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第三章 狂い始め
俺はヒーローではない
しおりを挟む唐揚げうまいなーと呑気に食べている俺とは相反して、周りの者達は足を止め、手を止め、行く末を見守っている。
只ならぬ雰囲気に、料理人さえも動くことができずにいるようだった。
「唐揚げうますぎー」
「お前、空気読めよ」
正面に座っていた隼人に、呆れ顔で頭部を小突かれた。
そしてある一点をジッと見つめている。
俺の隣に座っている類も、隼人のとなりに座っている潤も、皆んな。
周囲を見渡すと緊張した表情をする者もいれば、憎悪を込めた鋭い視線を向けている者もいる。
後者の方が圧倒的に多い。
三人はどれにも当てはまらず、やれやれと呆れたような、面倒臭そうな表情。
食事をしたいが、この空気では食べられない。
ふざけんなよ。
そんな感情が滲み出ていた。
「むさっ苦しいマリモの癖に、いつまで蓮夜様達の周りをウロチョロするつもり?調子に乗らないでよね。」
男性にしては高く、声変わりをしていないのではないかと一瞬考えてしまいそうな声。
刺々しく、敵意むき出しの声色に、何が起こっているのかを察した。
そして俺が常々思っていた“マリモ”という単語を、面と向かって本人に口にしている勇者を一目見ようと、騒ぎの中心である方向へ目を向ける。
立っている人間は巻き込まれないように壁側へ。
既に座って食事をしていたものは、俺たち同様、大人しく座っている。
一番後ろの窓側。
生徒会と風紀委員が座るというのが暗黙の了解となっている。
しかし、その一角にマリモは腰掛けていて。
傍らには同じぐらい小柄で猫っ毛の可愛らしい男が立っていた。
マリモが転校してくるまでは、よく蓮夜が相手をしていた親衛隊の一人。
親衛隊隊長、副隊長に続いて三番目の地位だったと記憶している。
自分の所ならまだしも、他人の親衛隊メンバーなので名前まではわからないが、喋り方や態度からして嫉妬深そうな印象を受けたのは確かだ。
「黙ってないでこっち向けよマリモ野郎!」
ガンッ!と鈍い音がした。
それも一度ではなく、二度。
親衛隊の子がマリモの座る椅子と机を蹴ったのだ。
目障りなぐらい一緒にいた三人の姿を探したが、どこにも見当たらず。
なぜこんな人の多いところに一人でいるのか。
不思議で仕方がなかった。
「ていうか、ここは生徒会や風紀委員の皆様が座る席なの。なんでお前みたいなマリモ野郎が座ってるわけ?さっさと退けよブス」
「蓮夜達に窓側の席で座って待っているように言われました。許可は頂いてます」
俺の疑問は当人達のやり取りによって自然と解決し、興味は削がれた。
さくらが進めてきた携帯小説によれば、こういう状況では誰かが助けに入るのが王道。
それは基本的にマリモに惚れている生徒会のメンバーだったり、風紀委員だったり様々。
好意を全く抱いていない俺のような人間が出る幕ではない。
マリモを溺愛している三人の内の誰かが登場し、この最悪な雰囲気を取っ払ってくれないものか。
空気を読んで止めていた手を動かしながら、ぼけーっと二人を見つめる。
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