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第二章
【8】その猫さん、凶悪につき
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エルトゥールの触れたところに炎が巻き起こり、男の拳から袖にかけて燃え上がる。
「う……わああああああ」
悲鳴。怒号。
何が起きたかわからない周囲から、なんだなんだと声が飛び交う。
ざわめきの中、エルトゥールは「リズさん、下がっていてください」と肩越しに振り返ってすばやく声をかけた。
「……魔法」
目を大きく見開いていたリーズロッテは掠れた声で呟いた。
唇の動きでその言葉を聞き取り、エルトゥールは小さく微笑む。
すぐに前に向き直り、悲鳴を上げている男とその仲間たちに不敵な視線を投げかけた。
「何を騒いでいるか知りませんが、前後不覚になるほど酔うのは、お酒の飲み方としてどうかと思います。お帰りはあちらですよ」
「あ……?」
炎はすでに消えている。袖は元通り、火傷の気配もなく。幻。
エルトゥールの使えるごく弱い魔法。対象者に幻を見せただけで、自分も効果を視認できるが、周りには何が起きたか見えていない。
持続時間も短い。
とはいえ、本人はその間実際の熱や痛みを感じる為、はったりとしての威力はそこそこにある。
(さすがリーズロッテさんは聖女さまだけあって、私の魔法が見えたのかな。後で話をしてみた方が良さそう)
「店員のくせに、客に対する態度がなってないな。新人か?」
魔法を受けた男の背後から、剃り上げた側頭部に刺青の入った大男がぐいっと前に進み出てきて、エルトゥールの前に立った。
幻が見えず、何が起きたかわからないだけに、エルトゥールのことを脅威として警戒している素振りはない。
まるで獲物を見つけたとばかりの、嗜虐的な笑みを浮かべて舌なめずりをしている。
「新人と言えば新人ですが、仕事に対しての矜持はあります。迷惑行為を見過ごすつもりはありません」
(ここまで体格差もあると、さすがに手に余りそうです。私は喧嘩が強いわけでもありませんし。どうしましょう)
明らかに酔っ払いだった先の男と違い、見るからに隙がない。
護身術のようなものは多少身に着けているエルトゥールであるが、今は武器があるわけでもないのだ。魔法も、連続して何度も使えない。使えたとしても、幻が付け入る隙がない相手の場合、精神力で弾かれてしまえば効果は期待できない。
困った、という一瞬の弱気は顔に出たらしく、相手の笑みが深まる。
「気が強いところは好みだが、困った顔も良いな。お嬢ちゃん、遊ぼうか」
「私は男です。お嬢ちゃんではありません」
「その見た目で? ま、それはそれで楽しめそうだ」
負けていられないと睨みつけたエルトゥールを鼻で笑い、男は手を伸ばしてきた。
(速い!)
今度こそ、避けきれないと身をすくませたその瞬間、目の前に黒いシャツを着た背の高い人影が体をねじ込んできて、男の繰り出してきた腕を掴む。
踏み込んできた勢いのまま横に受け流し、鮮やかに床に投げ飛ばした。
「だから! ここは食事をするところで喧嘩する場所じゃねえって言ってんだろうが! お前ら全員客じゃねえよ」
背中が広くて、大きくて。
塞がれてしまうと、前が見えない。
(アーノルド様! 普段並んでいるときは、そこまで意識しないですむのに。いくら私が男の人のふりをしても、全然違うと、このひとには気付かされてしまう……)
「この店の店員は、客をなんだと思っているんだ!」
「客じゃねえって言ったばかりだ。失せろ。それとも全員怪我をしたいのか。いいぜ」
負けない。
その気持ちが声に溢れている。力強くて、揺るがない。
(だけど、アル。人数が多い。ひとりでこれは無理。他の店員は……! 誰か!)
