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親睦キャンプin裏山⑥
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あれから3日経った。
俺の意思でどうにかなるんじゃないかと思って猫のことを忘れようとしてみたのだが…そう簡単に出来るわけもなく。学校にいけば壱弥の猫耳は余計だが、猫耳沙織里さんがいらっしゃるので一時忘れようとしても無駄な努力に終わってしまう。追い討ちをかけるように昨日の夕方、結緋さんに会ってしまった。
可愛いは正義とは誰が言ったか。よい言葉である。
文献やらを調べていた結緋さんだが特に進歩もなくションボリしていた。別の面から親父も調べていたが結果は変わらず。やはりこの現象の対処はかなり難しいようだ。
「あと出来ることと言えば秋緋自身の意思と力の組み合わせじゃ。じゃがこれは割合を間違えると大変なことになるのう。」
「今焦ってやっても失敗しそうだしなぁ。とりあえず明日のキャンプ終わってから落ち着いてやろうぜ?」
キャンプ、明日だったか。「そうじゃな!たのしみじゃにゃ!」と結緋さんははしゃいでいる。とても楽しそうなのはいいんだけど、かなり人と接触する恐れがある俺は気が気ではない。
「紅司朗ちゃん、私は明日もいつも通りでいいのかしら?」
「おうおう、悪いねぇ。頼むぜたまちゃん!」
…忘れてた。
とても自然にこの輪の中に参加していたせいですっかり忘れていた。親父と一緒に来た藻江島先生。ここにいるのでお察しだが、案の定妖怪だった。どうしてここにいるかって言うと、完全に猫になってしまっている小鬼の代わりに俺を護ってくれている。
その日、自分の部屋に帰ったら風呂場に影がみえた。すずめが勝手に来たのかと思って扉を開けたら…。
「あら?おかえり秋緋くん。お風呂いただいてるわよーん。」
「ぴゃーーーい?!」
甘い石鹸の香りが俺を包みこんだ。その先の湯気の中に白い肌の全裸の女性が目に飛び込んできた衝撃で俺は悲鳴を上げ、部屋全体が揺れるほどの勢いで風呂の扉を乱暴に閉じた。
「あら、初なのねぇ。ふふふ。」
うぶとかそういう問題ではない。だいいち自分の学校の先生が何で俺んちの風呂に入ってたら意味がわからず大パニックになるだろう。四つん這いで布団に顔を埋めて悩んでいると後ろから声をかけられ…
「秋緋くん、びっくりしちゃった?ふふ、ごめんね~紅司朗ちゃんが好きにしていいって言うからぁ。」
紅司朗ちゃん…親父か。親の権限か?そんな権限ないでしょ。
「心配しないでぇ?ちゃんと頼まれたことはするから!」
振り返るとタオル1枚で先生は立っていた。
目と目が合うと、先生は濡れた髪をかきあげながら俺に近づいた。
「ふふ、なるほどね。やっぱり紅司朗ちゃんのまわりは面白いわね。」
前屈みになりじろじろと俺を見つめる。ふわりと香るいい匂いと共にゆらゆらと揺れる胸元が目の前にあり、目のやり場に困ったが。迷ったあげくもう一度顔を上げて目を見ると、その瞳は人のそれではなかった。
「…先生は、人じゃない?」
「あら?紅司朗ちゃんから聞いてなかったの?まったくダメねぇ、あれだけ言ったのにまだ抜けてるんだから。」
聞いてなかったもなにも。藻江島先生との接点はほぼなかったし。まして親父と交流があるようには見えなかった。集会の時はその場で頼まれたのだと思ってた。
「じゃあ、ちゃんと自己紹介しておこうかしら?」
くるりと身を翻し、俺に背を向けると…おしりが丸見え。
じゃなくて!
シュルシュルと絹の布が擦れるような音と共に、部屋は締め切っているのにどこからかきたのか。部屋を動き回るように風が巻き起こり先生に集まっていく。白い装束が体を包み、頭から耳が生え、おしりからは尻尾が生えてきた。ひとつ…ふたつ…みっつ…よ…ん?まさか?
「き、九尾?!」
「んんうん、正解だけど不正解よ、ふふ。」
風がやむと神秘的な姿の藻江島先生?立っていた。先生の時の清純差は微塵もなく、妖艶なエロさがにじみ出ていたが。妖怪ではあったが何故か神秘的な感じがした。ついつい見とれてしまう。えろいからじゃないぞ!
「…今はね、訳あって七尾の狐さんなの。名前は藻江島さんとかたまちゃんとかでいいわよー?」
「は、はぁ…いや、でも、今は一応先生やってるしちょっと不味いんじゃ…。」
妖怪だとしても人に化けて人間社会にいるわけだ。護衛で来たとしても教師と生徒が同じ屋根のしたでこんな状況は大問題すぎる。リアルに俺の生活にも響く。退学で済むのか、社会的にもどうなのか…大問題すぎる!
