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第一章 出会い
はじめましてお母さん
しおりを挟む着替え終わり、部屋の匂いやシーツが汚れてないかなどを確認した。
俺が気絶している間に後処理してくれていたのか、服を着る以外特にやることはなかった。
「それにしてもお二人……でいいんですかね?」
「いいんじゃない?適当で」
「じゃあ二人で。なんか会った時よりも小さくないですか?」
ベッドに横たわったままの二人を見つめて言う。
出会った時は俺よりも一回り近く大きかったというのに、今はそうだな……牛ぐらいの大きさ。
例えが悪いかもしれないけど、大型犬よりは大きいし馬よりは小さい。
牛しか思いつかなかったんだ。
全国のファンタジー好きの皆さん。
すみませんでした。
日本で狼に出会ったことがないけれど、ウ◯キペディアなどに載っている数値よりは大きいと思いますはい。
「人族やその血が入っている種族以外の上位種は基本的に大きさの調整はできる。元の大きさより小さくできるというだけだがな」
「そゆことー。だからこんな可愛らしいミニサイズにもなれるぞー!」
ベッドにいたタキトゥスがこちらに向かって飛んできたかと思えば、手元に来る時にはぬいぐるみのような可愛らしい子犬サイズになっていた。
「か、か、可愛い!」
「だろー?オネストにしたみたいにぎゅーってしてもいいぞ!」
「小さくなってもモフモフのままだ!可愛い!」
「ふふふ」
両手で強く抱きしめていると、遅れてオネストが足元へやってきた。
腰を下ろして“お座り”をしている。
会った時よりも小さいというだけで、お座りをすると俺の胸あたりに顔がくるわけなんだけど……。
ジッとこちらを見ているだけで何も喋らない。
つぶらな瞳を向けたままずーっと無言。
「オネストは撫で撫で待ちでーす」
手の中にいるタキトゥスが頬を軽く叩いてくる。
柔らかい肉球が当たってそれすらも可愛いと感じてしまう。
タキトゥスを抱きながらオネストの頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を閉じた。
何この子達。
天使なのかな?
可愛すぎるでしょ。
というかなんでこんなに好かれてるのかな?
助けたから?
いやもう可愛いから何でもいいんだけどさ。
片手でタキトゥスを抱きながら背を撫で、もう片方の手でオネストを撫でていると背後にある玄関の扉が大きな音を立てて開いた。
「ネロー!おっはよー」
「母さんおはよう。二人とも起きたよ」
タキトゥスが言った通りの人物が現れ、笑顔で振り返ってそう伝える。
「……」
しかし、あんなにも会いたがっていた二人が起きたと報告している何も関わらず、こちらを見て黙るフェリチタ。
どうしたのだろうと不思議に思ったが、その理由はすぐに判明した。
「えぇぇ!?これはどういう状況なの!?小さくない!?」
二人の姿に驚いていたのだと。
「はじめましてお母さん。俺の名前はタキトゥスで、そこに座ってるのがオネスト。治療してくださり感謝します」
二人はフェリチタを見ながら頭を下げた。
「ねぇ、ネロ。この子達は天使なのかしら!?可愛すぎない!?」
興奮のあまり力加減ができていないのか獣人の腕力を存分に発揮し、俺の両肩を容赦なく掴んでくる。
これが獣化した手だったら皮膚が抉られているところだ。
しかし“天使”という言葉がフェリチタの口から出てくるとは……。
血が繋がっていないとはいえさすが親子というところだろうか。
鼻息が荒くなったフェリチタがすぐに落ち着くわけもなく、俺は二人を撫でながら「天使」「可愛い」という言葉をひたすら聞き続ける。
わかる。
わかるよ。
可愛いよな。
と、心の中で相槌を打ちながら。
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