助けを求めようと振り返ったところで、背後から近づいてきていた男が、リーズロッテを軽々と抱き上げているのを目撃してしまった。細い手足がばたついているが、びくともしない。
「やだ! たすけて!」
「何をしているんですか!? その子を離してください!!」
咄嗟に腕を伸ばしたエルトゥールは、強く払われて床に転がりこんだ。
「エル!」
気付いたアーノルドが声をかけてくるが、そのアーノルドにも他の男が殴り掛かっていて、そちらにやり返すことになっている。エルトゥールのそばまで、すぐに駆けつけることは出来ない。
「やだ、はなして、たすけてっ」
リーズロッテの高い悲鳴が耳につき、エルトゥールは軋んで痛む体の叫びを無視して立ち上がる。
ひとさらいの男は、他の仲間はどうでもいいのか、それとも別口だったのか、背を向けて入口に向けて走り出していた。
いけない、とエルトゥールは駆けだすも、足にずきりとした痛みを感じて動きが鈍った。
「リズ、さん……!」
(ジャスティーン様、マクシミリアンさん、はやく……!!)
強く願ったそのとき、入口からふらりと背の高い、一人客が入ってきた。
暗い色のローブをまとい、フードを目深にかぶっている。
エルトゥールの視線の先で、ローブの人物はちょうどすれ違う位置にいた男に手を伸ばして、掌で触れた。
瞬間的に、莫大な光が弾けた。
強すぎる光。けれど、太陽のように目を射ることのないそれは、魔法によるもの。
「ぎゃあああああああああ」
悲鳴が、男の喉から迸り出る。
ローブの人物は、何も聞こえていないかのように泰然と落ち着いた仕草で、男の腕からリーズロッテを取り上げた。
そのまま、床に置こうとして、思い直したように抱きかかえる。
(ん……!? 新たな誘拐犯!? しかも、魔法使い!?)
だったらもう、対処どころではないのですが、と顔を強張らせたエルトゥールだったが、ローブの人物はすたすたと店内を横切り、騒動の渦中、カウンター席の方まで歩いてきた。
リーズロッテを抱いたまま、フードの影からすっと視線をすべらせた気配。
丁寧な仕草でリーズロッテを床に下ろすと、フードをはだけた。
鋭く研ぎ澄まされた、凄絶な美貌があらわになる。
「三秒以内に出て行かないと全員殺す。ちなみに俺は殺したいので、出て行かないことをすすめる。一」
(三秒、短っ)
「二」
薄暗い店内でも、青年の姿はよく見えた。
黒っぽい艶やかな髪。切れ長の瞳に、すらりとした鼻梁。形の良い唇。凶暴な言葉が似合いに感じられるほど、邪悪なまでに美しい。
「三。よし、全員死ね」
宣言の瞬間、「待って、店員さんは殺さないで」とリーズロッテが体を張って男の足にしがみつき、訴える。
(う……うん? 「全員」に店員も他のお客様も含まれていたの!? ありがとう、リズさん! すごく危ないところだったみたいですね!? なんだろう、この怖いひと……)
ああ? と極めて柄の悪さを感じさせる態度でリーズロッテに聞き返してから、青年はすうっと視線を流してきた。
アーノルドを見てから、エルトゥールを見て、そのまましばらく止まる。目が合っている間、ぞくぞくとした寒気を感じた。それほどの、圧倒的な美形。ジャスティーンも造形としては完璧だと思っていたが、それとはまた別種の何か。
(隠し味に暗黒を添えて! 禍々しさとともに!)
