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第17話
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潜伏生活一週間。閉店後の店内にボクたちは集まっていた。
「あのスーツの男のことがわかったよ。あいつはムラサメマテリアルの社長で、名前は雨村令二」
「ムラサメマテリアル?」
美桜が首を傾げる。まあ、美桜なら知らないだろうな。
そういうボクも首を傾げる。いや、ムラサメマテリアルは知ってるけど、今はエルフだから。地球の企業を知ってるはずがないから。
「名前は聞いたことありますけど……」
「じゃあ、簡単に説明するよ」
さくらの呟きに応えるように、小梅がムラサメマテリアルについて話しだす。
ムラサメマテリアルは日本有数の金属加工専門の企業だ。もともと大きな企業だったが、ダンジョンが出現してからは、ダンジョンで採取される特殊な鉱物の加工方法をいち早く開発したところだ。
「現在、ダンジョンで採取される鉱物を利用した商品は多く販売されているけれど、それら鉱物を地球の技術で精製、加工するには特別な技術が必要。今、日本にはその技術を持っている企業は四社あるけれど、ムラサメマテリアルは業績が頭一つ抜けてるわね」
「視察にでも来てるんですかねー」
小梅の説明に美桜が呑気な言葉。
視線で小梅に問うと、彼女は首を振った。
「ムラサメマテリアルの社長がダンジョンに入る許可を得ているという情報はないわね。記録上も彼はダンジョンの領域を訪れていない」
おいおい、これは……。
と、さくらが首を傾げた。
「確か、ダンジョンでの鉱物資源の採掘、採取は探索者の仕事ですよね」
そう、さくらの言う通り。ダンジョンは国の管理下に置かれているわけで、いち企業が個人的に部下を送り込んで採掘や採取はできない。探索者が採掘、採取した資源は国が買い取り、それを各企業に分配している。
なのに、ムラサメマテリアルは社長がこそこそとダンジョンに────それも立ち入り禁止エリアに入り込んでいる。これはつまり……。
「違法採掘か」
ボクの呟きに小梅以外の二人がギョッとする。
「それって犯罪っすよね」
「本当に違法採掘しているなら、そうですね」
「どうやら、その証拠を押さえないと、ボクたちは表を歩けないね」
ムラサメマテリアルがダンジョンの立ち入り禁止エリアでなにかをしている。
それがなんなのか、決定的な証拠を掴んで公開し、相手を黙らせないとボクたちは大手を振って表を歩けない。
だから準備をしながら、その時を待つ。
「ミヤコちゃ~ん、これ必要っすか?」
「もしもの時の準備だよ」
「肌が真っ黒になるし、マスクしてても喉がイガイガする~」
「口より手を動かせ」
小梅の店の倉庫で作業中。炭を細かく砕いて袋に詰めていく。最低でもサンタクロースが背負う袋いっぱいは欲しいな。しかも複数。
ひょっとしたら使わないかもしれない。それでも、もしもの時のためにやれることをやっておかないと死ぬのがダンジョンだ。
そうそう、小梅に頼んでおいた物は手に入っただろうか? ここ3階の池で捕れるはずなんだが。
「だけど、こんな大きな袋をどうやって持ち運ぶんですか? あたしが持ってもいいっすけど、かさばるっすよ」
「大丈夫、これがあるから」
いっぱいになった大袋を魔法鞄に収納する。漫画みたいに端から小さくなって吸い込まれるように収納された大袋を見て美桜が目を丸くした。
「ミ、ミヤコちゃん、なんですかそれっ!」
「なにって、魔法鞄だけど」
「よく見せてくださいっ!」
奪うように魔法鞄を手にした美桜は、ひっくり返したり、照明で透かそうとしてみたりと、新しい玩具を手にした子供みたいだ。
「ミヤコちゃん、これ開かないっす」
「こらっ、力任せに開けようとするなっ! 壊れる壊れる!」
そこにさくらがやって来た。
「どうしたんですか、大きな声を出して。表のお客さんに聞こえそうですよ」
