私は三人の夫に溺愛されている。

第一章 お転婆娘

俺の嫁は獣に好かれる

「ヤッたら殺すぞ」
「わかってますよ。副隊長って何気に一途ですよね。ジャスミン様にぞっこん」


　視界の端に俺を写しながらも彼女から目を離そうとしない。
　こいつは危ない。
　本当に危ない。
　ジャスミンに近づくなと後で念を押しておかなければ。


「く、くすぐったい！っ、きゃああああああ！」
「副隊長。ジャスミン様がレイプされてます」


　思考を巡らせていた俺は、フォルティスの言葉で我に帰る。
　“レイプ”という単語が出てきたのだ。
　ここで反応しない夫などゴミ屑以下である。
　視線を向けると、襲われてると言えなくもない状況だった。
　どちらかと言えばじゃれあっているという表現が正しいだろう。


「舐めるのは反則！ちょ、待って！きゃああああああ！助けてラフマァァァァァ！」
「あ、逃げた」


　耐えかねたジャスミンはイアン達の輪から抜け出し、草原を駆け回る。
　王女の威厳なんてものは皆無だ。
　寧ろじゃじゃ馬娘といった方がいい。


「やはりジャスミン様はお美しい」
「本当だな。走る姿も可憐だ」


　そんなじゃじゃ馬娘が男達に人気なのは容姿もあるが、驕らない性格という部分が大きい。
　聖母マリアのような何もかも包んでくれそうな雰囲気が、この国の男達を虜にするのだろう。
　こんなにも魅力的な女性が妻なんて、今でも信じられない。
　運が良かったと言っても過言では無いだろう。
　もちろん努力はした。
　運だけで勝ち取れるものではなかったから。
　その結果、今の幸せがある。


「抱きてー……」
「抱けばいいじゃないですか」
「待つって決めたんだよ」


　気持ちは繋がっている。
　それは自惚れでも何でもない。
　彼女に会うまでに、いろんな女性を相手にしてきた俺の経験が物語っている。


「てことは、ジャスミン様はしょ、」
「それ以上言ったら殺す」


　自慢にはならないことだけど、ジャスミンと出会うための布石だったと考えればなんてことはない。
　どんな辛辣な言葉でも受け入れよう。


彼女が待ってほしいというのなら、

「待つよ。いつまでも」
「やっぱり一途ですね」

良いというまで待とうじゃないか。


　でもねジャスミン。
　これだけは知っていてほしい。


ーーー……おはようジャスミン。今日も美しいね。


　俺の口から発せられる言葉が嘘偽りではないということを。
　君は美しい。
　他の誰よりも。
　獣（イアンや男達）に好かれる、愛しい愛しい俺の嫁。