ノンフィクション

犀川稔

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68話 隠し事の真実

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 急いで家に帰るとおれの帰りを待っていた新山さんと兄貴がリビングで駄弁っていた。
「おかえり~。早かったね、楽しめた?」
 リビングのドアを開け入ってきた千隼に新山がそう問いかけたけれど、千隼は「うん。」と素っ気なく返事を返して佐々木の目の前に立った。
「...今日赤城先輩に送った写真おれにも見せて。」
 真剣な顔で言った千隼のことを見上げた佐々木は声を出して笑ったあとで「無理。」と答えた。
「なんで?おれだけダメとか意味わかんないし...新山さんもなんとか言ってよ!」
「ごめん...全然話が読めないんだけどこれどういう状況?」
 感情を表に出しながらピリピリした雰囲気で話をしていた千隼は新山の言葉を聞いて何があったのかをこの時ようやく話した。
「なるほど......で?お前はなにかしら理由わけあって千隼に言えない感じなの?」
「そりゃあ当然でしょ。後先考えられない自分の感情コントロール不可能なお子様にはそう易々と言えないよ。更に話拗れるわ。まぁ今は大人しく彼氏によちよちされててよ、こっちはこっちで動いてみるからさ。」
 そう言い残すと佐々木は千隼と新山にヒラヒラと手を振ってリビングから出て行った。
 残された千隼はイライラした表情を全面に出していたものの新山は佐々木の言動に何かを察して千隼のことを宥めた。

 ”そっち大丈夫そう?“
 相馬と別れたであろう時間に赤城からそうメッセージが届いた佐々木は自分の部屋でベットに横になりながら返信を打った。
 “新山がなんとかフォローに回ってくれたわ。ところでそっちは?色々拗れてない?”
 そんなやりとりから開始し佐々木と赤城は情報共有をした。
 赤城の話によれば相馬は特に偏見とかもなければただ千隼あいつが心配で声をかけてくれただけだった。学校で芦野くんたちといる感じからしてぽやーっとしててあまり今まで直接関わりを持ったことがなかったからそこまで理解があったのは正直意外だった。
 そんな時、通知が鳴りメッセージを見ると相手は最近付き合った(つもりの)女子からだった。
 “クリスマスの約束なんだけど、他に彼氏できたからやっぱなしで!よろ~!!”
 そのメッセージを読むと佐々木は「はぁ~!?」と声をあげた。
「んだよ!せっかく予定入れたのに~...あ、そういや全然相馬と絡んだことなかったな。この際ちょうどいいからいっちょクリスマス誘ってみっか!」
 そんな軽いノリで相馬に誘いの連絡を入れると向こうも似たようなノリで「OK。」と返事が返ってきた。
 そんな相馬のメッセージを見て耐えきれずに笑い声を上げた。
 そしてその後呼吸整えるととりあえず今はあの問題をなんとかしようと思い画面をスワイプししばらく話していなかったため下の方にあった土間のトーク画面を探しメッセージを送った。
「お前に聞きたいことがある。話はお前自身が一番よく分かってんだろ?」
 そう送るとしばらくして既読がついた。しかし返事は一向に届かず痺れを切らした佐々木は部屋着の上にコートを着て階段を降りた。
 そのタイミングでリビングから出てきた新山と目が合うと「ちょい出かけてくるわ、留守番よろしく。」とヘラヘラ笑って言った。
 そんな佐々木を真面目な顔で見ると黙って靴を履く佐々木の背中に話しかけた。
「俺にも言えないってことは俺と千隼関連なんしょ。面倒かけて悪い...頼むわ。」
 その言葉を聞くと佐々木は薄く笑みを浮かべ、立ち上がって新山の肩に拳を当てた。
「そう改まんなって。こっちは上手くやっとくから代わりに弟の子守頼むわ。全く...あいつも面倒なネチネチ男に好かれたもんだよ。」
 そう言い残すと佐々木はガチャッと玄関のドアを開けて出て行った。
 佐々木を見送ると新山はまたリビングに入り、ソファでうたた寝をする千隼の隣に座ると静かに指を絡めて手を繋いだ。

