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しおりを挟むちなみにだが最初から気になっていた点…なぜ玄人仕込みの関西弁なのかと問えば、
—そらぁここ関西やし?
その地の人の耳に一番耳馴染みのええ言語で伝わるようできてんのよ。
北国やったらズーズー弁、東京やったら標準語で聞こえるはずよ
とのことだった。
—お気楽旅行気分でな、こっち来て、血ィ分けてもろて。
ワシは最近はこの辺りばっか。
都会の方が…血ィに逢いやすいからさ。
普通はちょちょっと針で突くかして、血ィ出して貰うんやけど。
予め血ィが出とりゃ楽でええわね
結局餃子をひとりで食べきったヴァンパイア、にんにく臭いゲップを吐いて対面に座る私に目線をくれた。
—お姉ちゃん、
そうか、このヴァンパイアがこの部屋を選んだ意味がようやく分かった。噛みたくない、あらかじめ血が出ていると楽、そういうことだ。
—…まだ塞がってへん、1時間くらいか
卓上にずいと乗り出し、前髪から覗くそれはさながら黒い宝石。カーボナードかブラックオパールか、彼の瞳にはしっかりとこちらの強張った顔が映っている。
—まだ出てんちゃう?
部屋の外でも匂いしたんよ…見せてぇな。
…その手首、
こちらの目を見つめたままのっそりと這い寄り、がしと掴まれた左の手首。
そこに貼られた絆創膏に滲んだ血はまだ鮮やかな色をしていた。
—普段からしてんの?
あかんよ、体は大切にせな
…剥がすで
口では心配をしているようだが決してそうではない。
彼の目当ては最初からそこだったのだから。
ぺりぺりと絆創膏が剥がされて皮膚がよじれ、固まりかけていた瘡蓋の表面に血の玉がぷくっと膨らんだ。
—あと、切るならもっとキレイなもんでやらんと…
痕が残んのよ…
こんなん使わんとさァ…
傷隠しのリストバンドは洗って干しても匂いが染み付いているのだろう。卓上のペン立てに挿したカッターナイフ、直後のその手で触ったBOXティッシュも同様だ。
この男は窓の外から、しっかりと血の匂いを辿っていたのだ。ゴミ箱のティッシュは言わずもがな手首を拭った血が染みて、この男の嗅覚には濃すぎるほどに刺さったに違いない。
徐々に息が荒くなるヴァンパイアが掴んだ手にぐっと力を入れると、じっとりと潤んだ傷口の線の上にぽつぽつと赤い点が増えた。
手首を飾るブレスレットの様な点がじわじわと粒になり、筋になり。張力が崩れてついに滴になって肘へ向けて流れ出す。
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