「さくらちゃん、これ、魔法鞄だそうっす!」
「え、魔法鞄!? み、見せてくださいっ!」
子供が二人になった。
いやまあ、まだ未成年だけどさ、二人とも。
でも、これが普通の反応か。ずっと愛用していたから忘れてた。
「ミヤコちゃん、なんでもいいので出し入れするの見せてくださいっ」
「あ、私も見たいです」
初めての魔法鞄に興奮を隠せない二人。しょうがないなあ。
そんなわけでしばし実演。リクエストされた物を入れたり出したり。
二人とも本当に子供みたいな反応で、なんとも微笑ましい。
「お楽しみのところ、いいかしらあ……」
「「「ヒエッ」」」
倉庫の入り口に小梅がいた。室内の温度が急低下したのは気のせいじゃないだろう。
「すっごく楽しそうね~。店にまで賑やかなのが聞こえてきたわよ~」
小梅は笑顔だ。だけど目が笑ってない。
ボクは即座に正座した。長年の付き合いでわかってるんだ、こういう時の小梅には逆らっちゃいけないって。
ボクを見たさくらと美桜も素早く正座。いいね、ダンジョンで生き残るには、危機管理能力が高くないと。
「あなたたちね、潜伏している自覚はあるかしら~?」
穏やかな、だけど氷点下の問いに冷や汗が出る。うわ、久しぶりにこれかぁ。
小梅は暗殺者型の探索者だったせいか、ダンジョンに潜ってから威圧で相手の動きを止めることができるようになっていた。それがこれだ。
付き合いの長いボクでさえこうなんだ、両隣のさくらと美桜なんかはガタガタと震えている。可哀そうに。だけどまあ、これも経験と思って我慢してくれ。
「さくら、あなたは二人を注意しに来たのよね。なのに、どうして一緒にはしゃいでるの?」
「あ、あう……」
さくらは言葉もでない。顔なんて血の気が引いて真っ白だ。いつ気絶しても不思議じゃない……いや待て、この匂いは……。
さくらがボロボロと大粒の涙をこぼし始める。ああ、耐えられなかったか。
ふと、空気が和らぐ。さすがに小梅もこれ以上はマズイと判断するよね。
「……ふう。さくらは処理してらっしゃい」
「は、はいぃ……」
泣きながら、まだ震える足取りでさくらは倉庫を出ていく。濡れた床と脚は見なかったことにしてあげよう。
「で、なにを騒いでいたわけ?」
「いや、二人が魔法鞄を初めて見たって言うから、ちょっと実演を……」
「なるほどね。まあ、私も初めて見た時は驚いたからわからなくもないけれど、自分たちの置かれた状況を忘れないように。倉庫整理を頼んだ子が騒いでるって誤魔化したけど、次は無いかもよ?」
「ごめん」
「はいっす……」
「じゃ、罰としてミヤコは一人で倉庫を掃除しておくように」
「え、なんでボクだけ」
「二人を注意しなかったからよ」
副音声で『この中で一番のダンジョン経験者が、駆け出しの二人を注意せずに一緒にはしゃぐなんて論外。罰は当然』と聞こえてきた。確かに不注意が過ぎたな、グウの音も出ない。
反省して掃除道具を取りに行こうとして気がついた。掃除ってつまり、炭の粉だけじゃなくて……。
「これもだよね?」
濡れた床を指差す。
「当然」
「いや、でも……」
「不満? 電気鰻の肝、いらないの?」
「手に入ったのか!?」
「ついさっき、ね。いらない?」
「いるいるっ! 掃除させていただきますっ」
……その後、ボクに後始末をされたと知ったさくらは、しばらくボクに会うたびに赤面して目を合わせてくれなかった。
そんなことがありながらも準備を進める。仕込み、作戦会議、シミュレーション。小梅の協力も得て、できるだけのことはしておく。
……そして時は来た。
「地上の仲間から連絡が来たよ。ムラサメマテリアルの社長、密かにダンジョンに来たみたい」
黒幕の社長のおでましだ。夜のダンジョンに来てくれたのは幸いだな。
それから小梅は嫌そうに、
「あと……鋼が依頼を断って、今日をオフにしたって」
「鋼って……先日、店に来た人ですよね?」
さくらの言葉に小梅が頷く。その顔は嫌悪感を隠しきれていない。
