【更新】政略婚が幸福な恋に辿り着くまで/両性具有BL短編まとめ

末野みのり

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獣人王子×藤の樹霊、年下×年上、敬語攻め、純愛、戦記パート長め、長編ダイジェスト

政略婚が幸福な恋に辿り着くまで(3)【完結】

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 そうして、繁殖期である。
 王子はそわそわと寝台で待っていた。いつかのように夫婦の営みを誘えば、妻は顔を赤らめて、身を清めてくる、と言い残して浴室に向かっていった。
 いつかの時と違うのは、これが練習ではない、ということだ。
 愛しています。あなたと子を成したい。
 そう告げた時の、真っ赤に染まった妻の顔を思い出して、王子はただでさえ繁殖期で昂る興奮を加速された。
 だが、身を清めるという妻は、いつかと違って随分と遅かった。
 まさか浴室で何か、と思い、自室を出ようと思えば、待ってくれ、とか細い妻の声がかかる。

「ど……うされました。その、扉のそちら側の、すぐそこにいらっしゃる?」
「いる、いるが……その、少し、待ってくれ。人に……見せられない姿を、している」
「……あなたであれば、姿など。隠さないでください、愛しい人」

 姿、と言われて、あの鉄の国との戦の後の妻の姿を思い出す。父より年上という年齢に説得力のある、老いた姿。
 だが、あの姿であっても、この興奮は萎まぬという確信があった。むしろ、いつもと違う妻の姿さえ自分のものにしたくて、昂るだろうとさえ思う。
 少し沈黙の時間を経て、扉が開く。
 身を清めて湿った妻の髪が、淡い藤色に変わっている。

「すまない、こ、んな……年甲斐もなく……」
「……綺麗だ」

 恥じる妻に、王子は思うだけでなく、直截に告げた。眼の色と同じ藤色が、その言葉に揺れた。

「……君は、これの意味がわかっているのか」
「わかっています。……恋をして、花開いた色だ」

 カッと妻の顔が赤く染まる。
 王子は嬉しくて仕方がなかった。気持ちなどなくとも務めだけを果たしてくれればいい、と告げた妻が、自分に恋をしている。
 恋をして、隠すほどの出来ぬほど、花を咲かせてくれている。

「自惚れても、構いませんか、嫁御殿」
「……君以外に、こうはならない」
「はい。嬉しいです」

 ぐっと妻の体を抱き寄せる。芳しい、花の香りがした。妻自身の香りがいつもより強く香っている。
 繁殖を願って、誘っている。

「君に、摘み取られたい」
「はい。僕のために咲いてくれたのですから。全部、僕のものです」

 告げてキスをすれば、その口の中が甘い。蜜を蕩けさせて、発情している。それが嬉しくて、何度も何度も口付けた。

「……っ、ん、ぅ、旦那、様……」
「っはい……っ!」

 互いに口付けに夢中になって、抱きしめ合った。もう十分に興奮している。発情した陰茎同士を擦り合わせて、全身で交合しようと互いに逸る。
 だがこんなところで。寝台まであと五歩という距離が憎らしかった。

「…っ君のことが、好きだ。……どうか君の子を、この胎に授けてくれ」

 目を潤ませていった妻に、もう若い王子は耐えきれなかった。妻の体を抱き上げて、寝台の上に足早に縺れ込んだ。





 寝台の上で何度も何度も口付けて、男根を擦り合わせて高め合った。もはや限界まで固く反り返ったそれは、舌での交合をしながら素肌の手で撫で合えば、すぐにその初砲を妻の腹の上に吐き出して、互いの淫液を混ぜ合わせた。
 王子は精液で粘ついた指を、妻の女陰に差し込む。
 以前、自分自身の精液で孕むことはないのか、と閨の戯れに尋ねれば、自分どころか近しい親族のそれでも孕むことはないのだと言う。
 血が遠ければ遠いほど、孕みやすいのだ、と言うならば、おそらく自分と妻の場合はもう、このように指先で精液を撫でつけただけで十分なのかもしれない。
 けれど、足りるわけがなかった。
 じゅぶじゅぶと淫液を垂れ流す女陰を、早く貫いてしまいたい気持ちと、いつもより蜜を垂らして雄を誘うそこを、もっと愛でたい気持ちが拮抗して、ぐらぐらと王子の興奮が葛藤する。
 だが、挿れただけでおそらく射精する。射精して、繁殖期の獅子の陰茎は、膨らんでしばらくは抜けもしない。
 ならば、愛でるのが先だ。
 決断して、王子は妻の脚を開かせて、その股の間に顔を寄せた。

