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第二章 日常のようで非日常
事務職員の仕事
しおりを挟む仕事をしていると時間が過ぎるのは早いもので、日は傾き、依頼を終えた冒険者達が帰還して帰宅ラッシュならぬ報告ラッシュの時間である。
「次の方どうぞー!」
椅子から立ち上がり、先頭に並んでいる冒険者に手を上げて案内をする。
やってきたのは大剣を引っさげた大柄な人族の男。
年齢は二十になったばかりというところ。
何度か担当したことはあるが世間話をするほどの仲ではない。
「依頼の終了報告ですね。ギルドカードと討伐した魔物の一部のご提示願います」
「これです。お願いします」
男は橙色をした長方形のカードと革製の大きな巾着を机に置く。
このギルドカードと呼ばれる物で、このギルドに所属している冒険者という証。
冒険者は依頼を受けた件数や能力値によってランク分けされ、ランクによってカードの色が違う。
驚くことに柔道の帯色とギルドカードの色がリンクしており、Fランクから順に白、黄、橙、緑、青(道場によっては紫だったりするそうです)、茶。
Sランクは黒、SSランク以上は銀色でギルドマスターのみ金色だ。
「はい。お預かり致します」
俺が返事をすると肩に乗っていた二人が机へと飛び降りた。
タキトゥスがギルドカードを口に咥えて魔法陣の上に置き、オネストが巾着を尻尾で器用に掴んで俺の手元へと走って戻ってくる。
巾着を受け取り、手のひらサイズになったことで小さくなったオネストの頭を指の腹で撫でてから巾着の紐を解いて中身を取り出す。
緑色をした小鬼族の耳が二、四、六……十八。
全てが右耳の為、数=討伐数ということが見て取れる。
魔法陣に置かれたカードの上に手をかざし、ギルドカードに依頼内容と討伐数、報酬金額などを記録していると、側にいたタキトゥスが俺の腕を伝って肩へと戻ってきた。
オネストは机の上で行儀良くお座りをしている。
最初は大人しく肩に乗っていた二人だったのだが、この姿でもできる事を自分達なりに考え自主的に手伝ってくれており、隣で仕事をしている従業員が「そんな姿も可愛い」と話していた。
正直手伝ってもらうほどの事でもないけれど、手伝いたいという気持ちが嬉しいので任せてしまった。
本当は二人のトコトコと小股で歩く姿が可愛いからという理由なのだけれど、本人達には言わないでおこうと思う。
調子に乗りそうだから。
「小狼族の上位種ですか?」
「え?」
撫で回したい衝動を営業スマイルの下に隠していると、男が二人を交互に見ながら言った。
「あ、はい。怪我をしているところに遭遇しまして。どうやら私を気に入ってくれたようで」
「そうなんですね」
「えぇ。……あ、記録が完了したようです。ギルドカードとこちらはお返ししますね。ありがとうございました」
接客中の為、一人称を俺ではなく私に変えて話す。
もう少し会話をしたいというのが顔に現れていたが、あいにく後ろが詰まっている。
早々に話を切り上げお礼を言った。
名残惜しそうに立ち去っていく男。
その背を一瞬視界に移してから再び「お待たせ致しました!次の方どうぞー!」と口にする。
その繰り返し。
「次も俺がカード受け取るからな!」
「荷物は任せてくれ」
尻尾を振りながら次の冒険者が机の側にやってくるのを待つ二人。
「えぇ。お願いしますね」
今日で何度目かわからない“可愛い”を心の中で呟き、二人と同じように冒険者を待つ。
就業時間まであと少し。
お腹空いたなー……とも考えながら。
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