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【第四章】
さわるな危険
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「今日は姿を見かけないと思ったら、そこにいたんだ。駄猫」
ジャスティーンの攻撃的なひとことに、ひゅっとリーズロッテは呼吸を止めた。
青年姿のジェラさんはにこっと笑うと、テーブルに腰を預けて上半身を倒し、ジャスティーンの顔を至近距離からのぞきこむ。
「どこに目ぇつけてんだ。よく見ろ、俺様の顔を。猫じゃねぇぞ猫じゃ」
たしかに、猫、ではない。
鮮烈すぎる美貌の持ち主。ひとめで人ならざるものと知れる。問題は、人外であるとして、その正体は神か悪魔か。
(ジェラさんは自称「聖獣」なのに、ガラが悪いから……。聖性より獣性のほうが強くて。猫のときならともかく)
リーズロッテは、ちらっと目の前のローブ姿の青年を見やる。視線に気づいたジェラさんが、さっと顔を向けてきた。
「はぁい、リズ。なんの相談? ねえねえ俺もここにいて良い?」
首を傾げて、にこにこと笑いながら問いかけてくる。口元に牙がのぞいたように見えたが、おそらく錯覚だ。猫ではない、いまは人間なのだから。
「ふ、服……服が必要という話を。あのね、わたくし、外に出られないでしょ?」
パチン、とジェラさんは指を鳴らして、微笑みつつも迷惑そうな態度を隠しもしないジャスティーンに向かって言った。
「最ッ高にかわいいやつ。リズは何を着てもかわいいと思うけど、俺はすげえかわいいのがいい。似合うと思う。見てみたい」
「欲望に忠実だな。さすが『破壊された塔』にして『さまよえる星』。『永遠の闇と暗黒』とともに在る者」
さらり、とジャスティーンが不穏な呟きをもらした。
それは、意味がわからないなりにリーズロッテも聞き覚えのある言葉だったので、思わず口をはさむ。
「それ、ジェラさんの……。とても聖獣の呼び名とは思えないの、いったいどういう意味?」
「知りたいの?」
大変良い笑顔のジャスティーンに聞かれて、リーズロッテは「うぅ」と呻き声をもらすにとどめた。
(圧がすごい。絶対に何かものすごいいわれがある……!)
横で聞いていたアーノルドとマクシミリアンが「あの猫、否定しなかったな」「やっぱり、そうなんですね」と不穏な会話をしている。
聞きとがめたジェラさんが「おい、猫じゃねえぞ」と絡みはじめた。問題は猫か否かではなくさまよえる暗黒かどうかの方だ。
そのジェラさんを爽やかに無視して、ジャスティーンがリーズロッテに向かって言う。
「わかった、今日はもう予定が無いならこのまま服を揃えに行こう。この駄猫のそばにリズを置いておくのはすごく心配なんだけど、駄猫のそばがリズにとっては一番安全だから引き離せない、このジレンマ」
「猫ねこうるせえな。にゃあにゃあ鳴くぞ」
「鳴いてごらん」
「にゃあ」
続いて、ジャスティーンが手を差し出し「お手」と言う。よくわからない様子で、ジェラさんは手をその手にのせた。
かたや性別不詳の麗人、かたや顔面凶器レベルの美青年。
二人が手に手を取り合っている光景は、その顔に耐性のできつつあるリーズロッテでさえ「まぶしい」と目を細めるほどの神々しさだった。
はっと気配に気づいて背後を振り返ると、遠巻きに見ていた生徒たちが男女問わず硬直したり、ふらついたりしている。
「し、失神しているひとが出ているので、やめてください!」
思わずリーズロッテが止めたのと、アーノルドがそこに手を割り込ませて苦言を呈したのが同時。
「仮にもジャスティーンは、いまのところ俺の婚約者なわけで……。見た目が猫じゃない相手と手に手を取り合うのは誤解を招きかねない光景だから、やめるように」
言われたジャスティーンは、全然悪びれない様子でふきだして言った。
「いや、ジェラさん思った以上にのせられやすい性格みたいで。お手って言われて、お手しちゃうんだからかわいいよね。あ~面白かった。このくらい単純馬鹿ならリズでも御せるかな」
「……なに、俺、いま意味なく芸させられただけなのか? 終末の魔導士なのに?」
ジェラさん、怒り出す五秒前。
(絶対、建物を焼き尽くすとか、お前の臓腑を引きずり出してやるとか言い出す!!)