「な、にを」
「これは、今までしたことがありませんでしたね。ですが今日は……あなたの蜜を、啜りたくて」
「ま、まってくれ、そんな、そんな……」
「僕のものです」

 そう告げて、王子は妻の女陰に食いついた。
 甘い、甘い蜜だ。

「んぁっ♡あっ♡あっ♡」

 途端妻の声が甘く溶けて淫らに上擦り、王子の陰茎は痛いほどに膨らんだ。
 まだ、自分の知らない妻がいたことに、王子は興奮した。このように乱れるのを、知らなかった。花を咲かせて蜜を流して香りで誘惑して。

「あっ♡あぁっ♡すまな、すまない♡こんなっ♡こんな声っ♡」
「聞かせて、ください……♡駄目ですよ、隠しては…全部、僕のものなのですから…っ♡」
「あーっ♡あ、あ、あっ♡」

 舌でつついてやれば、声も蜜もどんどん流れ出て、止まらなかった。じゅぶじゅぶと音を立てて愛でれば、あまりの快楽に逃げようと妻の体が捻れて震える。
 逃がす、わけがない。
 獅子の剛腕で太腿を強く掴んで、跳ねる足先の震えをも、王子は楽しんだ。

「溶け、とけるっ♡♡♡溶けるっ♡♡♡♡だめ、だめ……っ♡♡♡」
「溶かしてっ♡♡♡溶かしてくださいっ♡♡♡♡全部全部全部っ♡♡♡♡♡僕が食べますっ♡♡♡♡♡」
「あ~~~~っ♡♡♡♡♡あ"~~~~~っ♡♡♡♡♡」

 一際激しく跳ねたのと同時。どぷっ、どぷっと一際濃く甘い蜜が流れ出て、それも王子は啜りとった。まだまだ愛でてやりたい気持ちもあったが、もう陰茎が耐えられなかった。震える太腿に口付けて、身を乗り出す。とろりと溶けた妻の顔に、鮮やかな藤色の髪がかかっていた。
 美しい花だ。全部、全部、僕のものだ。
 獣らしい強欲でそう思って、愛しい妻の胎に、雄の徴を擦り付ける。
 くち、くち、といやらしい水音がなった。

「孕ませ、ます。もう繁殖期の間、僕の巣穴から出しません。いいですね……♡」
「ああ……♡来て、くれ……♡旦那様、俺の旦那様……♡君の、子種が欲しい……っ♡」
「はい。すべて……あなたの、ものです」

 顔を真っ赤に染めて求める妻に、王子はもう、その獣欲を解放させて、この美しい獲物を、喰らい尽くすことにした。





 あんなもの、練習になどなりはしなかった。
 樹霊の佳人は、夫に淫靡に揺すられながら、あれは本当に繁殖期の外の戯れに過ぎなかったのだと、身体で思い知ることとなっていた。

「あーっ♡あっ♡あっ♡あっ♡♡♡♡♡」
「ああ、あなたのここは、本当に……っ♡孕ませがいのある女陰ですね…っ♡♡♡♡♡」
「あ、あっ……♡もう、もう孕んだっ♡♡♡十分に、孕んだ、からっ……♡♡♡」

 もう何度も何度も種を付けられている。だというのに、夫の陰茎は萎む気配もない。
 柔らかくなったかと思えばまた固さを取り戻して、樹霊の佳人の子宮の入り口を叩いて、快楽で口が開けばその凶暴な切っ先で直接に種をばら撒いた。
 狂う。こんな、激しい交合。もう子宮で何度も絶頂に追いやられた佳人の陰茎は、だらんと頭を垂れて目の前の雄に屈伏している。
 屈伏を示しても、若い獅子の蹂躙は、止まることがなかった。

