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第一章 出会い
結婚
しおりを挟む二人をそれぞれの家へと送り届け、数週間ぶりに実家へと顔を出す。
「あら、ネロお帰りなさい。レイちゃん達の面倒ありがとねー」
「少し筋肉ついたなネロ。逞しく育って父ちゃんは嬉しいぞ」
俺を拾ってくれた夫婦はあれから俺と同じように十七年分歳をとり、出会った時よりも少しだけ老けた。
だが、同じ年代の獣人よりは遥かに若く元気だ。
二人は“人狼族”と呼ばれる種族で、基本的に人間と変わりはないのだが人間の耳ではなく狼の耳が頭にあって、尾骶骨から尻尾が生えている。
手足を自分の意思によって変化させることができ、温厚そうな顔をしていてもレイ達のように獲物を狩ることができるというわけだ。
父親はシュトルツ・ランバオス。
母親はフェリチタ・ランバオスという名だ。
シュトルツはヴィリロス国の軍人で、その中でも上位階級だと聞いている。
シュトルツはルッツと呼び親しまれており、人狼族のルッツと言えば、誰もが親父を思い浮かべるほど有名人らしい。
フェリチタは孤児院の子供達や共働きをしている家庭の子供達を無償で見ている。
今日二人のお守りをしていたのも、フェリチタの手伝いといってもいい。
「ご飯食べてくでしょー?」
「あぁ。そのつもりで来た」
「やっぱりー。ふふふ。一人暮らしだと栄養偏るものねー」
可愛らしい白のフリルがついたエプロンを身につけて、尻尾を左右に揺らしながら軽快なリズムで食材を切っていく。
嬉しい時は尻尾を揺らし、気分が落ち込むと尻尾が丸まったりと、獣人達は感情がわかりやすい。
「はい、できたー。あなたー!運ぶの手伝ってー」
「今行く。熱いのは持つなよ」
「ふふふ。ありがとー」
今の会話で察した者もいるかもしれないが、俺の両親は出会った頃と変わらずラブラブだ。
順風満帆。
おしどり夫婦。
本当にいい人達に拾われたと思う。
「それでは仲良く、いただきまーすっ!」
「「いただきまーす」」
手を合わせ、栄養バランスの良い料理を頬張る。
日本とは違って十五歳になると、酒、タバコが解禁され、結婚もできるようになるヴィリロス国。
俺も十五歳で一人暮らしを始めた。
ここから歩いて三十分程度の距離ではあるが、親のすねをかじり続けるよりは良いだろうと、二人に申し出たのがもう二年前。
時が経つのは早いものだ。
「でー?いい人はいないのかしら?」
寂しいからと月一で家に帰ってくる事を一人暮らしの条件にされたのだが、その度に出るのは“ちゃんと食べているのか”と“相手はいないのか”という事ばかりだ。
男性は十六、七歳。
女性は十五、六歳で結婚する事が多い為、フェリチタが執拗に聞いてくるのも頷けるのだが、毎回だと正直疲れてしまう。
「男性同士でも結婚はできるし、他国に比べてヴィリロスは偏見の少ない国よ?パーっと式を挙げちゃいましょうよー」
「フェリ。気が早いぞ。ネロにはネロのペースがあるんだ。待ってやろうじゃないか」
「そうねー……」
このやり取りがここ二年のお決まりだ。
大変申し訳ないが、初体験以来、恋だの愛だのに興味がなくなってしまった俺は、二人が期待しているような“彼氏”という存在がここしばらくできていない。
というより、できた事がないと言っていい。
初めての相手も、早く卒業したいからと、顔が好みというだけで選んだ相手と一度関係を持っただけで、付き合ったわけではない。
つまり、ワンナイトというやつだ。
恋愛話が大好きなフェリチタに惚気話を聞かせてやれていないという事だけが、自分が親不孝をしていると感じる唯一の事である。
彼氏はしばらくできないだろうな。
この時の俺は、そう思っていた。
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