身分違いの恋を、演じましょう

有沢真尋

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生涯ただひとり、あなただけを(2)

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 ポルペルカ記念劇場にて。
 エドワルト作、「愛と野望のオフィーリア」公演、最終日。

 前日のいざこざを吹き飛ばす、とんでもないニュースが街中を駆け巡り、満員御礼、大盛況にて舞台の幕は上がる。
 急病の役者にかわり、舞台で主演をつとめたのは、この国の第二王女ユスティアナ。
 役者風情と言われ続けた平民たちの世界に、突如として舞い降りた姫君の芝居は、「貴人のお遊戯」などという前評判をおおいに覆す。華やかな立ち回り、胸を撃ち抜くセリフ、恋に悶え苦しむその姿は往年の名役者に劣らぬ迫真の演技そのもので、万雷の拍手喝采のうちに舞台は幕を下ろした。
 観客たちの多くは「やはり、愛する者同士が結ばれるハッピーエンドは素晴らしい」と言い合って帰途についたという。
(※芝居の筋立てが、大変な身分差を乗り越えるという内容だっただけに、若干の賛「否」感想もあったが、それがまた長いこと人々の間での語り草となる)

 身分差を――物語は、この国によく似た国の姫君とその従者の、無謀とも思える恋模様を描いていた。

 ユスティアナ王女は実に「姫君」の役を優雅に演じきったが、従者役の青年の好演が引き立てたのも揺るぎない事実。
 二人が互いに向けるそのまなざし、声。
 そこにはまるで、本当の恋があるかのようであった、と皆が口を揃えて言う。


 ――オフィーリアさま。この命、あなたに捧げます。生涯ただひとり、あなただけが我が主
 ――クロード。ああ、あなたはなぜクロードなの。どれほどの愛があっても、私とあなたを阻む壁がある。身分というこの忌まわしき……
 ――壁など

 身分の壁を打ち破る熱い演技で観衆を魅了した二人は、その後実生活でも様々な出来事を乗り越え、ついには結婚を発表する。
 演劇好きの姫君と、若き劇作家。
 やがて老いて死が二人を分かつ瞬間まで、演劇の話ばかりをしてよく笑い、睦まじく暮らしたという。
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