そう、先日、鋼が小梅の店に来たのだ。現役の高ランク探索者だから、地下5階の探索前に小梅の店で買い物をするのは珍しくもなんともないけれど。
その時、ボクたちは息をひそめて扉の隙間から様子を窺っていたんだけど、小梅が怒りを必死に抑えているのがわかってヒヤヒヤしたものだ。ボクのために怒ってくれるのは嬉しいけれど、そのまま暗殺するんじゃないかと心配したぞ。
鋼も、小梅のいつも以上の塩対応に戸惑っていた感じで、買い物が済んだらそそくさと出ていったな。
あとで知ったことだけど、ボクが鋼に斬られた日も、鋼は急に依頼をキャンセルしていたそうだ。
「……あの人もいるんですか」
「さくら、変な気は起こすなよ?」
「わかってます」
さくらはボク、つまり咲山春都を殺したのが鋼だと小梅から聞いて、随分と怒りに震えていた。だけど駆け出しで、しかも配信者のさくらが鋼に敵うはずもない。冷静に頼むぞ。
「一度、闘ってみたいっすねー」
「本気でやめろ」
美桜は手合わせしたいみたいだけど、本当にやめてくれ。鋼の持つ剣は、ダンジョンで見つかった数少ない魔法の武器なんだ、怪我じゃすまないぞ。
とにかく、今日決行だ。
「準備はできてるな?」
「はいっ」
「いつでも行けるっすよ。……あ、小梅さん、お酒はあるっすか?」
酒?
「あるけど……あんた未成年でしょ」
「あたしが飲むんじゃないっすよ」
「……まあ、いいけど」
んー? よくわからないけれど、美桜とさくらは準備OKでいいのかな。
「小梅、地上の知り合いには?」
「情報をもらった時に伝えておいたよ。準備もあるけど、みんなが目的地に着くころには終わってるでしょ」
「じゃあ……出発だ」
ボクたちは装備を整えて倉庫に集合した。
「軽くて落ち着かないっす」
「我慢して。道具屋のアタシが金属の鎧を調達しようとすると、色々と訊かれるのよ」
ボクたちは小梅が調達してくれた装備に身を固めている。三人とも硬革系の防具で、美桜は落ち着かないらしい。まあ、こっそり進むにはこの方がいいんだけど。
小梅に見送られ、隠し通路から外に出て2階へ向かった。
「あのスーツの男のことがわかったよ。あいつはムラサメマテリアルの社長で、名前は雨村令二」
「ムラサメマテリアル?」
美桜が首を傾げる。まあ、美桜なら知らないだろうな。
そういうボクも首を傾げる。いや、ムラサメマテリアルは知ってるけど、今はエルフだから。地球の企業を知ってるはずがないから。
「名前は聞いたことありますけど……」
「じゃあ、簡単に説明するよ」
さくらの呟きに応えるように、小梅がムラサメマテリアルについて話しだす。
ムラサメマテリアルは日本有数の金属加工専門の企業だ。もともと大きな企業だったが、ダンジョンが出現してからは、ダンジョンで採取される特殊な鉱物の加工方法をいち早く開発したところだ。
「現在、ダンジョンで採取される鉱物を利用した商品は多く販売されているけれど、それら鉱物を地球の技術で精製、加工するには特別な技術が必要。今、日本にはその技術を持っている企業は四社あるけれど、ムラサメマテリアルは業績が頭一つ抜けてるわね」
「視察にでも来てるんですかねー」
小梅の説明に美桜が呑気な言葉。
視線で小梅に問うと、彼女は首を振った。
「ムラサメマテリアルの社長がダンジョンに入る許可を得ているという情報はないわね。記録上も彼はダンジョンの領域を訪れていない」
おいおい、これは……。
と、さくらが首を傾げた。
「確か、ダンジョンでの鉱物資源の採掘、採取は探索者の仕事ですよね」
そう、さくらの言う通り。ダンジョンは国の管理下に置かれているわけで、いち企業が個人的に部下を送り込んで採掘や採取はできない。探索者が採掘、採取した資源は国が買い取り、それを各企業に分配している。
なのに、ムラサメマテリアルは社長がこそこそとダンジョンに────それも立ち入り禁止エリアに入り込んでいる。これはつまり……。
「違法採掘か」
