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第2話:女子サウナの微熱、あるいは最高温度の誤診
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探偵は胸を揉む:『霊感(パイ)コメトリー・オブ・ザ・デッド』
第2話:女子サウナの微熱、あるいは最高温度の誤診
午前零時すぎ。 静まり返ったショッピングモールの片隅。営業を終えたはずの温浴施設に、二人の男の影があった。
「こ、この状況はマジでヤバいって! 女湯だぞ!? 捕まったら人生終了だ!!」 久我は、支給された(という名目の)小さなサウナマットで必死に前を隠しながら、半泣きで叫んだ。
「落ち着いてください、久我さん。工事業者の恐怖体験報告を分析した結果、ここのサウナ室が残留情動の最大の温床と判明したんです。これは崇高な調査、いわば『仕事』です」 隣でユウキが、なぜか堂々とモデルのようなポーズでバスタオルを巻いている。
入口では、受付のおばあちゃんが古びた鍵をジャラつかせながら、薄暗い脱衣所の奥を指差した。 「もう皆さん、お帰りになりましたから。いるとすれば……未練を残した幽霊くらいでしょうなぁ」
「やめろその不吉な笑い方!!」 久我の抗議も虚しく、ユウキに背中を力一杯押され、二人はサウナ室の重い扉を開けた。
「誤診」と「揉み込み」
サウナ室に入ると、まだ微かに熱気が残っていた。 朧気な灯りの中に、一人の女性のシルエットが見える。肩までしっとり濡れた髪。バスタオル一枚を巻いた、形の良い体のライン。
「……ユウキくん、ヤバいよ。普通にめちゃくちゃ綺麗な人が残ってるって。どうするのこれ」
「ご安心ください。あの霊圧……相当に練られています。実体があるように見せるタイプですね。さあ久我さん、一気に除霊を」
「えっ、あれ霊なの!? だったら実体化してるうちに物理的に浄化しないと!」
久我は恐怖を「使命感」という名の欲望で上書きし、右手を勢いよく前に突き出した。 「し、失礼します……鎮魂(おさわり)に来ました……!」
グニッ。
久我の右手は、驚くほど正確に女性の胸部を捉えた。 「…………!?」 掌から伝わるのは、冷たい霧どころか、驚くほど生々しく、温かく、そして抗いがたい弾力。 久我の脳がバグを起こす。
(あれ? 霊にしては……柔らかすぎる。……いや、きっとこれは強力な残留思念が形作った偽物だ。もっと深く探らなければ、核が見つからない!)
久我は使命感(という名の暴走)に従い、その乳を「もにっ」と、力強く揉み込んだ。
「……やっぱり、柔らかい。本物みたいだ……」
「…………キャアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
サウナ室に鼓膜を突き破るような絶叫が響き渡った。 女性は顔を真っ赤にし、ものすごい勢いで久我を突き飛ばした。
「すり抜けない……? つまり……人間……!?」 「当たり前でしょ!! このド変態!! 死刑!!」
パチンッ!! 乾いた打撃音が響き、久我の頬に真っ赤な手形が刻まれる。久我は床に膝をつき、最速で土下座した。
「誤解なんです! 僕の右手が勝手に『これは除霊対象の悪霊の核だ』って誤診したんです!! 医療ミスなんです!!」
「言い訳がキモすぎるのよ! 受付の人に『もう終わりですよ』って言われたけど、まだ他にも入ってる人がいたから大丈夫だと思ったのに!」
「他にも……? いや、僕ら以外には……」
お姉さんは憤慨しながら立ち上がり、出口へ向かおうとして立ち止まった。 「……あれ?」
「どうしました?」
「さっきまで、あそこにいた……もう一人の女の人……いない……」
サウナの片隅、さっきまで確かに誰かが座っていたような湿った跡だけが、暗闇の中に残されていた。
「……怖い。もういい、私、帰りますね! 二度と来ないわよこんな店!!」
お姉さんは半泣きでサウナを飛び出していった。
本命の熱気
お姉さんが去った瞬間、サウナ内の空気が一変した。 「ヒュゥゥゥ……」と凍えるような隙間風が吹き抜け、直後にストーブが勝手に激しくパチパチと音を立て始める。
ユウキの目が冷徹に細められた。 「来ましたよ、本物です。さっきの女性の背後に隠れていた『本命』が」
ずずずずぅぅぅ……。
天井から、汗のようにドロリとした霊気が滴り落ちてくる。
『寒い……寒いの……もっと、焼いて……熱くしてぇ……』
「サウナで寒いと言う亡霊……未練は間違いなく『ととのい不足』! 久我さん、出番です!」
「もうやけくそだ! 出てこい温度差の亡霊!」