「心配しないで秋緋くん。そこはちゃんと考えてるわよ。」
フフンと鼻をならした先生は自分の尻尾をひとつ掴むとぷちんと取ったのだ。
ポカンとする俺。
普通取れるとか思わないじゃないですか。何で取れるんですかね?
「はーい!今日来たのはこの子を置いておくためよ~!秋緋くん、仲良くしてあげてね!」
「うぶっふぅっ!」
ぽーんともいだ尻尾を俺に向かって投げると空中で形を成し、狐の形になって俺の顔にしがみついた。
「あの小鬼ちゃんたちとは違って家事はできないのだけれど護衛はできるからっ!しかも餌とかトイレとか手間はかからない優れものよ?」
はぁ…と諦めぎみに返事をし、顔についたそれを剥がすとまぁ、なんとも言えない表情で俺を見据えている。目が据わっているというか…どっかで見たことあるわ、これ。
「それじゃ、また学校でね?お風呂ごちそうさま~。」
あのさ。俺の周りにいる俺を助けてくれるって言う人たちはどうしてこうも説明不足で押し付けて適当に去っていくのばっかなんだ。俺の中の鬼が落ち着かせてるとか言うけどこんなん続けば落ち着かせるというより呆れてしまってるんじゃないのか?
「…まぁ、よろしく狐くん。」
シャッ!
え?何で俺引っ掛かれたの?
あ。
「女の子…。」
俺の胸の辺りを蹴って飛び出し、ふぅんっとため息をついて狐さんは机の上で丸くなった。うん、おやすみなさい…。
…って感じで藻江島先生も一緒に色々してくれてるわけだ。家にいるときは狐さんが、学校にいるときは藻江島先生が何かしらで護っていてくれてる。
「…楽しみね、秋緋くん。」
まだ謎だらけの人だ。親父との関係もよくわからないまま。
大人たちの話し合いをボーッと聞いていたらいつの間にか寝ていたらしい。どれくらいの時間が過ぎたかはわからないが親父と結緋さんはまだ話をしているようだった。
明日、学校で、俺の件以外で、何かを、しようとしている。
それだけはわかった。
真剣な声色、怖さすら感じた。
ただの楽しいキャンプで、楽しい肝試し、だよな?
俺の意思でどうにかなるんじゃないかと思って猫のことを忘れようとしてみたのだが…そう簡単に出来るわけもなく。学校にいけば壱弥の猫耳は余計だが、猫耳沙織里さんがいらっしゃるので一時忘れようとしても無駄な努力に終わってしまう。追い討ちをかけるように昨日の夕方、結緋さんに会ってしまった。
可愛いは正義とは誰が言ったか。よい言葉である。
文献やらを調べていた結緋さんだが特に進歩もなくションボリしていた。別の面から親父も調べていたが結果は変わらず。やはりこの現象の対処はかなり難しいようだ。
「あと出来ることと言えば秋緋自身の意思と力の組み合わせじゃ。じゃがこれは割合を間違えると大変なことになるのう。」
「今焦ってやっても失敗しそうだしなぁ。とりあえず明日のキャンプ終わってから落ち着いてやろうぜ?」
キャンプ、明日だったか。「そうじゃな!たのしみじゃにゃ!」と結緋さんははしゃいでいる。とても楽しそうなのはいいんだけど、かなり人と接触する恐れがある俺は気が気ではない。
「紅司朗ちゃん、私は明日もいつも通りでいいのかしら?」
「おうおう、悪いねぇ。頼むぜたまちゃん!」
…忘れてた。
とても自然にこの輪の中に参加していたせいですっかり忘れていた。親父と一緒に来た藻江島先生。ここにいるのでお察しだが、案の定妖怪だった。どうしてここにいるかって言うと、完全に猫になってしまっている小鬼の代わりに俺を護ってくれている。
その日、自分の部屋に帰ったら風呂場に影がみえた。すずめが勝手に来たのかと思って扉を開けたら…。
「あら?おかえり秋緋くん。お風呂いただいてるわよーん。」
「ぴゃーーーい?!」
甘い石鹸の香りが俺を包みこんだ。その先の湯気の中に白い肌の全裸の女性が目に飛び込んできた衝撃で俺は悲鳴を上げ、部屋全体が揺れるほどの勢いで風呂の扉を乱暴に閉じた。
「あら、初なのねぇ。ふふふ。」
うぶとかそういう問題ではない。だいいち自分の学校の先生が何で俺んちの風呂に入ってたら意味がわからず大パニックになるだろう。四つん這いで布団に顔を埋めて悩んでいると後ろから声をかけられ…