ボクの呟きに小梅以外の二人がギョッとする。
「それって犯罪っすよね」
「本当に違法採掘しているなら、そうですね」
「どうやら、その証拠を押さえないと、ボクたちは表を歩けないね」
ムラサメマテリアルがダンジョンの立ち入り禁止エリアでなにかをしている。
それがなんなのか、決定的な証拠を掴んで公開し、相手を黙らせないとボクたちは大手を振って表を歩けない。
だから準備をしながら、その時を待つ。
「ミヤコちゃ~ん、これ必要っすか?」
「もしもの時の準備だよ」
「肌が真っ黒になるし、マスクしてても喉がイガイガする~」
「口より手を動かせ」
小梅の店の倉庫で作業中。炭を細かく砕いて袋に詰めていく。最低でもサンタクロースが背負う袋いっぱいは欲しいな。しかも複数。
ひょっとしたら使わないかもしれない。それでも、もしもの時のためにやれることをやっておかないと死ぬのがダンジョンだ。
そうそう、小梅に頼んでおいた物は手に入っただろうか? ここ3階の池で捕れるはずなんだが。
「だけど、こんな大きな袋をどうやって持ち運ぶんですか? あたしが持ってもいいっすけど、かさばるっすよ」
「大丈夫、これがあるから」
いっぱいになった大袋を魔法鞄に収納する。漫画みたいに端から小さくなって吸い込まれるように収納された大袋を見て美桜が目を丸くした。
「ミ、ミヤコちゃん、なんですかそれっ!」
「なにって、魔法鞄だけど」
「よく見せてくださいっ!」
奪うように魔法鞄を手にした美桜は、ひっくり返したり、照明で透かそうとしてみたりと、新しい玩具を手にした子供みたいだ。
「ミヤコちゃん、これ開かないっす」
「こらっ、力任せに開けようとするなっ! 壊れる壊れる!」
そこにさくらがやって来た。
「どうしたんですか、大きな声を出して。表のお客さんに聞こえそうですよ」
「さくらちゃん、これ、魔法鞄だそうっす!」
「え、魔法鞄!? み、見せてくださいっ!」
子供が二人になった。
いやまあ、まだ未成年だけどさ、二人とも。
でも、これが普通の反応か。ずっと愛用していたから忘れてた。
「ミヤコちゃん、なんでもいいので出し入れするの見せてくださいっ」
「あ、私も見たいです」
初めての魔法鞄に興奮を隠せない二人。しょうがないなあ。
そんなわけでしばし実演。リクエストされた物を入れたり出したり。
二人とも本当に子供みたいな反応で、なんとも微笑ましい。
「お楽しみのところ、いいかしらあ……」
「「「ヒエッ」」」
倉庫の入り口に小梅がいた。室内の温度が急低下したのは気のせいじゃないだろう。
「すっごく楽しそうね~。店にまで賑やかなのが聞こえてきたわよ~」
小梅は笑顔だ。だけど目が笑ってない。
ボクは即座に正座した。長年の付き合いでわかってるんだ、こういう時の小梅には逆らっちゃいけないって。
ボクを見たさくらと美桜も素早く正座。いいね、ダンジョンで生き残るには、危機管理能力が高くないと。
「あなたたちね、潜伏している自覚はあるかしら~?」
穏やかな、だけど氷点下の問いに冷や汗が出る。うわ、久しぶりにこれかぁ。
小梅は暗殺者型の探索者だったせいか、ダンジョンに潜ってから威圧で相手の動きを止めることができるようになっていた。それがこれだ。
付き合いの長いボクでさえこうなんだ、両隣のさくらと美桜なんかはガタガタと震えている。可哀そうに。だけどまあ、これも経験と思って我慢してくれ。
「さくら、あなたは二人を注意しに来たのよね。なのに、どうして一緒にはしゃいでるの?」
「あ、あう……」
さくらは言葉もでない。顔なんて血の気が引いて真っ白だ。いつ気絶しても不思議じゃない……いや待て、この匂いは……。
さくらがボロボロと大粒の涙をこぼし始める。ああ、耐えられなかったか。
ふと、空気が和らぐ。さすがに小梅もこれ以上はマズイと判断するよね。
「……ふう。さくらは処理してらっしゃい」
「は、はいぃ……」
泣きながら、まだ震える足取りでさくらは倉庫を出ていく。濡れた床と脚は見なかったことにしてあげよう。