久我の右手が、今度こそ本物の霊へと吸い寄せられる。 霊の胸ぐら(のような部位)を掴み、叫ぶ。 「これは治療行為! 僕は免許はないけど、魂の熱波師だと思ってくれ!」
乱入する「熱波師」
「へいお待ち! 熱くしますぜぇ!!」
突然、サウナの扉がバァンと開き、上裸にハチマキ姿の熱波師が巨大なタオルを構えて乱入してきた。 「サウナの極意……魂のロウリュを見せてやるぜ! バッサァァァ!!!」
瞬間、室内は皮膚が焼けるほどの灼熱地獄と化した。
霊『暑い……熱い……! これ……これだぁぁぁぁぁ!!!』
「まだだ! まだ『ととのい』の向こう側が見えねえぞ! オラァッ!!」
熱波師が全力でタオルを振り回し、久我は霊の胸部を揉みしだきながら情動の核を無理やり活性化させる。
「解き放て! お前が求めていた最高の設定温度を!!」
しかし、ユウキが熱波師の足元を見て眉をひそめた。 「ところであなた……熱心なのは結構ですが、男性ですよね? なぜ営業終了後の女子サウナに?」
「それは……俺はプロだからな……客がいれば、どこへでも……」 熱波師の体の輪郭が、蒸気に溶けるようにぼやけていく。
霊『私を……熱くしてくれてありがとう……最高の、ととのい……』
熱波師「……あ。俺、去年のサウナマラソンで倒れて、そのままだったわ」
「いや、あんたも霊かよ!!?」 熱波師、自分の死を思い出した瞬間に、満足げな笑顔で蒸気と共に消滅した。
呪いの残業代
「……終わったのか?」 久我は水風呂へ転げ込み、冷気に包まれながら溜息をついた。
「全員まとめて成仏してととのった。これでクエスト完了だろ……」
だが、運命は久我を逃さない。
カランッ。
不気味な音が響き、サウナ室のドアノブが外側からポロリと落ちた。
久我「あぁぁぁ!! 閉じ込められた! 出して! ここ、密閉性が高すぎるんだよ!!」
ユウキ「久我さん。鎮魂の後に必ず物理トラブルが起きて、命の危機に晒されるの……もう仕様(プログラム)ですね」
ジジジ……。 薄暗いガラス越しに、あの受付のおばあちゃんが予備の鍵をゆっくりと差し込みながら現れた。
「いやー、うっかりしてましたわ。生きてるうちに、早くお帰りなさいな。……でないと、本当にあちら側の住人になっちまいますよ」
満面の、ニヤリ。
久我「ほんとその笑顔やめて!! おばあちゃんが一番幽霊より怖いから!!」
涼しいはずの水風呂の中で、久我はガタガタと震えながら、右手に残る「生きた女性」の感触と「亡霊」の感触の差を思い出し、複雑な表情を浮かべるのだった。
第2話:女子サウナの微熱、あるいは最高温度の誤診
午前零時すぎ。 静まり返ったショッピングモールの片隅。営業を終えたはずの温浴施設に、二人の男の影があった。
「こ、この状況はマジでヤバいって! 女湯だぞ!? 捕まったら人生終了だ!!」 久我は、支給された(という名目の)小さなサウナマットで必死に前を隠しながら、半泣きで叫んだ。
「落ち着いてください、久我さん。工事業者の恐怖体験報告を分析した結果、ここのサウナ室が残留情動の最大の温床と判明したんです。これは崇高な調査、いわば『仕事』です」 隣でユウキが、なぜか堂々とモデルのようなポーズでバスタオルを巻いている。
入口では、受付のおばあちゃんが古びた鍵をジャラつかせながら、薄暗い脱衣所の奥を指差した。 「もう皆さん、お帰りになりましたから。いるとすれば……未練を残した幽霊くらいでしょうなぁ」
「やめろその不吉な笑い方!!」 久我の抗議も虚しく、ユウキに背中を力一杯押され、二人はサウナ室の重い扉を開けた。
「誤診」と「揉み込み」
サウナ室に入ると、まだ微かに熱気が残っていた。 朧気な灯りの中に、一人の女性のシルエットが見える。肩までしっとり濡れた髪。バスタオル一枚を巻いた、形の良い体のライン。
「……ユウキくん、ヤバいよ。普通にめちゃくちゃ綺麗な人が残ってるって。どうするのこれ」
「ご安心ください。あの霊圧……相当に練られています。実体があるように見せるタイプですね。さあ久我さん、一気に除霊を」
「えっ、あれ霊なの!? だったら実体化してるうちに物理的に浄化しないと!」
久我は恐怖を「使命感」という名の欲望で上書きし、右手を勢いよく前に突き出した。 「し、失礼します……鎮魂(おさわり)に来ました……!」
グニッ。
久我の右手は、驚くほど正確に女性の胸部を捉えた。 「…………!?」 掌から伝わるのは、冷たい霧どころか、驚くほど生々しく、温かく、そして抗いがたい弾力。 久我の脳がバグを起こす。
(あれ? 霊にしては……柔らかすぎる。……いや、きっとこれは強力な残留思念が形作った偽物だ。もっと深く探らなければ、核が見つからない!)
