんなに俺のことを欲しがっているの。
 兄上、兄上。初めて見る、そんな必死な顔。

「ヴェルっヴェル……っあい、愛してる、愛してる、ヴェル……っ俺のヴェル……っ!!」

 ああ、知らなかった。
 俺は。
 本当は、本当は!
 ずっと、これが、欲しかった。
 兄上に、狂って欲しかった。俺に狂って、俺を、俺と同じ強さで求めて欲しかった。
 愛で狂って、同じところまで堕ちて欲しかった。
 堕ちてきて、くれた。

「……っ兄上っ♡兄上っ♡♡♡俺も、俺もっ♡♡♡愛してる、愛してる……ッ!!♡♡♡」
「っぁ、あ……っ♡♡あっ♡あっ♡あっ♡あーっ♡♡♡♡あーっ♡♡♡♡♡」

 両手で腰をつかんで陰茎を押し込んで、クレイヴェルはフォルスを絶頂に押し上げた。クレイヴェルもまた、激情のままにフォルスの中へと射精した。
 フォルスの体ががくがくと揺れて、クレイヴェルの体にしなだれかかる。つう、とフォルスの唾液がクレイヴェルの胸元に落ちた。

「……っ、はぁ、は……っ、ヴェル、若い子に目移りしたら、だめだぞ……おまえ、俺を、ここまでしたんだから……」
「うん、うん……しない、しないよ……」

 フォルスは苦しそうに笑って、クレイヴェルに触れるだけの口付けを落とした。
 ほんの触れるだけのキスに、身体は熱を上げ始めている。この美しい雌に奉仕して、愛を乞おうといきり立って固く膨らみ続けている。

「俺は、あなただけの雄だよ。だから全部、あなたが受け止めて。俺の愛も欲も、全部だよ。……全部、いいね」
「ヴェル、クレイヴェル。欲しい。お前が好きで、お前の全部、欲しくて、欲しくて……、だから全部、俺にくれ」

 フォルスはいまだ震えの収まらない太腿を揺らして、クレイヴェルの陰茎を体の内側で撫でて擦った。
 クレイヴェルの、繁殖期の若い身体はそれだけで煽られて、子宮に狙いを定めて反り返る。
 兄の息はまだ荒い。繁殖期を過ぎた体だ、何度も何度も交われるわけがない。
 けれど、兄が求めている。

「……壊れるよ、兄上。いいの」
「俺は、それが欲しい。ヴェル。……俺の、ヴェル」

 すり、と兄の手がクレイヴェルの頬骨を擽る。誘っている。
 俺の愛で狂って、壊れると分かっているのに、誘っている。ならばいいかと思った。
 俺は兄上のものなんだから。全部全部、あげる。あなたが壊れても、全部全部。

「……うん。兄上。俺の、フォルス」

 フォルス、フォルス。
 俺の愛。
 俺の狂気。
 俺の全部、あなたに入れて。





 その後は、兄の求めのままに、クレイヴェルはフォルスの体をゆすり続けた。繁殖期であれば淫らに反応して艷やかな声を上げていた身体は、次第にただただ呻くように声を漏らし、絶頂に追いやられればガクガクと身体を痙攣させて、だらりと力を失った。
 余人が見れば、ほとんど暴力に等しい交尾だった。
 ただ、兄が自分を求めている、という精神的安寧を得たクレイヴェルは、時折理性を取り戻し、兄にもうやめようか、と尋ねた。
 その度にフォルスは首を横に振って、唇を開いてクレイヴェルにキスをねだった。もはや手足で誘惑するほどの力も残されていないのに、全盛期の雄の繁殖期を全て受け入れようとしていた。
 何度も何度も絶頂に追いやって、身体の奥底に精を吐き出して、それでも収まらぬ興奮を、フォルスはまた欲しがって。
 求められて嬉しくて、クレイヴェルは兄を何度も呼んだ。兄上、兄上。フォルス、俺のフォルス。呼べば兄が嬉しそうに笑うから、また熱情は燃え上がった。
 そうして何度、繋がったか。
 兄の体が芯を失って、だらりと項垂れている。
 わかっている。繁殖期を過ぎれば、このような交尾など耐えられるわけがないのを。

「あ……、あー……っ、あー………っ」

 兄の口がだらしなく開いている。正気を失ったかのように、涎を垂らしながら、絶頂の境もわからぬ耽溺に堕とされ続けている。

「ねえ兄上、もう交尾やめる?辛いでしょ、ねぇ……」

 何度も精を吐き出して、ほんの欠片の理性を取り戻したクレイヴェルが尋ねる。

「や、だ……おれ、の……ヴェル……おれ、の……」

 それでもフォルスはクレイヴェルを求めた。求められて、クレイヴェルの理性は、また簡単に壊れて崩れ落ちる。
 こんなに。
 こんなに、こんなに!
 兄上が、兄上が、俺を求めている!
 俺を、他の雌に取られたくなくて、必死に俺を受け入れてくれている!

「あは……♡♡はは…っ♡♡♡じゃあ、本当に……壊すよ、兄上。あなたの体、母親も、王様も、何も出来なくなるまで、壊すからね……♡♡♡」
「う、ん……おい、で、ヴェル……」

 そうして、またそれから、何度も交わった。
 何度もフォルスは気絶して、それでもクレイヴェルを求め続けた。
 性欲のあまりに深く繋がった繁殖期の頃より、余程強く、フォルスは確かな自分の意思で、クレイヴェルを求め続けた。
 兄がクレイヴェルの過ぎた独占欲も肉欲もすべて、独り占めしてくれるのが嬉しくて、嬉しくて。
 クレイヴェルは、自分すら気付いていなかった心の奥底が満たされて、これ以上はない、と思っていたのに、もっともっと兄のことが恋しくなって、愛しくなって、求めのままに、兄のものになった。
 全部全部、兄だけのものに、なった。

「……ふ、ふふ、もう固くならないや。俺の子種、全部、だしちゃった」
「……、……」

 ほとんど声も出ない口で、フォルスがクレイヴェルを呼んだ。 

「……ぜんぶ、おれの」

 ほとんど吐息で言ったフォルスは、穏やかに笑って、そのままことりと気絶して眠りに落ちた。

「……うん、全部、兄上の。俺の全部、兄上の、だからね……」

 ずっとずっと、この人から産まれたかった。
 でももう体は入れないから諦めていたのに、兄は心に全部入れてくれた。
 俺の全部、全部入れてくれた。
 俺が兄上の全部食べて。兄上が俺を全部入れてくれて。
 これを愛と呼ぶのか、狂気と呼ぶのか、その違いなんて、もうどうでもいい気がした。
 だから幸せに溺れて、クレイヴェルもまた、眠りに落ちた。




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