「秋緋くん、びっくりしちゃった?ふふ、ごめんね~紅司朗ちゃんが好きにしていいって言うからぁ。」
紅司朗ちゃん…親父か。親の権限か?そんな権限ないでしょ。
「心配しないでぇ?ちゃんと頼まれたことはするから!」
振り返るとタオル1枚で先生は立っていた。
目と目が合うと、先生は濡れた髪をかきあげながら俺に近づいた。
「ふふ、なるほどね。やっぱり紅司朗ちゃんのまわりは面白いわね。」
前屈みになりじろじろと俺を見つめる。ふわりと香るいい匂いと共にゆらゆらと揺れる胸元が目の前にあり、目のやり場に困ったが。迷ったあげくもう一度顔を上げて目を見ると、その瞳は人のそれではなかった。
「…先生は、人じゃない?」
「あら?紅司朗ちゃんから聞いてなかったの?まったくダメねぇ、あれだけ言ったのにまだ抜けてるんだから。」
聞いてなかったもなにも。藻江島先生との接点はほぼなかったし。まして親父と交流があるようには見えなかった。集会の時はその場で頼まれたのだと思ってた。
「じゃあ、ちゃんと自己紹介しておこうかしら?」
くるりと身を翻し、俺に背を向けると…おしりが丸見え。
じゃなくて!
シュルシュルと絹の布が擦れるような音と共に、部屋は締め切っているのにどこからかきたのか。部屋を動き回るように風が巻き起こり先生に集まっていく。白い装束が体を包み、頭から耳が生え、おしりからは尻尾が生えてきた。ひとつ…ふたつ…みっつ…よ…ん?まさか?
「き、九尾?!」
「んんうん、正解だけど不正解よ、ふふ。」
風がやむと神秘的な姿の藻江島先生?立っていた。先生の時の清純差は微塵もなく、妖艶なエロさがにじみ出ていたが。妖怪ではあったが何故か神秘的な感じがした。ついつい見とれてしまう。えろいからじゃないぞ!
「…今はね、訳あって七尾の狐さんなの。名前は藻江島さんとかたまちゃんとかでいいわよー?」
「は、はぁ…いや、でも、今は一応先生やってるしちょっと不味いんじゃ…。」
妖怪だとしても人に化けて人間社会にいるわけだ。護衛で来たとしても教師と生徒が同じ屋根のしたでこんな状況は大問題すぎる。リアルに俺の生活にも響く。退学で済むのか、社会的にもどうなのか…大問題すぎる!
「心配しないで秋緋くん。そこはちゃんと考えてるわよ。」
フフンと鼻をならした先生は自分の尻尾をひとつ掴むとぷちんと取ったのだ。
ポカンとする俺。
普通取れるとか思わないじゃないですか。何で取れるんですかね?
「はーい!今日来たのはこの子を置いておくためよ~!秋緋くん、仲良くしてあげてね!」
「うぶっふぅっ!」
ぽーんともいだ尻尾を俺に向かって投げると空中で形を成し、狐の形になって俺の顔にしがみついた。
「あの小鬼ちゃんたちとは違って家事はできないのだけれど護衛はできるからっ!しかも餌とかトイレとか手間はかからない優れものよ?」
はぁ…と諦めぎみに返事をし、顔についたそれを剥がすとまぁ、なんとも言えない表情で俺を見据えている。目が据わっているというか…どっかで見たことあるわ、これ。
「それじゃ、また学校でね?お風呂ごちそうさま~。」
あのさ。俺の周りにいる俺を助けてくれるって言う人たちはどうしてこうも説明不足で押し付けて適当に去っていくのばっかなんだ。俺の中の鬼が落ち着かせてるとか言うけどこんなん続けば落ち着かせるというより呆れてしまってるんじゃないのか?
「…まぁ、よろしく狐くん。」
シャッ!
え?何で俺引っ掛かれたの?
あ。
「女の子…。」
俺の胸の辺りを蹴って飛び出し、ふぅんっとため息をついて狐さんは机の上で丸くなった。うん、おやすみなさい…。
…って感じで藻江島先生も一緒に色々してくれてるわけだ。家にいるときは狐さんが、学校にいるときは藻江島先生が何かしらで護っていてくれてる。
「…楽しみね、秋緋くん。」
まだ謎だらけの人だ。親父との関係もよくわからないまま。
大人たちの話し合いをボーッと聞いていたらいつの間にか寝ていたらしい。どれくらいの時間が過ぎたかはわからないが親父と結緋さんはまだ話をしているようだった。
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