そんなあなただからすき

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　それから少し海を眺めて、おやつを求めて周辺を散策し素朴な味わいの焼き菓子屋さんを見つけてお茶をした。


「美味しいですね」

「はい…根岸さん、これ、ひと口どうぞ」

「あ、良いんですか、ではこちらもどうぞ」

「いただきます……ふふ、美味しい」

　会話が続くよう気を回して、オーバーなくらい聞き役に徹して。

　彼の方ももう慣れたのかきちんと私の目を見て話してくれるようになった。

　じいっと見つめると困り眉になるのが可愛い、歯を見せず笑う仕草が可愛い。


「（癒し系…）」

　根岸さんと居ると心が和んでゆっくり動く感じがする。

　優柔不断だったりオロオロする様子に苛立ったこともあったけど、彼は周りに合わせて最良の選択を考えているだけだった。

　穏やかで和やかでゆとりがあって…一緒に居て落ち着くというのはこういう人のことを言うのだろうと実感する。

　人の事を悪く言わず急がず焦らず、失敗すれば他の方法を考えて自分を押さえ込んで。

　それで損をしていることも自覚しているのに狡ずるく生きようとしないのがまた人の良さなのだ。

　思いやりを搾取されるのは悔しいが本人が許すなら外野は何もできやしない。


「（でも、）」

　だからこそ労いたわってあげたい、労ねぎらってあげたい、そう思った。

　守りたい、人に尽くして損をするこの人を守ってあげたい…そう思った。