ノンフィクション

犀川稔

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74話 おれたちのこれから〜最終回①〜

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 その後のディナーは謎にしんみりとしてしまった為、場の雰囲気を切り替えるためにまた後で続きは開封しようと言うことになりとりあえずおれは新山さんからもらったプレゼントを荷物入れに仕舞った。
 そしてその時になってようやく新山さんの手元に見覚えのある手紙が握られていることに気づき、おれは思わず声を上げた。急いで確認するとやはりカバンの奥に入れたはずに手紙がなかった為、今まさに新山さんが手にしているものが正真正銘おれが書いたものだと悟った。
「......えっと...。なんでそれを......。」
「あ、さっきプレゼントくれた時、くっついて鞄から出てきて床に落ちたから何かと思って拾ったら俺宛だったらしい。これ...もらってもいいやつ?」
「あ......う、うん。いい...やつ......あ、でもところどころ日本語下手なところあったりするかも。書いたいって思って思い浮かんだことそのまま書いたから...。」
 顔を赤くしながらボソッとそう呟いた千隼は、気を紛らすためにデザートをバクバク頬張った。そんな千隼の様子を見て嬉しそう笑うと新山はうっとりと千隼からもらった手紙を眺めた。

 最後にコースに付いていたデザートであるプレートが運ばれてきた時に店員さんが写真を撮ってくれた。少し照れくさい気もしたけれど、新山さんが店員さんと積極的に会話をしてくれたからとても助かった。
 そして会計の伝票がテーブルに置かれ店員さんが個室のドアを閉めた時、新山さんがおれの手の上に自分の手を被せた。
「...このあと、××駅近くのホテル予約してんだけど......。厳しい、っすかね?」
 突然の新山さんの話に驚いておれが顔をあげると、新山は耳を赤くしていて照れているようだった。
「......お泊まり?」
「当然。」
「...行きたい。」
 まだ一緒にいられる喜びと初めての経験で心躍らせながらおれが笑って答えると新山さんもまた安心したように笑った。

「これ...俺も開けていい?」
 ホテルに着き一段落すると、ディナー中に千隼から渡されたプレゼントを手に取り新山がそれを見せると、千隼は恥ずかしそうに頷いた。新山は丁寧にラッピングを外し小さな箱の蓋を開けた。
「...キーケース、?」
「うん、そう。」
「やば、めっちゃ嬉しい。つかセンス良すぎ。流石、俺の千隼くん。好みもわかってるの強すぎね?」
 いつもの調子で千隼のことをベタ褒めするとその後で新山は「本当にありがとう。」と千隼に伝えた。そしてタイミングを伺うように一緒にもらった手紙に手を差しかけると、千隼はわかりやすくあたふたし「おれ先に風呂入る!」と言って急いでコンビニで買った下着の入った袋を持って行ってしまった。そんな千隼の様子を優しく笑って見届けると、新山はシンプルな便箋にびっしりと書かれた千隼からのメッセージを一文字一文字ゆっくりと読み始めた。

