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6・俺の、水蓮
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しおりを挟む「ピアスは…そもそもなんで?他にも選択肢があっただろ」
「理由ですか?んー……何故…でしたかね…」
少し惚けている気もする、彼女はボディーソープを泡立てて体を洗い、俺はそれを湯船の中から眺めた。
やはり風呂もホテル並みに豪華な作りで、聞けばひぃ様の介護に備えてバリアフリーの改装を一度入れているらしい。
車椅子が出入りできる幅広の間口と充分な面積の洗い場は彼女ひとりでは持て余していることだろう。
「やっぱりその…虐待に思えるんだよ、水蓮を逃がさないための足枷みたいな」
「そこまでではありませんわ」
「にしてもさ、刺青でもペアリングでも、色々あるだろ」
「そうですね…」
「それを提案する方もおかしいけどさ…受け入れるのもおかしいよ、俺の感覚では」
「ふふ」
意に介さないね、彼女はいまだにひぃ様の女房として振る舞い俺はただの訪問者で…余所者感が拭えない。
セックスはしてないもののそれなりに愛し合ってるはずなんだけどな、言葉通りの繋がりが無いと彼女は関係を実感してくれないのだろうか。
もしくは俺がこの乳に本当に輪を掛けて紐を通して引いてやれば俺に心酔するのか。
ありそうだけどその場合彼女が悦ぶのは『繋がれている自分』に対してではなかろうか。
ひぃ様から飼い主が俺に代わっただけ、相手は誰でも良いのでは…俺の心を読んだのか、体を洗い終わった彼女は湯船に浸かり、
「着け外しして頂きましたけど…お慣れになりましたか?」
と新しいピアスが咲く乳房をむんずと持ち上げてアピールする。
ニップレスを貼ったような見た目、けれどステンレスは湯を弾いて正に御守りとして俺を寄せ付けない。
「いや…でも何だろうな、所有を表すっていうのは分かる気がするよ、ネームタグみたいだ…牛の耳とかに付いてる番号札とか」
「まぁ酷いです…羊だとか馬だとか」
「イメージね」
「…ホルスタインと仰りたいんでしょう?」
「んふふ、ジャージーかな」
白と黒の斑模様も可愛いけれど艶々した茶毛のそれっぽいんだ、もちろん乳も大きいし。
皆までは言わず尖らせた口へお詫びのキスを放る。
「ん…拓朗さまったら……私、本当にチェーンで繋がれても良いと思ってますのよ、飼って頂きたいですわ」
「…俺は自立した女性が好きだな」
「もうっ」
「牛だけに?」
「拓朗さまのいじわるっ」
俺は君好みのサディストではないんだ、対等か少し上に立たせてもらうだけで充分なんだ、こんな冗談を言い合える仲になれて嬉しいんだ。
男も女も気の強い人間ばかりの業界で、穏やかな彼女を心配したものだがそれは全くの杞憂だった。
締めるところは締めて毅然としていて、それでいて善良な客や部下には優しくて理想の上司だった。
売り場を離れると力が抜けてほわほわとした雰囲気に変わる彼女を可愛いと思った、次第に目で追うようになっていた。
あの忌引きの後の長引く憔悴ぶりを気にかけているうちにさらに気になっていた。
出逢いときっかけと経緯は真っ当だし王道のラブストーリーみたい、つくづく彼女の生い立ちとひぃ様の存在が際立って異質で仕方ない。
「可愛い…水蓮…俺の、だな」
代用でも良いかもな、湯にぷかぷか浮かぶ乳房を捕まえて針の通った乳頭を縦に指で挟むと彼女は吐息だけで喘いだ。
彼女は俺を求めていて俺だって彼女を求めていて、ここさえ気にしなければひとつになれる。
「いけるのか」と自身に問えば、水中で遊ぶ陰嚢がきゅうと締まる。
「は、はい…拓朗さまの」
「このおっぱいも」
「顔も髪もですわ」
「ここは?」
「…おま*こも、ですわ」
本当に小さな声だが照れるその様子は俺を激らせてくれた。
ここ一番の度胸を見せる、今夜がその時だと思った。
「……水蓮、本当の…元々の君の名前を…憶えてるなら教えてくれ」
「…でも」
「今夜だけだ、ひぃ様に貰った名前を捨てさせたい訳じゃない。今夜…初めてだから、俺だけの君を抱きたい」
「だ…大丈夫ですの?」
不安な面持ちの彼女の手を引き湯の中のモノに触れさせる、
「不思議な気分だよ、マジでマーキングだな…俺の女だって意識が強くなって…ギンギンだ、触って」
おずおずと開いた指の中に収まればニップルピアスと正対しているにも関わらずその猛りは一層強くなる。
「あ、あ♡」
「なぁ、生まれた時の名前、教えてくれ」
「は…い…」
彼女は俺の竿を握る手にぎゅっと力を込めて、
「さくら、」
と、胸にはまるそれと同じ花の名を答えた。
つづく
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