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しおりを挟む季節は過ぎて春、巴先輩は無事に大学を卒業した。
入れ替わるように僕は就職活動の準備が始まり、慌ただしい毎日である。
クリスマスにホテルに行ったきり、僕たちは何の進展も無く…6月になった今でも先輩は処女を守っている。
しかしそれも今日まで、今夜僕は先輩とデートをして初めてを貰い受ける約束をしている。
「悠希斗くん、お待たせ」
「お疲れさまです」
「乗って、」
「はい、お邪魔します」
先輩の車に乗り込めば、ふんわりと芳香剤が香って気分が安らぐ。
僕も中古車を買い運転練習をしているところで、いずれは新車に買い替えて先輩を助手席に乗せてあげられたらなぁなんて希望が膨らむ。
「就活終了ね、おめでとう」
「ありがとうございます」
「やっぱり悠希斗くんは出来る男ね、さすがよ」
「普通ですよ」
そう、今夜のお出かけは僕の内定祝い、来年の春から地元の信用金庫で働くことが決まった祝賀会も兼ねているのだ。
「食事は奢らせてね」
「ありがとうございます」
「プレゼントはその後、ね」
「洒落たジョークなのかなぁ…まぁいただきますけど」
ご褒美に処女を戴くなんて恐れ多い。
けれど、見切り発車で走り出してしまい足踏み状態の僕らはこういったきっかけでもなければもう終着点を作ることが出来なかった。
半年以上付き合ったし親睦も深めた。
易々と手を出さない誠実さのアピールも出来たろうし彼女の人生を負う覚悟と準備も出来たつもりだ。
まぁ正直言うといまひとつ気分が盛り上がらずペッティング以上のことをしようと思えなかったのも原因なのだが。
僕は自分で思っていたよりセックス欲はそこまで無いみたいだ。
よくよく考えれば長らく恋人が居なくても我慢できていたし自慰行為もそんなにしていなかった。
実に無意識だったが草食男子だったのかもしれない。
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