「聖女に丸投げ、いい加減やめません?」というと、それが発動条件でした。※シファルルート

ハル*

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瞳に映りこむモノの存在 3 ♯ルート:Sf

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~ナーヴ視点~


「どうだ、調子は」

俺がそう声をかけたコイツは、頭の先から湧いてきていたほぼ瘴気を魔石化して以降、髪の色が少しずつ元の金髪の範囲を戻していった。

髪が伸びたら、元の髪の色…というのも本当らしく、そっちに関しては伸びたんだろう分だけ黒くなっていた。

ただ、瘴気の絡みのせいでか、単純な黒ってんじゃなく黒みたいな黒…も混じっている。

その色合いで、どの程度体に影響が出ているのかとかの判断材料になっているわけで。

「で、さ」

ベッドに腰かけて、上半身をひねるようにして目の前のコイツと向き合う。

「原因、やっぱストレスってやつか? 髪の、と、モヤってたやつ、と」

聖女の従者扱いになってから、コイツが見たんだろう夢のほとんどは俺の方にも共有される情報が多い。

それと、聖女の記憶だけじゃなく、コイツの体調やその原因に関しての共有も一気に増えた。

俺と聖女たるコイツと、同じような記憶を脳内に差し込まれているっていうのに、ここまで体調に差が出るのには理由がある。…と、俺が判断した。

なんていうか、性分? のような気がしてる。

瘴気のせいで死にそうな思いまでしているくせして、過去の聖女に何があってどう浄化したとかの話に対して、俺が感じたことがこんなことだからじゃないか?