「だめですよ」
「んぁっ♡♡」
「まだ僕の子種は尽きていません。全部、全部入れてください」

 言葉遣いだけは普段と変わりないのに、腰使いと陰茎の大きさは普段の比ではない。
 けれど求められて嬉しくて、身体は言うことを聞かなかった。髪の藤色は変わらず鮮やかに、性器と性器が擦りあえば、いやらしく誘う蜜が溢れて止まらなかった。
 そして、全身から香る、花の香り。
 こんな、はしたない真似を。縋るような誘惑を、この幼く美しい獣にしてしまっている。そう思うのに止められなくて、ただただ身体を卑猥にくねらせて、その甘やかな蹂躙を享受するだけしか出来ない。
 溶けて、いく。
 溶かされて、いく。
 白の森の長老、茨の王、旧き藤の樹霊、自分を表す名はいくつもあるはずなのに、それら全てが溶けていく。
 そうして、残る。
 この幼く美しい獣の妻であること。
 この勇猛で優しい夫の子を、孕みたいと願う、雌であるということ。
 ただ、それだけが、残る。
 そうだ、俺は。
 この雄に恋をして、恋い願われて、それを喜ぶだけの、雌で。
 この夫に愛されて、愛しているだけの、妻で。

「あ~~~っ♡♡♡あ"、あ"っ♡♡♡すき、すきだ♡♡♡だんなさま、おれの、だんなさま…っ♡♡♡」

 それだけ、それだけなんだ。
 好きで、好きで、求めて、求められて、それが、嬉しくて。
 このために。この男に会うために、長く生きてきたような気すら、した。
 そうであればいいと、思った。

「っ♡愛して、おります…っ♡僕の美しい妻…っ♡♡♡」

 ああ、ああ。
 そんな、そんな風に求めてくれるのか。
 嬉しくて、嬉しくて、蜜も、香りも、抑え、られない……♡

「まだ、まだ、もっと交尾をしましょうっ♡夜が明けてもっ♡ずっと僕のものでいてくださいっ♡♡♡」

 あ、あ、持ち、持ち上げられている…っ♡♡♡
 この夫にしか縋れなく、されている……っ♡♡♡

「ふふ、いい匂いですね…♡」
「 あ、あ……っ♡♡♡ふか、深い……っ♡♡♡」

 あぁっ♡尻を掴まれているっ♡尻を掴まれてっ♡好きに動かされて、奥、奥まで……っ♡♡♡
 あっ♡あっ♡だめ、だめ…っ♡いいところ、気持ちいいところばかり当たって…っ♡♡♡

「最奥でも、しかと覚えてください、僕の形を……♡」

 ぐちゅっ♡ぐちゅっ♡ぐちゅっ♡ぐちゅっ♡

 あ~っ♡♡♡♡あっ♡あっ♡あっ♡
 こんなっ♡こんな交尾しらないっ♡♡♡
 脚っ♡脚つかないっ♡全身抱えられてっ♡揺すられてるっ♡♡♡

「あ"~~~~っ♡♡♡あ"、あっ♡あっ♡あっ♡」
「ああ、もっと♡もっと鳴いてくださいっ♡♡♡あなたのっ♡♡あなたの声っもっと聞きたい…っ♡♡♡」

 どちゅっ♡どちゅっ♡どちゅっ♡どちゅっ♡

 あ、あ、あ、俺、俺……っ♡♡♡
 君の、君の妻になれて、よかった♡♡♡こんな風に求められてっ♡♡♡こんな風に愛されてっ♡♡♡こんな幸福、初めて、はじめてなんだ……っ♡
 あ♡あっ♡すき♡♡♡すき♡♡♡♡俺の、俺の、旦那様…っ♡♡♡

「ふ、ふふ…っ♡もっと、もっと僕に縋ってください…っ♡あなたに、あなたに抱きしめられるの、堪らない……っ♡」
「あっ♡あぁっ♡あ、好き♡すき…っ♡♡♡旦那様、だんなさま……♡♡♡」
「愛してますっ♡愛してます♡♡♡一生っ♡一生あなたの夫にしてくださいっ♡♡♡♡」

 きゅううぅぅぅうっ♡♡♡♡

 あ♡あ、ぅ、あっ♡愛されて、愛されて、幸せで、気持ちいいの止まらない……っ♡♡♡
 子宮、子宮で君の子種…♡ねだるの止められない……っ♡♡♡

「する、する…っ♡だから、おれ、おれもっ♡一生っ、一生君の妻でいさせてくれ…っ♡♡♡」
「もちろんですっ♡♡♡♡誓いますっ♡♡♡♡あなたも誓ってっ♡誓って、あなたの夫にキスしてくださいっ♡♡♡」
「誓うっ♡♡♡誓うっ♡♡♡」