「で、なにを騒いでいたわけ?」
「いや、二人が魔法鞄を初めて見たって言うから、ちょっと実演を……」
「なるほどね。まあ、私も初めて見た時は驚いたからわからなくもないけれど、自分たちの置かれた状況を忘れないように。倉庫整理を頼んだ子が騒いでるって誤魔化したけど、次は無いかもよ?」
「ごめん」
「はいっす……」
「じゃ、罰としてミヤコは一人で倉庫を掃除しておくように」
「え、なんでボクだけ」
「二人を注意しなかったからよ」
副音声で『この中で一番のダンジョン経験者が、駆け出しの二人を注意せずに一緒にはしゃぐなんて論外。罰は当然』と聞こえてきた。確かに不注意が過ぎたな、グウの音も出ない。
反省して掃除道具を取りに行こうとして気がついた。掃除ってつまり、炭の粉だけじゃなくて……。
「これもだよね?」
濡れた床を指差す。
「当然」
「いや、でも……」
「不満? 電気鰻の肝、いらないの?」
「手に入ったのか!?」
「ついさっき、ね。いらない?」
「いるいるっ! 掃除させていただきますっ」
……その後、ボクに後始末をされたと知ったさくらは、しばらくボクに会うたびに赤面して目を合わせてくれなかった。
そんなことがありながらも準備を進める。仕込み、作戦会議、シミュレーション。小梅の協力も得て、できるだけのことはしておく。
……そして時は来た。
「地上の仲間から連絡が来たよ。ムラサメマテリアルの社長、密かにダンジョンに来たみたい」
黒幕の社長のおでましだ。夜のダンジョンに来てくれたのは幸いだな。
それから小梅は嫌そうに、
「あと……鋼が依頼を断って、今日をオフにしたって」
「鋼って……先日、店に来た人ですよね?」
さくらの言葉に小梅が頷く。その顔は嫌悪感を隠しきれていない。
そう、先日、鋼が小梅の店に来たのだ。現役の高ランク探索者だから、地下5階の探索前に小梅の店で買い物をするのは珍しくもなんともないけれど。
その時、ボクたちは息をひそめて扉の隙間から様子を窺っていたんだけど、小梅が怒りを必死に抑えているのがわかってヒヤヒヤしたものだ。ボクのために怒ってくれるのは嬉しいけれど、そのまま暗殺するんじゃないかと心配したぞ。
鋼も、小梅のいつも以上の塩対応に戸惑っていた感じで、買い物が済んだらそそくさと出ていったな。
あとで知ったことだけど、ボクが鋼に斬られた日も、鋼は急に依頼をキャンセルしていたそうだ。
「……あの人もいるんですか」
「さくら、変な気は起こすなよ?」
「わかってます」
さくらはボク、つまり咲山春都を殺したのが鋼だと小梅から聞いて、随分と怒りに震えていた。だけど駆け出しで、しかも配信者のさくらが鋼に敵うはずもない。冷静に頼むぞ。
「一度、闘ってみたいっすねー」
「本気でやめろ」
美桜は手合わせしたいみたいだけど、本当にやめてくれ。鋼の持つ剣は、ダンジョンで見つかった数少ない魔法の武器なんだ、怪我じゃすまないぞ。
とにかく、今日決行だ。
「準備はできてるな?」
「はいっ」
「いつでも行けるっすよ。……あ、小梅さん、お酒はあるっすか?」
酒?
「あるけど……あんた未成年でしょ」
「あたしが飲むんじゃないっすよ」
「……まあ、いいけど」
んー? よくわからないけれど、美桜とさくらは準備OKでいいのかな。
「小梅、地上の知り合いには?」
「情報をもらった時に伝えておいたよ。準備もあるけど、みんなが目的地に着くころには終わってるでしょ」
「じゃあ……出発だ」
ボクたちは装備を整えて倉庫に集合した。
「軽くて落ち着かないっす」
「我慢して。道具屋のアタシが金属の鎧を調達しようとすると、色々と訊かれるのよ」
ボクたちは小梅が調達してくれた装備に身を固めている。三人とも硬革系の防具で、美桜は落ち着かないらしい。まあ、こっそり進むにはこの方がいいんだけど。
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