5 / 10
5
しおりを挟む交際を始めるにあたり、私は裕大さんの性分がどんなものか見せてもらうことにした。
本日は朝から落ち合って、お泊まりをするというデートプランだ。
「デート始めてから6時間、前のエスケープから3時間か…裕大さん大丈夫?」
「…あんまり」
喋り方もフランクになり良い感じではあるが、午後3時を回って彼の表情は硬い。あからさまに不機嫌になるというよりは、無気力になり脱力してしまう感じだ。
「そろそろチェックインしようか」
「んー」
何を聞いても生返事、この素っ気なさを見れば恋人は不安になり辛くなってしまうことだろう。
今日はどんな姿を見てもノーカウントと言ってあるので、裕大さんはありのままで過ごしている。無理に私に合わせようともしないし、機嫌を取ろうともしない。
私は私で気分屋DV男と付き合った経験から、これくらいの塩対応は屁でもない。暴れ回るとかでなければ許容範囲だ。
「わ、広ーい」
本日はリビングと寝室が分離されたメゾネットタイプのホテルに宿泊する。裕大さんにはギリギリまで堪えてもらい、どうしても無理になったら別室へエスケープして頂く算段だ。
「裕大さん、平気?」
「……」
「もうベッドルームに行きなよ、顔色悪い」
「うん…」
人によっては不機嫌に見えるのだろうが、私からすれば体調不良が強いかなと思った。
少しでも自分を良く見せようと頑張ってくれていただろうし、私に不快感を与えないよう気を回してくれていただろう。私も一応医療職なので、無理をした彼の健康面が気になったりした。
裕大さんは寝室へと下がり、私はリビングルームでゆったり過ごす。
離れて小一時間ほど経ったら、すっかり元気になった裕大さんが出て来て
「ご飯、何食べる?」
と平然と告げた。
これは前もって言わなければ大喧嘩だ。
敢えて触れなくても良かったのだが、初回なのできちんと向き合うことにする。
「裕大さん、だいたい1時間くらいでリフレッシュできるの?」
「うん…この空白の時間が、やっぱ持て余すよね。辛いかな?」
「んー…私は気にならなかった…案外」
説明があったから準備できていたというのもあるのだが、ホテルでの独り時間は私も苦ではなかった。
昼間に一度あったエスケープも、ショッピングモール内だったのでお店を見ながら時間を潰せた。
翌朝まで閉じこもるなら怒ったかもしれないが、体調不良で寝ていても同じだし個人行動は責められない。
私もケロッとしているので裕大さんはいたく感動したようで、目元を押さえて肩を震わせた。
「…沙耶さん、ごめん…変な性分で…でも一緒に居たいんだ」
「うん、出来る範囲で良いんじゃない?」
「沙耶さんは、このまま付き合っていける?」
「そうだなぁ…裕大さんからは冷たさとか感じなかったし、忌々しく思われるなら離れたいけど…自衛できるんだもんね?」
「できる、やる!」
裕大さんは目を真っ赤にして、私の手に縋り付く。
そして胴に顔を擦り付けて、おいおい泣いた。
0
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
泣きたいくらい幸せよ アインリヒside
仏白目
恋愛
泣きたいくらい幸せよ アインリヒside
婚約者の妹、彼女に初めて会った日は季節外れの雪の降る寒い日だった
国と国の繋がりを作る為に、前王の私の父が結んだ婚約、その父が2年前に崩御して今では私が国王になっている
その婚約者が、私に会いに我が国にやってくる
*作者ご都合主義の世界観でのフィクションです
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
【25th Anniversary CUP】にて、最終ランキング3位に入りました。投票してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました!
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~
山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。
この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。
父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。
顔が良いから、女性にモテる。
わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!?
自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。
*沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから
えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。
※他サイトに自立も掲載しております
21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる