ノンフィクション

犀川稔

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24話 カタチのある証明

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 新山は自分の家族のことを含め、先日に起こったその話を包み隠すことなく赤裸々に全て話した。その間、千隼は少し悲しそうな表情でずっと話を聞いていたけれど全てを話し終えた新山のことを抱きしめた。
「今日もそのことがあって会えないってなったんだよね...?なのに来ちゃって大丈夫だったの?ごめん...おれのせいで無理させちゃった?」
 申し訳なさそうにそう言った千隼に新山はすぐに言った。
「いや全然!......まぁ実は父さんにちょっと二人で話をしたいって言われて断ったら話し合いから逃げたみたいに思われそうで嫌だったから受けただけなんだよね。本当はその後で千隼会えばいいって思ってたんだけど、話し合いの後で会って負のオーラ出しまくったらせっかくの誕生日を台無しにすると思って翌日にしたいって言ったんだ。後回しみたいな感じにしてまじでごめん。」
「いやいや!どう考えてもおれの誕生日よりもそっち優先でしょそれは。全然おれは大丈夫だよ、誕生日なんて今年無理なら別に、来年でも再来年でも新山さんと一緒に過ごせればって思ってたし...。」
 千隼の言葉を聞いて新山は目を見開いた後でそっと俯いた。どうしたのかと心配した千隼が新山の顔を覗き込むと、新山は静かに涙を溢していた。驚きながらも千隼は何も言わずに新山のことを強く抱きしめたあとそっと耳元で囁いた。
「ねぇ...おれ今日誕生日だからいつも以上に我儘言っていい?」
 それを聞いた新山が「うん。」と返事を返すと、新山の顔を見て温かく笑った。
「おれの家泊まってほしい。...それで今日はもうこのまま一時も離れないでずっとそばにいて。」

「......確かに泊まってほしいって言ったのも離さないでって言ったのもおれだけどさ...。だからってこんな何箇所も痕残すとは思わないし逝ってるって言ってるのに新山さん全然手止めてくれないし、そのくせ自分はガン勃ちなのに脱がないしなんなの?まじでただかっこよくて優しくてたまに抜けてるところが可愛いだけの男のくせに調子乗ってるよ。」
「うん、ごめん...ごめんだけど、褒めてくれてありがとう。」
「全然褒めてないし。」
 ベットの上で布団を被ったまま不貞腐れる千隼の身体を新山は優しく揉みほぐした。そして部屋に置いてあった時計に目をやって思い出したようにカバンの中から紙袋を取り出した。
「良かったー、日付越すところだったわ。これ誕プレ。...ゴリゴリにおれの趣味だし気にいるかわからないけど受け取ってくれる?」
 そう言って新山から渡された紙袋を受け取ると千隼は驚き、呆然とした状態のまま包装紙を丁寧に剥がした。
「そういうのって剥がし方に性格出るよね。それはもう完全に几帳面の人の開け方だわ。」
「いや、普段なら全然ビリビリいってるよ。流石に恋人にもらった誕生日プレゼントを破いて開けるほどの強メンタルは持ち合わせてないかも。」
 わかりづらいけれどボソボソと話をしながら耳を赤くした千隼のことを新山は愛らしそうに隣で見つめた。新山に見守られながらプレゼントを開封した千隼は箱を開けてその中にあった物を手に取った。
「......ネックレス...?」
「そ、ネックレス。」
「......後ろ、S&Cって書いてある。」
「まぁ...ペアネックレスだからね。」
 その言葉を聞いてハッと顔を上げた千隼に新山は、服のボタンを数箇所空けて、自分の首身に付けていたネックレスを見せた。
 そこに下げられているもらったものと同じネックレスを見て千隼は不安そうに新山の顔を見た。
「このブランドおれでも知ってるくらい有名なやつじゃん。おれもらっちゃっていいの...?」
 申し訳なさそうに口を開いた千隼に新山は明るく笑ってみせるとその後、千隼の頭を撫でた。
「それ買うためにここ最近シフト増やしてたしね。全然俺、恋人のためならなんでもできちゃうパワー系彼氏なんで。んだからもらってよ。それにもうイニシャル入ってるし...もう千隼くん専用ですよ。一緒に付けよ?」
 千隼の震えた手に握られていたネックレスを横から取ると新山はそれを千隼の首に付けた。
「あら素敵、似合う可愛い天才。やっぱ俺の子が今日も世界一輝いてるわ。」
 笑いながら千隼を抱きしめる新山の腕の中で千隼は涙を流すと「ありがとう。」と小さな声で言った。
 その言葉に新山が「こちらこそ。」と返すとしばらく黙った後で大きく深呼吸をして、千隼が顔を上げた。
「おれはずっと新山さんのそばにいるよ。だからこれからも安心してそのままの新山さんを見せてほしい。」
 まっすぐな瞳でそう話した千隼の言葉を聞いていた新山は呆気に取られたように驚いた顔をした後で、すぐに千隼のことをまた抱きしめた。そんな新山の背中を千隼が優しく摩ると、新山は安心したようにゆっくりと千隼を離してそのままキスをした。

 1時過ぎになって眠くなったのか千隼はうとうとし出してそのまま俺の手を握ったまますやすやと眠り出した。そんな千隼の寝顔が本当に可愛らしくて子供らしくて俺は思わず千隼の頬を撫でた。すると千隼は、俺の手に顔を擦らせてそのまま気持ちよさそうに眠ったまま微笑んだ。
 プレゼントで渡したネックレスがキラキラと彼の首筋で輝いていた。
 この尊くて脆い、繊細な生き物を俺はこの手で必ず守りたいと思った。しかしそれと同時に頭に浮かんだのは家族のことだった。
 父親とは今日駅前のカフェでもう一度面と向かって話をした。会って早々に謝られ、あの発言は俺が好き好んでしているものかと勝手に解釈をし出てしまったものだと論された。「これからは家のことは気にせず好きに生活して構わない。」と言われ、仕事に戻るからと席を立った際に最後にもう一回深々と頭を下げ謝罪をされた。きっと父の言っていたことは紛れもなく本心なのだと思う。
 毎回父はある節目を迎える時期に決まって俺に「お前は何がしたいのか。」と俺の意思を聞くことがあった。でも俺はその言葉の裏には家族を思いやれと言う気持ちが隠されている気がして用意されたテンプレのように「家族を支えたい。」と答えていた。
 人を疑う事をしない父はその俺の言葉をそっくりそのまま信じ込み、今に至ると言うところだろう。
 なにわともあれ、いつかはちゃんと話をしないといけないと思っていた父とこんなにも早く落ち着いた環境で話をできたことは良かった。
 しかしそのせいで新しく生まれた問題は、他でもない千隼だ。
 空気を読みすぎる上に人一倍相手との距離を図ることに理解のある彼はきっと色々と思うことがあっただろう。ここまで踏み込んだ話をしたのだから今日家族と何を話したのかだって気になったに違いない。なのにそれを聞いてこないと言う事はきっと、自分が触れてはいけない話だと思ったのだろう。そんな事にまで気を遣わせてしまっているのが本当に申し訳ないと思うし情けない気持ちでいっぱいになる。
 でも今はもう少し...。俺の中で自分の感情が整理できるまでの間は許して欲しいと思う。

 絶対に幸せに。君に不自由をさせないようにするから。今はもうちょっとだけ隣で休ませてほしいと身勝手だけど、そう願っているよ。
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