危ない空気を感じて、リーズロッテは素早く席を立った。
「い、いきましょう! 明日と言わず今日行けます、早速行きましょう! 楽しみです! ね、ジェラさん!!」
たったそれだけ、リーズロッテに声をかけられただけで相好を崩したジェラさんは、蕩けるような甘い笑みを浮かべて頷いた。
「うん。行こう。俺は、いまよりももっともっとかわいいリズが見たい」
ジャスティーンの攻撃的なひとことに、ひゅっとリーズロッテは呼吸を止めた。
青年姿のジェラさんはにこっと笑うと、テーブルに腰を預けて上半身を倒し、ジャスティーンの顔を至近距離からのぞきこむ。
「どこに目ぇつけてんだ。よく見ろ、俺様の顔を。猫じゃねぇぞ猫じゃ」
たしかに、猫、ではない。
鮮烈すぎる美貌の持ち主。ひとめで人ならざるものと知れる。問題は、人外であるとして、その正体は神か悪魔か。
(ジェラさんは自称「聖獣」なのに、ガラが悪いから……。聖性より獣性のほうが強くて。猫のときならともかく)
リーズロッテは、ちらっと目の前のローブ姿の青年を見やる。視線に気づいたジェラさんが、さっと顔を向けてきた。
「はぁい、リズ。なんの相談? ねえねえ俺もここにいて良い?」
首を傾げて、にこにこと笑いながら問いかけてくる。口元に牙がのぞいたように見えたが、おそらく錯覚だ。猫ではない、いまは人間なのだから。
「ふ、服……服が必要という話を。あのね、わたくし、外に出られないでしょ?」
パチン、とジェラさんは指を鳴らして、微笑みつつも迷惑そうな態度を隠しもしないジャスティーンに向かって言った。
「最ッ高にかわいいやつ。リズは何を着てもかわいいと思うけど、俺はすげえかわいいのがいい。似合うと思う。見てみたい」
「欲望に忠実だな。さすが『破壊された塔』にして『さまよえる星』。『永遠の闇と暗黒』とともに在る者」
さらり、とジャスティーンが不穏な呟きをもらした。
それは、意味がわからないなりにリーズロッテも聞き覚えのある言葉だったので、思わず口をはさむ。
「それ、ジェラさんの……。とても聖獣の呼び名とは思えないの、いったいどういう意味?」
「知りたいの?」
大変良い笑顔のジャスティーンに聞かれて、リーズロッテは「うぅ」と呻き声をもらすにとどめた。
(圧がすごい。絶対に何かものすごいいわれがある……!)
横で聞いていたアーノルドとマクシミリアンが「あの猫、否定しなかったな」「やっぱり、そうなんですね」と不穏な会話をしている。
聞きとがめたジェラさんが「おい、猫じゃねえぞ」と絡みはじめた。問題は猫か否かではなくさまよえる暗黒かどうかの方だ。
そのジェラさんを爽やかに無視して、ジャスティーンがリーズロッテに向かって言う。
「わかった、今日はもう予定が無いならこのまま服を揃えに行こう。この駄猫のそばにリズを置いておくのはすごく心配なんだけど、駄猫のそばがリズにとっては一番安全だから引き離せない、このジレンマ」
「猫ねこうるせえな。にゃあにゃあ鳴くぞ」
「鳴いてごらん」
「にゃあ」
続いて、ジャスティーンが手を差し出し「お手」と言う。よくわからない様子で、ジェラさんは手をその手にのせた。
かたや性別不詳の麗人、かたや顔面凶器レベルの美青年。
二人が手に手を取り合っている光景は、その顔に耐性のできつつあるリーズロッテでさえ「まぶしい」と目を細めるほどの神々しさだった。
はっと気配に気づいて背後を振り返ると、遠巻きに見ていた生徒たちが男女問わず硬直したり、ふらついたりしている。
「し、失神しているひとが出ているので、やめてください!」
思わずリーズロッテが止めたのと、アーノルドがそこに手を割り込ませて苦言を呈したのが同時。
「仮にもジャスティーンは、いまのところ俺の婚約者なわけで……。見た目が猫じゃない相手と手に手を取り合うのは誤解を招きかねない光景だから、やめるように」
言われたジャスティーンは、全然悪びれない様子でふきだして言った。
「いや、ジェラさん思った以上にのせられやすい性格みたいで。お手って言われて、お手しちゃうんだからかわいいよね。あ~面白かった。このくらい単純馬鹿ならリズでも御せるかな」
「……なに、俺、いま意味なく芸させられただけなのか? 終末の魔導士なのに?」
ジェラさん、怒り出す五秒前。
(絶対、建物を焼き尽くすとか、お前の臓腑を引きずり出してやるとか言い出す!!)
危ない空気を感じて、リーズロッテは素早く席を立った。
「い、いきましょう! 明日と言わず今日行けます、早速行きましょう! 楽しみです! ね、ジェラさん!!」
たったそれだけ、リーズロッテに声をかけられただけで相好を崩したジェラさんは、蕩けるような甘い笑みを浮かべて頷いた。
「うん。行こう。俺は、いまよりももっともっとかわいいリズが見たい」
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