人間の俺は狼に抱かれている。

レイエンダ

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第一章 出会い

パコパコからのモフモフ

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 寝るのは好きだ。
 生きていく上で必要な睡眠も、しなくても生きていける昼寝や二度寝も。
 全部大好きだ。
 なぜか。
 それを考えて行き着くのは、布団に包まれている感覚がたまらなく好きだからということ。
 これは人それぞれ違うと思う。
 あくまで俺の意見で、全国の睡眠好きを代表して言っているわけではないので悪しからず。
 なぜ突然こんな話をしたかというと、俺は布団にくるまって最高にいい気分だからだ。

 この手触り。
 この包容力。
 この温もり。

 あぁ、なんて素晴らしいんだ。


「……ネロ。くすぐったいのだが」


 しかしすぐに現実に引き戻される。
 布団に顔を埋めていたはずなのに、真上から声が聞こえる。


「ずるー。俺にもぎゅーしてよ」


 そして背後からも。

 布団が喋ったり擦り寄ってくるなど、魔法でも使わない限りありえない。
 もしかして、と恐る恐る目を開けてみる。

 視界に広がったのは銀色で。
 よく意識を集中してみれば、聞こえていたのは自分の寝息じゃなくて心音で。

 恐る恐る顔を上げてみると、


「おはよう」
「おはよー」


 目を細めてこちらを見ている上位怪狼族ハイフェンリル達がいた。


「……おはようございます」


 挨拶してみたものの、頭の中は今の状況を処理しきれずに大混乱。
 書類の束を空に向かって投げた後のようにパラパラといろんな情報が飛び交っている。
 どれか一つの書類をとっても理解しきれるはずなくて。
 理解する為に全てを取るには手が足りなくて。
 今まさにそんな感じ。
 なんだ。
 このもどかしさは。
 

「ふふふ。ネロちゃん混乱中ー」
「途中で気絶したんだ。無理もない」
「そのせいでオネストはお預けくらったもんねー」
「うるさい」


 頭上で繰り広げられるやり取り。
 体を動かさずに鼻で小突き合ってるのは、きっと身動きが取れないから。
 頭が覚醒してきた俺は、自分が今どんな状況なのをようやく理解した。

 神獣と言われるハイフェンリルに挟まれている。
 しかも、かなり至近距離で。
 顔には銀色の毛が当たっているし、四色の尻尾は体に覆い被さるように乗せられている。
 気持ちよかった筈なのに、意識し始めたから少しばかり暑い。


「ど、どきます!!!」


 覚醒した途端心が申し訳なさでいっぱいになり、慌てて起き上がる。
 否。
 起き上がろうとした。


「いっ、……た」


 腰に激痛が走る。
 この痛みは身に覚えがあった。


「あはは。これは俺がパコパコし過ぎたせいかな?」
「当たり前だ」
「オネストは途中で終わっちゃったもんなー?」
「しつこい」


 夢かもしれないと淡い期待をしたというのに見事に裏切られた。

 自分の心を整理する為に文字で表すとしましょうかね。



 どうやら俺はハイフェンリルに抱かれたようです。






 本当にさ、何流されてんだよって感じだよな。
 でも仕方ないじゃん。
 お礼って言われたら無理に断るのも悪いし。
 相手は神獣だし。
 天罰とかあったらどうしようとか思ったんだもの。

 ……嘘です。
 ごめんなさい。
 顔がタイプでこの二人(今は二匹)ならいいかなって思ったんです。
 いい思い出にしてくれるって言われたらさ、どんな風にしてくれるんだろうとか思っちゃうじゃん!
 ねぇ!?

 心の中でそう叫んでみるも、山びこのように繰り返されるだけで同意してくれるものなんていない。
 人魚さんに会いたいと心から思った。


「腰痛いネロちゃんに残念なお知らせー!」


 二匹の間で項垂れていると、全裸で寝ていた俺を気遣ってか股間を隠すように三本の尻尾を巻きつけて言う。


「あと十分ぐらいで母さん来るぞー」






「もっと早く言って下さい!!!」


 俺は慌てて脱ぎ捨てられていた服を着たのだった。
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