 あ、あ、キス、キス……気持ちいい、気持ち、いい……♡♡♡♡
 全部、全部、君のだ……。
 俺のすべて。君の、だ。
 俺の、美しい獣。





 意識を失った妻の髪から、藤色が引いていくのを、王子はじっと眺めていた。
 そうして繋がったままに一時眠りに落ちて、再び目覚めれば、若葉のような妻の髪を、いま一度、藤色に色付かせて乱れさせた。
 乱れれば乱れるほど、妻の睦言は甘く溶けた。
 好き、すき、愛してる、君の妻になれて嬉しい、俺の愛しい夫、もっと、もっと。君が、欲しい。
 若い王子の性欲は、愛情深い妻の言葉に、夫しか知らぬ性器に、煽られて留まることを知らなかった。
 時に、犬の交尾のように後ろから攻め立てて、項を噛んで腰を振った。
 時に、蛙のように大きく股を開かせて、子宮の奥まで貫いて脚を跳ねさせた。
 何度も何度も、交わった。最後には、夫の名前と、形にならぬ善がり声ばかり繰り返すようになった妻が愛おしくて、性器ばかりでなく、唇も離さなかった。唇で食んで、舌で舐めて、妻の顔中キスして舐めて吸い付いた。
 そんな時間を、ずっと繰り返して、繁殖期の狂乱の渦に、愛しいつがいと共に、溺れきった。
 ようやくその熱狂も熱を抑え始めた頃。
 全身に愛咬の跡をつけ、とろりと目を溶かした妻が咳き込んで、王子の頭に一気に理性の楔が打ち込まれる。

「す……いません……!こ、これほど、好き勝手にやるつもりは……」
「ふ……ふふ、若い、な」

 うっとりとした目で笑った妻に、王子は散々に頭を下げて謝った。
 ならば、湯浴みに連れて行ってくれないか。妻が言うので、兎にも角にも王子は妻の望みを叶えるべく、その体を抱き上げた。
 そうして二人、湯船に入り、ぱしゃん、と、乳白色の湯が、浴室の床を打った。

「本当に申し訳ありません……」
「あまり謝るな……あのように伴侶に熱烈に求められるのが気持ちいいのだと、君が初めて教えてくれた」
「きょ、恐縮です……」

 ふふ、と笑う妻の声が掠れている。
 その響きがいやに艶めかしく、いまだ繁殖期の熱を引きずったままの性器が反応しそうになるのに、王子はぐっと理性でもって抑えつける。

「君より経験豊富なつもりだったが、年月だけで測っているとは、俺も浅はかだったな」
「……そういえば、正確な年齢をお伺いしていませんでした」
「ああ……驚くと思って、言わずにおいたが」
「知りたいです、何でも。あなたのことなら」

 複雑な顔をしている妻を、王子はじっと見つめた。もう知ってしまったので。この妻が、自分を愛おしく思っていてくれていることを。自分が望むものを、捧げてくれるのを。

「……今年、二百だ」
「二百!?」

 思っていたのと桁が違う。
 正直に驚いた。だが逆に、そこまで行けば年齢差など大した問題でもないのかもしれない、という気にもなってくる。

「ふふ、すまんな。驚かせて」
「いえ……二百年の末に、僕を選んでいただいたのなら……それは余りに光栄が過ぎて、その……」

 この樹霊の佳人が、二百年もつがいを持たずにいたのであれば、あれほど恥じ入っていたのにも納得があった。
 納得、だけで済ませればよかったのに、あまりに妻への愛おしさが溢れて、繁殖期の抜けきらない若い体は、すぐに性欲で満たされた。
 愛おしい、恋しい、触れたい。触れて、何度でも、この人を自分だけの巣に閉じ込めたい。

「もう一度、まぐわっても……?」
「……老人を労ってくれ」
「すいません、あまりに愛おしくて。……駄目ですか……?」

 王子の問いかけに、樹霊の佳人は複雑な顔をしていた。
 その顔から真意を汲み取るのは、若い王子には困難だった。だがその前髪の髪先が、藤色に染まっているのを見つけて、思わず口元が緩む。

「……まったく、仕様のない旦那様だな」

 そうして妻からの口付けを授けられた頃には、密やかに誘惑する甘い花の香りまで漂ってきて、王子は遥か年上の妻の許しを有り難く頂戴して、再び熱情の耽溺へと、身を沈ませた。




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