人間の俺は狼に抱かれている。

レイエンダ

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第三章 いざ、ロピック国へ

今日はここまで

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「オースティンはデレデレしてるし?ウンディーネ達はキスするし?気分さいっあく!」
「あの子と一緒にしないでくれる?私たち水の精霊にとって水付きは家族同然。キスぐらいするわ」

「口にすることないだろ!」
「親愛の印よ。水付きの君、この子犬いちいちうるさいわ」
「子犬じゃなくて狼だ!」



 消毒と称して手を舐めているタキトゥスが、合間にウンディーネと言い合いをしている。オネストは付き合ってられない、と無心で舌を動かしていた。

 ヴィリオスにいる時からウンディーネに声をかけられることが多かった。スゥもその内の一人。
 人魚さんが与えてくれた容姿に惹かれたか、“水に愛される者”という称号のお陰かと思っていた。
 称号と加護は別物。ついているのをつい先日知ったわけだけど、教えてくれればよかったのに。
 人魚さんったら照れ屋さん。



「わっ」



 心の中で呟いた瞬間、噴水から小さな水が飛んできた。
 ウンディーネかな?と視線を向ければ、「あらあら」とにこやかにこちらを見ている。
 転生以降はコンタクトなんて取ってこないだろうと思っていた。案外水を通してのこの世界を覗いているのかもしれない。



「この後、東の街へ行くのでしょう?」



 タキトゥスの顔面を小さな手で受け止めながら言う。
 消毒が終わったと同時に口だけでなくからだぜんたいでウンディーネにくってかかっていったのだ。

 水に落とされたり、かけられたり、今みたいに顔を押さえつけられたり。
 精霊にとって神獣であるフェンリルは尊い存在であるはずなのに、扱いが雑だ。
 オネストもタキトゥスも気にしてなさそうだけど、もしかしてフェンリルって気付いていないのかな。



「東の街……スムガルトはここからも宿へも遠いですす。今から行くと中途半端なので明日の方が良いかと」



 傍観していたエヴァンがようやく口を開いた。
 すぐにでも行きましょうと歩き出すと思っていたので意外だ。



「なんですか?」
「いや、意外だなと」
「失礼ですね」



 眉間に皺を寄せて見下ろしてくるエヴァン。すみません、と苦笑いするしかなかった。



「水付きの君。スムガルトは危険な所もあるわ。何かあればすぐ妹かこの二匹に頼りなさい」
「私もいます」
「貴方はただの道案内役でしょ?頼りにならないわ」
「なっ!」



 汚い言葉でもでそうになったのだろう。慌てて唇を噛み締め睨みつけている。心外だ!とでも言いたそうな顔だ。

 近衛兵の中でも一番の実力を持つ……とシンさんが言っていたはず。
 頼りにならない筈がないんだけど、ウンディーネは相当エヴァンが嫌いらしい。




「ウンディーネ、妹って?」




 仲裁に入ると余計ややこしくなる。そう思った俺は、別で気になったことを聞くことにした。

 精霊は精霊王の力を得た草木などの自然達によって生み落とされる。元を辿れば精霊王の力があってこその生。
 同じ親を持つ者という家族意識はもちろんあるが、他の種族のように兄弟という概念はないと文献には記載されていた。
 自由に生きる精霊は気の赴くままに世界を飛び回る。同じ場所に留まることもあれば、転々とする者もいる。
 兄弟という概念がないというよりは、自由が故に定める必要性がなかった……という所かな?



「あら、聞いてないのね。今はスゥ……という名をもらったんだったかしら?」
「え、スゥ!?スゥが妹なの?」

「たまたま一緒に生み落とされただけなんだけど……。あの子が他の種族がそう呼び合っているのを真似して言い出したの」
「君が姉?」

「私の方が先に目が覚めたの。あなた達の種族では、早い方が上なのでしょう?」



 タキトゥスの上に乗っがかりながら緩い口調で言う。
 神獣様がクッション代わりにされている。タキトゥス、いいのかそれで。




「ウンディーネと契約しているのか?」
「なーに?文句あんのー?」



 質問に答えようと唇を動かそうとしたが、呼んでもいないのにスゥが現れた。
 腰に手を当て、エヴァンの顔を睨みつけている。
 ウンディーネ……姉もそうだが、何でそんなにも喧嘩腰なんだ。



「文句はないが、」
「じゃあ黙ってなさいよ。ふんっ」



 よくない。よくないよそういう態度は。子供じゃないんだから。
 咎めるように視線を送れば、肩をすくめて姉の元へ飛んでいく。




「元気そうね」
「元気よ!ネロね、本当にカッコいいの」
「ええ、好きになるのもわかるわ」
「でしょー?」
「危ないと思ったら、わかっているわね?」
「はーい!ちゃんとお願いするよ!」



 互いの頬に手を添えて語る様はどこからどう見ても姉妹。
 青い肌は共通しているが、ウンディーネの顔立ちは他の種族のように個性豊かだ。
 可愛らしい顔立ちが多いが、切長でクールな雰囲気の者もいる。
 生まれた環境下で変わるのかは謎だ。本人達も特に気にしていないだろうし、見える人の方が少ないのだから解明されていないのも当然のこと。




「それじゃあ俺達はここで。行ける範囲の場所でスムガルトのオースティンを知っているか、ダメ元で聞いて回る」
「えぇ。良い結果になるよう、水の精霊王様に祈りを捧げるわ」
「ありがとう」
「気をつけてね、水付きの君」



 妹と抱擁を済ませたウンディーネが手を振って見送ってくれた。

 明日からはスムガルトへ足を運ぶ。
 期限は半分を切った。たが、テスト前日で偶に湧き上がる“意外といけんじゃね?”という謎の自信に近い感情を抱いていた。
 口にするとエヴァン怒られそうだから、絶対に言わないけどね。





ーーーーーーーーー

設定などは全てフィクションです。
神話によって色々と違ったりしますし、神や魔物、精霊など今後も出てきますが、個人の好みで採用しています。
別神話の神が出てきてもフィクションだからね、とあまり拘らずに見ていただければ幸いです。
今後ともよろしくお願いします。


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