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1・調教済みだ
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しおりを挟む俺は常盤拓朗…32歳。家電量販店ムラタの甕倉本店で黒物フロア長を務める中堅社員である。
甕倉市は神奈川県の南側、歴史的な寺社や街並み保存地区などを有する観光地でありリゾート地、海沿いの小京都と呼ばれる大きな街だ。俺はこの街の隣の横浜市で生まれ育ったが、今はその甕倉に住んで働いている。
外見についてだがよく人から言われるのは「良い人そう」とか「優しそう」とか当たり障りの無い言葉だ。
男らしい眉毛を持ちたまに二重になる奥二重の目とそこそこ高い鼻。身長は175センチと特筆すべき秀でた部分が無い、いたって普通の男である。
そんな俺が今夜居るのは市内郊外のホテルで、同市内に家があるのだから宿泊する予定は無くむしろ数時間のショートステイのみの…要はラブホテルだった。
同室している女性は笹目水蓮…33歳。俺と同じ店舗で働く白物フロア長である。
ふんわり穏やかで柔らかい雰囲気と物腰で客からも部下からも評価が高い。その割に頭が切れるのでいざとなればさくさくと指示を出して問題を片付けていくというギャップ、それが面白くて魅力的だった。
天然パーマらしいボブの髪は色素が薄くて茶色っぽい。垂れ目なのかメイクなのか笑った時に特に下がる目尻が可愛らしくて一度見つめると目が離せなくなる。
俺より15センチは低い身長と程よく肉付きの良い体、制服のベストに押さえつけられた胸なども目を引くと言うか当然気にはなっていた。
俺たちはいわゆる職場恋愛で、交際を始めてひと月ほどだ。
いい大人なのでそこまでがっつく訳でもなかったのだが、デートの帰りに誘ってみると手応えがあったので初めてホテルへと乗り込んで…目の当たりにしたのがピアスだったという残念さだ。
意外だがそこまでのギャップは求めていない。赤らめた顔の下から覗く白い乳房は官能的ですぐにでも触ってむしゃぶりつきたいのに、先端にアレが付いているというだけでその魅力は半減どころかマイナスである。
だって俺は痛いことが嫌いなのだ。いい歳だから彼女がヴァージンであることなど期待してはないけれど、こうまで手練れとはこちらも想定していない。
だいたい乳首に穴を開けることに何の意味があるのか。開ける時の痛みにドキドキするだけであとは恥ずかしさを積み重ねていくだけではないのか。
そしてそれは開けた奴に対してであって縁の無い俺には威圧感しか与えないし見せられても対処のしようが無い。
「……あのさ、その…パートナーって…」
「ご主人様…とでも言いましょうか」
「それは、俺とか一般の認識で言うところの『元カレ』でいいの?」
「んー…そうですね、元…うーん…厳密には違うんですが…」
「なるほど」
元カレをまだ敬ってやがんのか、そして『元カレ』という単純なワードでは括れないくらい込み入った関係だったのか。
その絆を見せられたことに俺はまずイラッとする。そして元カレとの思い出の品をずっと着けているのか、それも腹が立つ。
「…それで…元カレに貰ったものを後生大事に?」
「いえ、とんでもない…これは私が自分で…買ったものです」
「本当?」
「本当です、スマホで購入履歴を見ていただいても構いません、」
「あぁそう…ふむ…」
俺は案外冷静で、彼女を突き飛ばしたりすぐに部屋を飛び出して帰ったりそんな衝動には駆られなかった。
削がれた興奮が残念ではあるがもしこのまま進めてパンティの下、つまり陰部にもピアスが付いていたり開発の痕が見えたりすれば俺はきっと立ち直れない。だが落ち着いて話し合って分かり合えることもあるだろう。
一度は好きになった女性だしついさっきまでギンギンになっていたあの猛りは嘘ではないのだ。今夜は無理でも平和的に共存できる道があるかもしれない。
とは言え俺は痛そうなのはノーサンキューなのでいかに説得してピアスを外させるかなのだが…塞ぎもせず自費で穴を維持しているということは乳首ピアスは彼女自身の嗜好である可能性が高い。全否定すればヘソを曲げるか、しかしこちらの要望もある程度は呑んでもらわねば楽しく交際していけない。
俺は彼女の朗らかで可愛らしいところと凛々しく仕事をする姿が好きだったのだ。しかし彼女からピアスという装飾品を取り除けばひとまず見た目に問題は無さそうだ。
「その…そこだけ?」
「ピアスですか?はい、他は…あぁ、耳たぶにひとつずつ開けてます」
「そう、それは普通か……下は…開けてないよね?」
「した、」
「下、その…パンツの中…」
まぁ俺も健康な成人男性なのでこれまで様々なジャンルのエロスは辿って来た。女性器にピアスを付けたりする人がいることも知ってはいる。
なるべく動揺してない余裕を見せたかったが…難しかった。
「あ、開けて…ないです、あの…か、確認なさいますか?」
「いい、いいよ……ごめん、正直ピアスにビックリして興奮が醒めちゃったから…ちょっと今夜は無理かもしれない」
「…そうですか…すみません…」
「いや、急に誘ったのがいけなかった」
きっと前もって予告していれば外して来てくれたに違いない。まぁ今夜だってトイレに行った隙に外したりチャンスはあったはずだが。
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