 恥ずかしさと気まずさ120%すぎて、逃げるみたいに風呂ここに来てしまったけれどこれで良かったのだろうか。あの手紙には勢いも相まって今までずっと言いたかった事とかこれからの事、そしておれが新山さんに対して抱いてる気持ちが馬鹿正直にぎっしり書かれている。そんな激重メッセージを目の前で読まれるなんて流石のおれでも恥ずかシぬ。...いや分かってる。新山さんなら笑って受け入れてくれることを...。でもそうだとしてもそれを読み終えた後の新山さんに対しておれはどんな態度でどんな顔して話をすればいい?極論、シンプルに超絶気まずい雰囲気非回避すぎて話にならない。
 そんなことを考えながら大きなため息を吐くと千隼は頭を洗った。
「......するかわかんないけど、一応...うん。もしもそう言う感じになった時、手間かけさせたら悪いし...。」
 先ほどのコンビニでバレないように一緒に買ったローションを開けると適量手に出してナカを解した。
 今までも数回ほど自分でやった事はあったけれど何度やってもこれは慣れない。新山さんがあんなにも慣れた感じでやっていること自体、むしろ尊敬する。上半身を倒して手を後ろに伸ばしなんとか一人で粘っているとガチャっとドアを開けて新山が風呂に入ってきた。
「っ!...なんで!?」
「わぁ~お...まじでサービスショットすぎじゃね。」
 ドアを開けたと同時に中で行われていた状況を瞬時に理解した新山がそう言うと千隼はそのまま恥ずかしさのあまり、床に崩れ落ちた。下を向いた顔が上げられないでいると、新山は優しく甘い声で千隼の耳元で囁いた。
「...それの続き。俺がしていい?」
 新山がそう言うと少し間が空いてから千隼は頷いた。

 あれからことを済ませたおれたちはもう一度一緒にお風呂に入った。今度は湯船も沸かしてゆっくりと二人で。
 湯船に入りおれのことを後ろから抱きしめていた新山さんは「あのさ。」と小さな声で話をし始めた。
「あの手紙の話...と言うかあれに対する返答。今話しても良さげ?」
「......いい、よ。」
 一瞬悩んだけれど、ちょっと時間を置いてからおれがそう答えると新山さんはお礼を言ってから話を始めた。
「...実は千隼には言ってなかったけど卒業後の生活について家族とちょい話しててさ。結論から言うと就職しても最初の半年は実家から通うことになったよ。」
「え、なんで...?」
 千隼が驚き後ろを振り返ると新山は温かい笑みを浮かべて優しい眼差しで千隼を見た。
「理由は色々あるんだけど...まぁ一番はその間に千隼も行きたい大学決まったりするでしょ?」
 その言葉に千隼がぽかんと口を開けていると新山はあまり話を理解してない千隼の様子を見て一呼吸置いてから口を開いた。
「行きたい大学決まったらさ。千隼の通いやすいところらへんでいいから一緒に住もうよ。勿論、家賃とかその他諸々全部俺が持つんで千隼くんは身一つで来てもらえればいいんで。...どうっすかね?」
 新山の話を聞いた千隼の目からは涙が溢れた。そんな千隼のことを慰めるように新山が更に強く抱きしめると千隼は「ほんとにいいの?」と言った。
「その方が絶対合格するってやる気出るべ?」
「......うん。出る...めっちゃ出る。ほんとにありがとう...嬉しい。」
 ボロボロと涙を流す千隼の目元を手で拭うと新山は千隼の唇にキスをした。
「...ごめんね。手紙読むまで全然気づかなかった。俺すごい不安にさせちゃってたね。マジで本当に今後も別れる気ないし社会人と学生になったからと言って何か関係が変わることもないよ。就職してもし職場でいい人と出会ったらとか書いてあったけど、千隼くん以上にいい人なんていないしそんなに心配なら指輪それ一応ペアのやつあるから俺も自分の分同じの買って付けるよ。したら多少は心配要素減るっしょ?」
 新山がそう言うと千隼は泣きながら笑って「じゃあおれもあげたのと同じキーケース自分の分買うね。」と言った。

 おれの恋人は優しくて温かい。そしてほんのひと匙、抜けたところがあるそんな人。
 でもそこがまた同じ人間なんだって安心ができるところでもある。
 きっとこの先も上手くいかなかったり逆におれは彼を不安にさせたり傷つけることも少なからずあると思う。でもその度にこうやって彼の温もりに浸ることができればもうそれだけでおれは幸せだって思えるよ。

 空白だったおれの人生そのものに綺麗な色彩を与えてくれた彼へ。
 おれを見つけてくれてありがとう。
 おれを選んでくれてありがとう。
 おれを___。

 今のおれを好きでいてくれてありがとう。
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