【R18】愚かな旦那様~やり直しの初夜は遠い夢~

ともどーも

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2話

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 庭園の東屋近くに彼女は立っていた。
 クリーム色のドレスを着て、チェックのブランケットを羽織っている。
 侍女長のカミラと談笑しながら花を摘んでいた。

「おはよう、エリー」
「リューベック様?!おっ、おはようございます」
 俺の突然の登場に驚く彼女。
「エリー」
 目で催促する。
「りゅ、リュー…。おはよう」
 そう、彼女はなかなか俺を愛称で呼んでくれないし、敬語も抜けない。
 言い直す彼女は真っ赤な顔をうつむかせるから、憎めないんだよな。
 可愛くて仕方がない。

「早いですね」
「君もね」

 二人の甘い時間。
 カミラは気をきかせてか、いつの間にか居なくなっていた。
 さすがだな。

「少し歩こうか」
 手をさしのべると、彼女はおずおずと手を添えてくる。
 よそよそしく感じるが、彼女の初初しさに胸が熱くなる。
 このまま手を引き、抱き締め、キスをして、その唇を舌で犯してしまいたい。
 今もほんのり赤くする頬を、惚けるような淫らで艶かしい顔に変えてみたい。
 思わず添える手を強く握ってしまう。

「リュー?」
 はっ!とした。
 俺は何を考えているんだ。
 彼女は男女の営みには慣れていないのだ。そんなことをしたら嫌われてしまう。それは自分の望むものではない。
 彼女を大切にしたい。
 嫌がることなどしたくない。
 犯して貪るのではなく、愛し合いたいのだ。誰でもない、彼女と。

 初めては慎重に、それでいて彼女をとろけさせ、俺無しではいられないように…。

 あぁ!
 朝の夢のせいで思考がおかしくなる。

「無理しないで下さいね。リューが倒れないか心配です」
 下から見上げる彼女の顔が輝いて見える。
「あっ…。あぁ、大丈夫だよ。こんなのいつもの事だから心配ない。君こそ、学園の方はどうだい?順調だと報告は受けているが、困ったことはないかい?」
「はい、ご心配ありがとうございます。アリシアや、恩師ともやり取りをして少しずつですが形になってきましたわ」
 彼女の嬉しそうな顔で胸がいっぱいだ。
 さっきまでの邪な考えが浄化される。

 朝食までの間、彼女と和やかな朝の散策を楽しんだ。

 あぁ~、幸せだ🎵

 朝食後の仕事もサクサク進み、早く終わればエリーゼの学園に視察に行くのも悪くないし、彼女の時間が良ければデートに誘うのはどうだろうか。
 ルンルン気分で最後の報告書に目を通した。それは領地の新しく雇用した従業員の調査報告書だ。

 あぁ…。ルンルン気分が台無しだ。

 雇用した従業員の一人に、手癖が悪いやつがいるようだ。
 しかも、どこかの伯爵の差し金らしい。
 いい噂を聴かない男ベンジブローグ伯爵。元ローベンシュタイン子爵を小飼にしていた腐った男だ。

 俺の目的はあくまでハロルドの復讐。
 貴族社会の悪を暴きたい訳じゃない。
 だが、降りかかる火の粉は払わなければならない。
 相手がやる気なら、遠慮はしない。

 早速ラムダルに連絡をとる。
 少し調べればホコリは山ほど出るだろう。
 しかし、しばらく領地に戻って事態を収集しなくてはならない。
 またエリーゼと離れるのかと思うと辛い。

 せめて初夜のやり直しが終わってから問題が起きてほしかった。いや、問題が起きないに越したことはないが、タイミングが悪い。

 コンコン。
 ドアをノックする音だ。
「入れ」
 エリーゼが入室する。
「お忙しいところ、すいません」
「エリー!どうしたんだい?」
「あの、お願いがあり伺いました」
 立ち上がり、仕事机の前にあるソファーに彼女を誘導する。
 彼女の髪から薔薇の香油の香りが薫ってくる。
 彼女にピッタリだ。
「紅茶は何にする?いつものハーブティにするかい?」
「ありがとうございます」
 思いもよらず、彼女とお茶が出来ることに心が踊ってしまう。
 手早く紅茶の準備をし、彼女に差し出す。

「何かあったのか?」
「アリシアから手紙が届きまして、しばらくこちらに遊びに来たいと。屋敷に招待してもよろしいでしょうか?」
「あぁ、もちろんだ。で、いつ来るんだ?」
「それが…。手紙と同時に来てしまいました」

 コンコン。
 ドアのノック音。
「ローベンシュタイン子爵様、久しぶり!」
 アリシア・ハルマン。
 隣国モルダビッチ王国の侯爵家三女で、自由奔放な陰険女だ。
「手紙と同時に来るとは、だな」
「邪魔しちゃったかしら」
 さりげなくエリーゼの隣に座り、彼女を抱き締める。
 ちらちらこちらを見る顔は陰険だ。
 俺がやりたいことを嬉々として見せつけるこの女。サディスティックな!
「シア、ちょっと痛いわ」
「エリーに会うの久しぶりでしょ!もっとあなたを感じたいのよ」

 くっ!
 妖艶な言い草にムカっとする。
 エリーゼを感じたいのは俺だ!

「で、何の用だ」
 極めて冷静に。
 表情を崩せば相手の思う壺だ。

「観光と、エリーに会うのと、この手紙を貴方に届ける為よ」
 胸の谷間から手紙が出てきた。
 ハルマン侯爵の押印が見えた。
 これは、侯爵からの極秘依頼だな。
 しかし、なんて所から出す!
 エリーゼの目の前で!
 受け取らなくてはいけないが、受けとりたくない。

「ほら、早く取りなさいよ」
「テーブルに置け」
 二人でにらみ合う。
 俺たちに挟まれたエリーゼがオロオロして、アリシアから手紙を受け取り、テーブルに置いた。
「エリーは天使ね。大好き!」
 アリシアの放漫な胸がエリーゼの胸を押し付けられ、胸同士がせめぎあっている。

 くっ!
 男の性でつい見てしまい、アリシアに意地悪い顔でバカにされた。

「用が済んだなら早く退出してくれ」
「申し訳ありません。では失礼致しますね」
「え?!」
 アリシアに言ったのに、エリーゼまで退出していってしまった。
 引き留めたくても、エリーゼの素早い行動に声をかける暇もなかった。
 退出するアリシアから
「バカね」
 と笑われた。

 はぁ、エリーゼとの逢瀬は当分先だな…。
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