『所詮、過去の出来事だろ?』

現実主義なのがデカいかもだけど、過去は所詮過去で、情報として必要な時にそのことを思い出せばいいだろうってくらいで考える。

過去に縛られて生きるのは、趣味じゃない。

そんなことを考えながら、ベッドの向こう側で眠っている幼なじみを眺めた。

シファは、過去に縛られてきたけれど、今はやっと前に進もうとしている。

もうそろそろ誰かと一緒に考えて歩き出してもいい頃合いだろうってのもあって、カルナークにシファの胸の内を伝えた。

シファからのざっくりした話では、コイツも乗り越えたいものを抱えているらしいし。

それでなくても、それまでとは違う環境で何かを為せとか言われて、とにかく進めとだけ言われる生活にぶち込まれたんだ。

自分が抱えていたものがある中で、他人の荷物も持てとか言われている。

「ストレス、かかんねぇわけ…ないだろ」

ポケットから飴玉を取り出して、口に放る。

シファとカルナークが共同で作った飴玉。薬草茶を飴玉にした、簡易バージョンの疲労回復アイテム。

急な回復は体への負担が大きいからな。ゆっくり回復できるタイミングがあれば、そういうアイテムがあってもいい。

俺が口の中で飴玉を転がしていると、ふわりと笑って「あー…」と目の前のコイツが口を開けた。

「あー…?」

その言葉まんま繰り返して、ポケットから飴玉を出して…やめた。

「おい、シファ。起きろ」

ベッドをまたぐように声をかけてやりゃ、メガネをかけ直して俺と彼女へと視線を彷徨わせたシファ。

「寝ぼけてんなよ、おい」

そう言いながら、手元に飴玉をポンと放ってやる。

「食べさせてくれってよ」

口を開けて待ち続けている奴を親指で指さし、寝ぼけた奴に教えてやると。

「…そっか」

と、同じようにふわりと微笑んで飴を包み紙から取り出した。

「……へへ。シファルの味だー」

とか、よくわからない謎の感想を呟く聖女という名の彼女。どういう味だよ、シファル味。

現状、頭痛が完全になくなったわけじゃないけど、かなり減ったのは事実らしい。

今みたいに笑顔を浮かべる回数が、かなり増えているって話だから。

コイツが笑っていると、シファだけじゃなく他のやつらも明るい表情になっている。

でも、俺は知ってるから。

なんせ、従者扱いだからな。

「おい」

で、言わせてもらえば、俺は優しい方じゃない。口も悪いし、気づかいも出来ない。

「お前さ」

他のやつらみたいに、名前で呼ぶとかしないし、出来ない。する理由がない。

「ここまで来といて、ストレスまた溜めたら、また魔方陣を頭に乗せっから」

あの瘴気みたいなやつは、コイツの中に溜まりに溜まったストレスが体内の聖属性に反発してあんな形で異変を知らせたんだろう。

でもあそこまで表に出てこない限り、コイツは誰にも自分が抱えていたことを明かさなかったんだろう。

それは、悪手だ。

シファもコイツも、誰かに甘えていいし、頼っていいし、自分だけで消化できない心は誰かと分けあえばいい。

不器用な二人だから、互いに拠り所にしちゃえばいいんだっての。

「…えー。あれ、眩しいから嫌だ」

嫌な理由が、眩しいからって…。

「お前な……」

なんかついてムカついて、光魔法で部屋の天井に星を散らしてやる。

「……ざまぁ」

そう言ってから立ち上がり、部屋を後にする。

これから夜になり、暗くなった部屋で二人で星空みたいな天井を眺めつつ、他愛ない話でもしたらいいんだ。

ドアの手前で「また明日くる」とだけ告げて、俺はドアを閉めた。

――アイツは、髪色だけならかなり元の状態だが、実際はまだかなりストレスを溜めこんでいる。

そして、ジークいわく、死亡予定の文字の上に阻害するようにぐしゃぐしゃとペンで消されたみたいなのがあったらしい。

阻害の隙間から見える文字をつなぎ合わせて、書かれているだろうと予想された内容。

『死亡予定:一週間後』

それまでの黒文字じゃなく、タイムリミットが近いからか赤い文字で書かれていたという。

俺とアイツだけにしかわからない、聖女に関してと浄化についての情報。

互いに口にしないけど、新しい情報が脳裏に浮かんでいる。

廊下を自室へ戻りながら、大きなため息をつく。

俺の頭に浮かんだってことは、アイツの方にも浮かんだはずだ。

「時間が、足りねぇ」

俺ですら焦れている事態に、アイツが焦れていないはずがない。

それゆえ…の、ストレスか。

「こればっかりは、どうしてやることも…もう出来ないな」

だから、俺が出来たことはあれっぽっちだ。

カルナークから聞いていた、星空は元の世界もこっちも変わらないみたいだという情報。

星を見るのは、比較的好きな方らしい話。

俺が解消してやれるストレスなんて、ないに等しいんだから。

「光属性でも、すこしは役に立てたか……?」

体力的にまだ長い時間バルコニーには出られない。ってか、シファが過保護になって出さないって聞いた。

だったら、窮屈な日常に夜の気分転換をくれてやっただけの話だ。

ドアを開け、部屋に入る。

机には、先に仕掛けておいた魔方陣の上で、あの魔石がふわりと浮いている。

「色の変化は…まだわずかだな」

なにもかも、時間が足りない。

浄化の準備も、アイツの体力の回復も。

「死へのカウントダウンの覚悟……も」

言葉にすれば、それは意思を持つと聞いたことがある。

「サラサラ死ぬ気も死なす気もねぇけどな」

明確な言葉にして、手をこぶしに変える。

アイツがへらりと笑いながらも内心でキッチリ決めている覚悟を、俺も決める時なんだ。

死ぬのは嫌だ。

生きるためにと、瘴気に向きあってきたんだ。ずっと。

「俺も、アイツも…生かす。絶対に」

二人だけが知る秘密を胸に、窓の向こうを遠く眺める。

確かに瘴気は近づきつつある。

「生き…たい」

言葉にして、何度も何度も自分に聞かせてきたそれを。

「生きる……絶対」

今は覚悟に変えて、自分へ告げた。

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