明らかにひとならざる何か。
青年は「ああ」と低い声をもらした。
「お前らは飯係だな。殺さない」
「飯係……?」
思わず呟いたエルトゥールに、青年はふっと笑みを漏らして言った。
「俺だよ、俺。もしかしてわかってねえのか? 猫だよ。お前らの言うところの。それで、誰を殺せばいいんだ? 手元が狂うと殺し過ぎるから指示は正確にな」
猫。
もしかしてもしかすると、と冷や汗を流しながらアーノルドに目を向けると、エルトゥールとほとんど同じような反応をしているアーノルドと目が合った。
やや緊張した様子で、アーノルドが呟く。
「ジェラさん……」
「う……わああああああ」
悲鳴。怒号。
何が起きたかわからない周囲から、なんだなんだと声が飛び交う。
ざわめきの中、エルトゥールは「リズさん、下がっていてください」と肩越しに振り返ってすばやく声をかけた。
「……魔法」
目を大きく見開いていたリーズロッテは掠れた声で呟いた。
唇の動きでその言葉を聞き取り、エルトゥールは小さく微笑む。
すぐに前に向き直り、悲鳴を上げている男とその仲間たちに不敵な視線を投げかけた。
「何を騒いでいるか知りませんが、前後不覚になるほど酔うのは、お酒の飲み方としてどうかと思います。お帰りはあちらですよ」
「あ……?」
炎はすでに消えている。袖は元通り、火傷の気配もなく。幻。
エルトゥールの使えるごく弱い魔法。対象者に幻を見せただけで、自分も効果を視認できるが、周りには何が起きたか見えていない。
持続時間も短い。
とはいえ、本人はその間実際の熱や痛みを感じる為、はったりとしての威力はそこそこにある。
(さすがリーズロッテさんは聖女さまだけあって、私の魔法が見えたのかな。後で話をしてみた方が良さそう)
「店員のくせに、客に対する態度がなってないな。新人か?」
魔法を受けた男の背後から、剃り上げた側頭部に刺青の入った大男がぐいっと前に進み出てきて、エルトゥールの前に立った。
幻が見えず、何が起きたかわからないだけに、エルトゥールのことを脅威として警戒している素振りはない。
まるで獲物を見つけたとばかりの、嗜虐的な笑みを浮かべて舌なめずりをしている。
「新人と言えば新人ですが、仕事に対しての矜持はあります。迷惑行為を見過ごすつもりはありません」
(ここまで体格差もあると、さすがに手に余りそうです。私は喧嘩が強いわけでもありませんし。どうしましょう)
明らかに酔っ払いだった先の男と違い、見るからに隙がない。
護身術のようなものは多少身に着けているエルトゥールであるが、今は武器があるわけでもないのだ。魔法も、連続して何度も使えない。使えたとしても、幻が付け入る隙がない相手の場合、精神力で弾かれてしまえば効果は期待できない。
困った、という一瞬の弱気は顔に出たらしく、相手の笑みが深まる。
「気が強いところは好みだが、困った顔も良いな。お嬢ちゃん、遊ぼうか」
「私は男です。お嬢ちゃんではありません」
「その見た目で? ま、それはそれで楽しめそうだ」
負けていられないと睨みつけたエルトゥールを鼻で笑い、男は手を伸ばしてきた。
(速い!)
今度こそ、避けきれないと身をすくませたその瞬間、目の前に黒いシャツを着た背の高い人影が体をねじ込んできて、男の繰り出してきた腕を掴む。
踏み込んできた勢いのまま横に受け流し、鮮やかに床に投げ飛ばした。
「だから! ここは食事をするところで喧嘩する場所じゃねえって言ってんだろうが! お前ら全員客じゃねえよ」
背中が広くて、大きくて。
塞がれてしまうと、前が見えない。
(アーノルド様! 普段並んでいるときは、そこまで意識しないですむのに。いくら私が男の人のふりをしても、全然違うと、このひとには気付かされてしまう……)
「この店の店員は、客をなんだと思っているんだ!」
「客じゃねえって言ったばかりだ。失せろ。それとも全員怪我をしたいのか。いいぜ」
負けない。
その気持ちが声に溢れている。力強くて、揺るがない。
(だけど、アル。人数が多い。ひとりでこれは無理。他の店員は……! 誰か!)