 一方その頃、周りの友達伝で土間の情報を集めていた赤城は土間のSNSのアカウントを探しだした。
 そこには過去に友達の弟に好意を抱いたことやその子に対して一方的にキスをした事。いつしか密かに彼に執着していた事。そしてその子に最近になってができたかもしれない事などが綴られていた。
 顔や個人情報は載ってなかったものの佐々木から聞いていた彼の特徴や趣味などが一致していたためすぐに土間本人のものだと思うことができた。
 あまり詳しくは佐々木から聞いていなかったけれど過去の投稿を見て粗方何があったのかを知ることができたしその相手が千隼なのだと否が応でも理解ができた。
「うっわぁ...これは相当拗れたやつに千隼あいつ好かれたな。」
 そんな事を考えながら恋人とダラダラ電話をしていた赤城だったけれどそんな時、リアルタイムで投稿されたツイートを見て思わず声を出した。
「その子の兄貴から呼び出されたから今から話してくる。どうせ手を引けとか言い出すんだろうから彼が同性愛者なの周りにバラすって脅して逆に追い詰めてやろうかな。」
 それを見た赤城はすぐに服を着替えると恋人にちょっとだけ外に出るからと伝えて電話を切り急いで佐々木の家の最寄りに向かった。
 高校からの付き合いだけどなんとなく佐々木あいつが行くところはだいたい見当がつく。
 思い当たる場所に目星をつけ片っ端から当たっていると四箇所目でヒットした。
 よく溜まり場として使っている公園で佐々木と土間という男が言い争いをしていた。

「聞きに回ったことは事実だよ。でもだから何?友達の弟の事を周囲に聞いて回ったらダメな決まりでもあるわけ?」
 威圧的な態度で佐々木に質問に反論すると佐々木も同じトーンで言い返していた。
 佐々木の話からして過去に一度、佐々木が土間に注意をしもう関わらないという条件で和解したようだった。それなのに自己都合で勝手にまた接触を試みようとしていた土間は千隼の事を周囲に「男にしか興味がないらしい。」というデマを流していたらしい。
「お前がやった事は立派な名誉毀損。マジでどこまで脳みそ空っぽなんだよ。前にも俺、もう関わるなって言ったよな?」
「うん、言われたね。でもだからと言ってその後どうするかなんて俺の勝手だろ?人の恋愛に首突っ込むなよ...それに新山も新山だよな。俺が彼に好意あんの知っててあんな仲良くしてんでしょ?きしょすぎ。少しは気使えよ。こっちは一緒に帰ったり放課後一緒に居んの全部見てんだわ、ぜってぇわざとだろ。」
 ベンチのそばに置いてあった空き缶を蹴り飛ばすと土間はイライラが収まらないのか近くにあったくずカゴも蹴った。
 もう佐々木だけじゃ埒が開かないと思った赤城が中に入って二人の元に行こうとすると反対側の出入り口の方から新山と千隼が公園内に入ってきて佐々木たちの元へ近づいて行った。

「...は?なんで千隼くんが......、それに新山まで。」
「......今までの話は周囲から全部聞きました。それと今ここでしてた兄貴と会話も全部。」
 そう千隼が言うとハッとして土間は佐々木の方に顔を向けた。先ほどまで呆れたような顔つきをしていた佐々木はぱっと明るい表情を向けそのまま新山と通話中になっている携帯の画面を土間に見せた。
「お前...マジでやり方汚ねぇな。」
「いや汚ねえのはどっちだよ。真正面からぶつからずにネチネチ囲い固めてるお前の方がよっぽど汚ねぇわ。そんなんだからいつまで経っても童貞なんだろうが。」
 半笑いになりながらオーバーキルをする佐々木の話につい新山もクスッと笑うと土間の怒りが頂点まで達した。
「お前...いい加減にしろよ。ちょっと女にモテるからって所詮お前も中身空っぽの...」
「あの、その話また今度してもらっていいですか?...おれ的にはなんか勝手に噂話流されてることについて話したいんですけど。」
 冷静な口調で千隼が割って話を振るとその言葉に動揺し土間が言葉を詰まらせた。
 そしてとりあえず一旦全員冷静になろうと言うことで話がまとまり、補導時間も近づいてきたため佐々木の家へと移動した。
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