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1◆ロベルト視点

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私の名前はロベルト。

世界が恐怖でひれ伏す最強の魔王ロベルトだ。

絶望零度のアイスサファイアの瞳に、月のような銀の長髪、透き通るような白い肌。

男として恵まれた逞しい身体と長身により、私を女と間違う者はいない。

………幼い頃は、何度も女に間違われたがな。

誰もが恐れる私は、あまり知られていないが好物がある。

それは………甘い物だ。

ふわりと蕩ける生クリーム。

口溶け滑らか濃厚プリン。

ケーキ、焼き菓子、アイス、チョコレート。

あぁ……世界中の甘味を食べてみたい!

しかし、悲しいことに私は魔王。

そうそう人の姿では、スイーツ巡りなんてできはしない。

昔一回、街に食べに行ったら街から人が消えた。

魔王が来たと、怯え逃げ惑う人々。

………スイーツ食べに来ただけだったのに。

ちなみに、スイーツは食べれなかった。

当たり前だな………。(はぁ……)

城では、皆の認識として私の好物は肉だと思われている。

………胸焼けするんだが。

野菜は苦手と思われているが、普通に好きだぞ。

ちゃんと私の好物を言おうとすれば、私の不興をかったと勘違いされる。何故だ!

肉増し増し、野菜控えめ……スイーツなんてありはしない。

私の見た目が、スイーツなんてあり得ないと思わせているらしい。

………男らしい見た目してるからな。



私は、食欲が落ちてしまい最終手段にでた。

それが、子犬サイズの狼に化けて散歩するということだ。

この姿ならば、きっと人間はキャー可愛い♡なんて言って、私が甘い物をクゥンクゥンとねだればくれるはずだ。

もう、プライドはある程度捨てる!

そして、私は今とある村に来ている。

城からある程度近い距離の村だ。

村に入ると、早速美味しそうな甘い匂いがするではないか!?

私は、匂いのする方に全速で走った。

そして見たものは、村の青年が今からパンケーキを食べる姿だったのだ!

気がつけば、飢えていた私はやらかしていた。

青年のパンケーキを……横取りしてムシャムシャ食べていたんだ………。

あ…ヤベ……。

青年はポカーンとしていて、手には使用されるはずだったナイフとフォークが………。

「狼君……めちゃくちゃお腹空いてたんだねぇ」

ナイフとフォークを机に置いた青年は、私に近寄り抱っこした。

「仕方ないなぁ。パンケーキもう少し焼くかなぁ」

「ガゥ♡」

パンケーキ♡

もっと焼くのか!?

私も食べていいのか!?

青年はニコニコしながら、当たり前のように私にもパンケーキを焼いてくれた。

「熱いから、気をつけてねぇ」

あまりの美味しさに、ガツガツ食べたのは言うまでもないだろう。

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