助けを求めようと振り返ったところで、背後から近づいてきていた男が、リーズロッテを軽々と抱き上げているのを目撃してしまった。細い手足がばたついているが、びくともしない。
「やだ! たすけて!」
「何をしているんですか!? その子を離してください!!」
咄嗟に腕を伸ばしたエルトゥールは、強く払われて床に転がりこんだ。
「エル!」
気付いたアーノルドが声をかけてくるが、そのアーノルドにも他の男が殴り掛かっていて、そちらにやり返すことになっている。エルトゥールのそばまで、すぐに駆けつけることは出来ない。
「やだ、はなして、たすけてっ」
リーズロッテの高い悲鳴が耳につき、エルトゥールは軋んで痛む体の叫びを無視して立ち上がる。
ひとさらいの男は、他の仲間はどうでもいいのか、それとも別口だったのか、背を向けて入口に向けて走り出していた。
いけない、とエルトゥールは駆けだすも、足にずきりとした痛みを感じて動きが鈍った。
「リズ、さん……!」
(ジャスティーン様、マクシミリアンさん、はやく……!!)
強く願ったそのとき、入口からふらりと背の高い、一人客が入ってきた。
暗い色のローブをまとい、フードを目深にかぶっている。
エルトゥールの視線の先で、ローブの人物はちょうどすれ違う位置にいた男に手を伸ばして、掌で触れた。
瞬間的に、莫大な光が弾けた。
強すぎる光。けれど、太陽のように目を射ることのないそれは、魔法によるもの。
「ぎゃあああああああああ」
悲鳴が、男の喉から迸り出る。
ローブの人物は、何も聞こえていないかのように泰然と落ち着いた仕草で、男の腕からリーズロッテを取り上げた。
そのまま、床に置こうとして、思い直したように抱きかかえる。
(ん……!? 新たな誘拐犯!? しかも、魔法使い!?)
だったらもう、対処どころではないのですが、と顔を強張らせたエルトゥールだったが、ローブの人物はすたすたと店内を横切り、騒動の渦中、カウンター席の方まで歩いてきた。
リーズロッテを抱いたまま、フードの影からすっと視線をすべらせた気配。
丁寧な仕草でリーズロッテを床に下ろすと、フードをはだけた。
鋭く研ぎ澄まされた、凄絶な美貌があらわになる。
「三秒以内に出て行かないと全員殺す。ちなみに俺は殺したいので、出て行かないことをすすめる。一」
(三秒、短っ)
「二」
薄暗い店内でも、青年の姿はよく見えた。
黒っぽい艶やかな髪。切れ長の瞳に、すらりとした鼻梁。形の良い唇。凶暴な言葉が似合いに感じられるほど、邪悪なまでに美しい。
「三。よし、全員死ね」
宣言の瞬間、「待って、店員さんは殺さないで」とリーズロッテが体を張って男の足にしがみつき、訴える。
(う……うん? 「全員」に店員も他のお客様も含まれていたの!? ありがとう、リズさん! すごく危ないところだったみたいですね!? なんだろう、この怖いひと……)
ああ? と極めて柄の悪さを感じさせる態度でリーズロッテに聞き返してから、青年はすうっと視線を流してきた。
アーノルドを見てから、エルトゥールを見て、そのまましばらく止まる。目が合っている間、ぞくぞくとした寒気を感じた。それほどの、圧倒的な美形。ジャスティーンも造形としては完璧だと思っていたが、それとはまた別種の何か。
(隠し味に暗黒を添えて! 禍々しさとともに!)
明らかにひとならざる何か。
青年は「ああ」と低い声をもらした。
「お前らは飯係だな。殺さない」
「飯係……?」
思わず呟いたエルトゥールに、青年はふっと笑みを漏らして言った。
「俺だよ、俺。もしかしてわかってねえのか? 猫だよ。お前らの言うところの。それで、誰を殺せばいいんだ? 手元が狂うと殺し過ぎるから指示は正確にな」
猫。
もしかしてもしかすると、と冷や汗を流しながらアーノルドに目を向けると、エルトゥールとほとんど同じような反応をしているアーノルドと目が合った。
やや緊張した様子で、アーノルドが呟く。
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