久我は使命感(という名の暴走)に従い、その乳を「もにっ」と、力強く揉み込んだ。
「……やっぱり、柔らかい。本物みたいだ……」
「…………キャアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
サウナ室に鼓膜を突き破るような絶叫が響き渡った。 女性は顔を真っ赤にし、ものすごい勢いで久我を突き飛ばした。
「すり抜けない……? つまり……人間……!?」 「当たり前でしょ!! このド変態!! 死刑!!」
パチンッ!! 乾いた打撃音が響き、久我の頬に真っ赤な手形が刻まれる。久我は床に膝をつき、最速で土下座した。
「誤解なんです! 僕の右手が勝手に『これは除霊対象の悪霊の核だ』って誤診したんです!! 医療ミスなんです!!」
「言い訳がキモすぎるのよ! 受付の人に『もう終わりですよ』って言われたけど、まだ他にも入ってる人がいたから大丈夫だと思ったのに!」
「他にも……? いや、僕ら以外には……」
お姉さんは憤慨しながら立ち上がり、出口へ向かおうとして立ち止まった。 「……あれ?」
「どうしました?」
「さっきまで、あそこにいた……もう一人の女の人……いない……」
サウナの片隅、さっきまで確かに誰かが座っていたような湿った跡だけが、暗闇の中に残されていた。
「……怖い。もういい、私、帰りますね! 二度と来ないわよこんな店!!」
お姉さんは半泣きでサウナを飛び出していった。
本命の熱気
お姉さんが去った瞬間、サウナ内の空気が一変した。 「ヒュゥゥゥ……」と凍えるような隙間風が吹き抜け、直後にストーブが勝手に激しくパチパチと音を立て始める。
ユウキの目が冷徹に細められた。 「来ましたよ、本物です。さっきの女性の背後に隠れていた『本命』が」
ずずずずぅぅぅ……。
天井から、汗のようにドロリとした霊気が滴り落ちてくる。
『寒い……寒いの……もっと、焼いて……熱くしてぇ……』
「サウナで寒いと言う亡霊……未練は間違いなく『ととのい不足』! 久我さん、出番です!」
「もうやけくそだ! 出てこい温度差の亡霊!」
久我の右手が、今度こそ本物の霊へと吸い寄せられる。 霊の胸ぐら(のような部位)を掴み、叫ぶ。 「これは治療行為! 僕は免許はないけど、魂の熱波師だと思ってくれ!」
乱入する「熱波師」
「へいお待ち! 熱くしますぜぇ!!」
突然、サウナの扉がバァンと開き、上裸にハチマキ姿の熱波師が巨大なタオルを構えて乱入してきた。 「サウナの極意……魂のロウリュを見せてやるぜ! バッサァァァ!!!」
瞬間、室内は皮膚が焼けるほどの灼熱地獄と化した。
霊『暑い……熱い……! これ……これだぁぁぁぁぁ!!!』
「まだだ! まだ『ととのい』の向こう側が見えねえぞ! オラァッ!!」
熱波師が全力でタオルを振り回し、久我は霊の胸部を揉みしだきながら情動の核を無理やり活性化させる。
「解き放て! お前が求めていた最高の設定温度を!!」
しかし、ユウキが熱波師の足元を見て眉をひそめた。 「ところであなた……熱心なのは結構ですが、男性ですよね? なぜ営業終了後の女子サウナに?」
「それは……俺はプロだからな……客がいれば、どこへでも……」 熱波師の体の輪郭が、蒸気に溶けるようにぼやけていく。
霊『私を……熱くしてくれてありがとう……最高の、ととのい……』
熱波師「……あ。俺、去年のサウナマラソンで倒れて、そのままだったわ」
「いや、あんたも霊かよ!!?」 熱波師、自分の死を思い出した瞬間に、満足げな笑顔で蒸気と共に消滅した。
呪いの残業代
「……終わったのか?」 久我は水風呂へ転げ込み、冷気に包まれながら溜息をついた。
「全員まとめて成仏してととのった。これでクエスト完了だろ……」
だが、運命は久我を逃さない。
カランッ。
不気味な音が響き、サウナ室のドアノブが外側からポロリと落ちた。
久我「あぁぁぁ!! 閉じ込められた! 出して! ここ、密閉性が高すぎるんだよ!!」
ユウキ「久我さん。鎮魂の後に必ず物理トラブルが起きて、命の危機に晒されるの……もう仕様(プログラム)ですね」
ジジジ……。 薄暗いガラス越しに、あの受付のおばあちゃんが予備の鍵をゆっくりと差し込みながら現れた。
「いやー、うっかりしてましたわ。生きてるうちに、早くお帰りなさいな。……でないと、本当にあちら側の住人になっちまいますよ」
満面の、ニヤリ。
久我「ほんとその笑顔やめて!! おばあちゃんが一番幽霊より怖いから!!」
涼しいはずの水風呂の中で、久我はガタガタと震えながら、右手に残る「生きた女性」の感触と「亡霊」の感触の差を思い出し、複雑な表情を浮かべるのだった。
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