配信者と行く TSエルフのダンジョン探索記

とまと屋

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第18話

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 ダンジョンの夜、つまり地上の昼に黒幕が来てくれたのは幸いだった。夜は探索者エクスプローラーの活動も鈍く、他者に遭遇する確率が減るからね。
 だけどメイン通路は照明が設置されていて探索者エクスプローラーもよく通る。不意の遭遇を避けるため、ボクたちはメイン通路を外れて進む。
「くそっ、数が多い!」
「キャンプ地まで後退しよう!」
 とはいえ、夜になると小鬼ゴブリンの活動は活発になる。今も別の探索者エクスプローラーたちが小鬼ゴブリンの群れに追われて撤退していくのを見かけた。怪我人もいる、無事にキャンプ地まで逃げられるだろうか。
「助けには……いきませんよね」
「当然。ダンジョンでは優先順位を間違えるな」
 さくらの助けに行きたい気持ちもわかる。これが普通の探索中ならボクも助けに行っただろう。
 だけど、ボクたちには目的がある。今はそっちを優先しないと。
 角灯ランタンのシャッターを下ろし、最低限の光源で目立たないようにダンジョンを進む。夜目の利くボクが先行し、安全を確認してから二人を呼ぶ。それを繰り返す。
「……小鬼ゴブリンが五体いるなあ」
「移動しそうには?」
「ないね。……食事中だ」
 説明にさくらが口を押さえる。この階で小鬼ゴブリンが集団で貪り食えるのは、群れからはぐれた爆音鹿ショック・ディアか、同業者くらいだから。
「……迂回するしかないですね。西側からは……」
「西側は途中に広場があるっすよ。少し遠回りだけど、東側からの方が」
「ああ、そうですね。探索者エクスプローラーがキャンプしてるかもしれません」
 吐き気を抑え、それでもルートを話し合うさくらと美桜に頬がゆるむ。徹底的に2階のマップを記憶させたからなあ。自分達で話して決められるのはいいことだ。
 ボクも賛成し、東側から回り込むことにした。
「そういえば、あの崩落現場、完全に封鎖されたって話っすね」
「はい、小梅さんが話してましたね」
 背後で二人が小声で話している。……うん、少し寄り道するだけだし、確認しておくか。
 しばらくして到着した崩落現場に続く通路は、頑丈な鉄の板で完全に封鎖されていた。以前はロープが張ってあっただけなのに、徹底的にやったね。
 美桜が軽く鉄板を拳で叩く。どうやら厚みを確認してるみたいだ。
「かなり分厚いっすね。壊せなくはないですけど、すごい音しますよ」
「壊すな壊すな」
 行動がひとつひとつ腕力頼みだな、君は。こら、片手用とはいえ戦鎚ウォーハンマーを素振りするんじゃない。壊す気マンマンかっ。
「でも、ここが通れないと、どこから封鎖された場所に入るんですか?」
 さくらの疑問に行動で答える。二人を先導してたどり着いたのは────。
「ミヤコちゃんが漏らした所じゃないっすか」
「美桜、デリカシー……」
 見ろ、さくらが赤面してるぞ。いや、美桜には見えないかもだけどさっ。
 ごほん。二人を連れて来たのは、美桜が床をぶち抜き、二人して落ちた場所だ。天井を照らせば、小梅が事前に調べておいてくれたとおり、雑に穴が塞がれているのがわかる。天井までは3mほどあるけれど、足場があれば美桜なら届くだろう。
 魔法鞄マジックバッグから脚立を取り出して設置。それを見た二人が感嘆の声をもらす。
「何度見ても便利っすねー、それ」
「それがあれば配信用の道具を持ち歩くのも楽そうですね」
「まあ、最初に出し入れした者しか使えないのが難点だけどね」
 今回の作戦に必要な諸々はこの魔法鞄マジックバッグに入れてある。もちろん、二人が必要とする物は個人で持ってもらっているけれど。
「美桜、頼んだ。できるだけ静かに」
「了解っす」
「さくらは美桜の手元を照らして」
「はい」
 作業は美桜とさくらに任せて通路を見張る。近くにこれといった物がない場所だから探索者エクスプローラーはおろか小鬼ゴブリンも近づかないとは思うけど、用心に越したことはない。
 背後でドスンと重い音がした。
「あー、適当な大きさの石を乗っけて、適当に埋めた感じっすね」
「天井に鉄板を張るわけにもいかないだろう」
「あはは、確かに。そんな怪しい場所、探索者エクスプローラーなら調べますよね」
