銀獣-王道BLを傍観するつもりが巻き込まれました-【本編完結。SS公開予定】

レイエンダ

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第三章 狂い始め

大好物は定番のアレ




 着替えを済ませた俺たち四人は、食堂へと向かっていた。
 学生証は電子マネー機能も付いており、三人はそれだけしか持っていない為、身軽だ。
 そして、散々“弁当だから”と言っていた俺は手ぶら。
 太一に食堂で食べると伝えたところ、教室に行くより近いので、直接持っていくと返信が来た。


「お、強面執事さん発見」
「それさー、本人に行ってみたら?」
「殺されそうな気がする」
「見た目はこえーけど、人懐っこい奴だぞー。意外と」


 食堂の入り口で、壁に寄りかかることなく、背筋を伸ばして立っている太一。
 暖かくなっていたというのに、着崩すことなく完璧にスーツを着こなし、手には不釣り合いなランチバッグが。
 視線は俺たちの方ではなく、近くにある庭園へと向けられていた。
 周りが「かっこいい!」と騒いでいるのを気に留める様子もなく、ただ一点を見つめて微動だにしない。


「生きてるよな?」
「瞬きしてんじゃーん。隼人くんはおバカなのかな?」


 隼人とそんなやりとりをしながらも足を進める。
 すると俺の声に気づいたのか、ゆっくりとこちらに顔を向けた。


「春都様お疲れ様です。お弁当をお持ちいたしました」


 背筋を伸ばしたまま頭を下げ、両手でランチバッグを差し出す。
 チャックがしてあるというのに、僅かに香る匂い。
 鼻を近づけクンクンと匂いを嗅いでは、顔をほころばせる。

 今日は唐揚げだな。
 しかも揚げたて。

 ニヤニヤが止まらない俺は、「サンキュー」とお礼を言ってから受け取る。
 その表情を待っていたと言わんばかりに、太一は柔らかく微笑んだ。


「あ、そうそう。親父から大量に仕事のメール来てたはずだから、フォルダ振り分けといてー」
「かしこまりました。午後の授業も頑張ってくださいね」
「はいよーん」


 再び頭を下げた太一。
 話が終わったのを感じ取ったのか、静かに食堂へと入っていく三人。
 その後に俺も続いた。
 太一とすれ違い様、ワックスでガチガチに固められた頭をポンポンと叩く。
 “唐揚げ、ありがとう”という意味を込めて。


「強面執事さんの笑顔、破壊力抜群だった」
「それなー。ギャップ萌え」


 四限が体育だったこともあり、一足遅れた俺達は席を探していた。
 キョロキョロと辺りを回しながらも、話題に出るのは弁当を届けに来た太一のことで。
 噂されるだけあって人気だなーと、右から左に話を聞き流す。


「席、みーっけ」
「まじか。さすが春都。でけーだけあるな」


 空いている席を目指して足を進める。
 俺の存在に気付いた生徒達が黄色い声を出しながらも、ぶつからないように道を開けていく。
 感謝を込めて笑顔で左右に手を振ると、悲鳴のようなものが上がり、騒がしくなる。


「相変わらず人気だな、お前」


 注文を終え、料理を持って戻ってきた三人。
 周りを見渡してから最終的に俺の方を向き、そう口にした。
 何を今更言っているんだ?と思わなくもないが、ニヒッと笑って適当に流す。

 前にも言ったが、俺は抱かれたい男No. 1。
 周りの視線に気づかないほど無自覚ではないし、鈍感でもない。

 ランチバッグから取り出した弁当からは美味しい匂いがしており、よだれが垂れないように気をつけながら蓋をあける。
 箸を取り出して「いただきます」と口にし、食べ進めていく。

 のんびり食べてて仕事は大丈夫なのかって?
 大丈夫なわけないだろ。
 政宗が手伝ってはいるものの、体育祭前でやること多くて死にそうだよ。
 クソ野郎共は簡単で時間がかからない書類すらもやらなくなったし、政宗が注意しても聞く耳持たずだし。
 彼らは俺を過労死させる気なのかな?
 思い出しただけでイライラしてきたわ。

「チャラ男がリスになったかと思えば、修羅の顔に……」
「ほんとだ。こわっ」
「やっぱ銀髪見慣れねーわ」


 貧乏ゆすりを開始した俺と、思ったことをそれぞれ口にした三人。
 すると、騒がしかった食堂が一瞬にして静まり返った。
 自分に向けられていた視線が別の方向に向いたことを察知した俺。
 なんかあったんかなー、と呑気に考えながら次々と唐揚げを食す。
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