 さくらの言う通り、天井に鉄板など張ってあっては調べてくれと言っているようなものだ。
 小梅に確認してもらったが、あの時の爆発────公式発表は崩落────で生き延びた教育課程修了式参加者はいないと発表されている。
 だけど事故の後に何者かを捜し回る動きがあったことは多くの探索者エクスプローラーに知られていて、誰を捜しているのか? ひょっとしたら生き残りがいるんじゃないか? と一時噂になったことがあるらしい。
 まあ、その生き残りが名乗り出てこないし、どうやって崩落から生還したかもわからない。だから噂は終息したのだけれど、ここに穴があったとすれば、色々と想像を逞しくして噂が再燃しないとも限らないだろう。好奇心旺盛でなければ探索者エクスプローラーは務まらないのだ。
 だから天井の穴は簡単に埋めただけなんだろう。明らかに違和感がなければ、わざわざ調べようとも思わないし。
 通路を警戒しながら、そんなことを考えている間にも、ドスンドスンと石が落とされる。やがて────。
「開いたっすよ」
 振り向くと美桜がサムズアップ。脚立の周囲には結構な大きさの石が山積みになり、天井には穴が復活していた。
「すごいですね、美桜さん。こんな大きな石が積まれていたのに、下から崩さずにどけるなんて」
 さくらが感心しているけどボクも同感だ。大きな音を立てるなとは言ったけど、よくも崩さずに積み石を取り除いたものだ。
「そうですか? 崩れてきたらこう、下から支えるだけっす」
 ……やはり脳筋か。
 いやまあ、それができちゃうのは日々の鍛練の賜物なんだろうけどね。
 脚立を使って上の層へ。脚立にはロープを結んでおいて、上から引っ張り上げてから魔法鞄マジックバッグに収納する。
 あ、ちなみに、崩した石は全部魔法鞄マジックバッグに収納しておいた。誰かが近くを通った時、大きな石がゴロゴロしてたら注目されちゃうだろうし。
「足元に注意して」
 崩落、いや爆発のせいで大小の石が散らばっている。下手に踏むと「足首を挫きましたー!」になる。
「……これは」
「ひどいですね」
 少し進むと爆発現場に出る。天井も壁も崩れていて爆発の大きさが窺える。
 遺体の捜索が行われたので、土砂や岩はある程度処分されているけれど、まだ多くの岩が残っている。
 短い間だったけれど、共に戦った仲間がここで死んだ……。
 と、美桜が荷物から大きなビンを取り出し、栓を開ける。この匂いは……。
「小梅に頼んでいた酒?」
「そうっす。……飲めない年齢の方が多かったっすけどね」
 そう言って美桜は爆発現場に酒を撒く。
 ああ、そうか。ボクが彼らと一緒だったのは数日、だけど美桜にとっては年単位の仲間たちだ。ボク以上に想うところは多いだろう。
 ボクたちは手を合わせ、しばし彼らの冥福を祈った。
「……ミヤコちゃん」
「うん?」
「絶対に……悪事を暴いてやりましょう」
「そうだね」
 そうだ、今回の作戦はボクたちが安心して表を歩けるようにするだけじゃない。ここで亡くなった仲間たちの弔い合戦でもあるんだ。
 決意も新たに先に進む。例の行き止まりに偽装された扉は、表面が焦げていたけど健在だった。
 さくらが悲しそうに呟く。
「ここに連れられて来た時は、偽装された扉にワクワクしたんですよね。まさか、あんなことになるなんて……」
「さくらちゃんも弔い合戦っすね」
「……はいっ」
 美央のフォローを聞きながら偽装扉を押す……うん?
「ミヤコちゃん、どうしたっすか?」
「開かない。この感触は……楔が打ってあるな」
 通路を封鎖して安心しているかと思ったけれど、扉に楔を打ったか。念には念を入れたか。どのみち通路が封鎖されれば使わなくなる扉だしね。
「代わってください」
 美央が偽装扉に手をかけ、体重をかけて押した。

 ズズッ……。

 わあ、マジか。人ひとりが通れるくらいだけど、楔など物ともせずに扉を力ずくで開けおった。
 脳筋だなんて言ってごめんよ。今はただ、ありがたいよ。
 隙間から覗くも通路は暗い。物音も……しない。
 ボクは二人に振り返る。
「二人とも、この先のマップを頭に入ってるね」
「はい」
「バッチリっす」
 もともとあった地図とさくらの記憶を合わせて目的地までのルートは確認済みだ。もしバラバラになった場合の集合場所も決めてある。
 よし、じゃあ……。
「行こう」
 ボクたちは隠し通路に踏み込んだ。
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