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しおりを挟む「お、お世辞じゃないですよ、本当に…あの日は電車が遅れてね、御幸浜さんのせいじゃないのに深々頭を下げてね、一生懸命働いてくれそうだなと思いました」
「あはは」
「好み、と言うのか…とても良い印象で。…あの、でも職務上ね、手を付けたり出来ませんから…店舗に視察に出る時なんかは気合い入れて訪ねてたんですよ」
「…そうでしたか…」
やだ純な片想いじゃん…こんな良い人を舐めていたなんて本気で申し訳ない。
そして単純な私の心臓はだくだくと動きを活発にして体中に血が巡り、ぽっぽと温かくなる。
「御幸浜さん?」
「は、い、」
「具合悪いですか?」
「……根岸さんが照れさせるから…」
「……あ、僕が…いや、あはは…」
まるでお見合いな私たちは顔を真っ赤にして向かい合って、料理が届くまでモジモジと指を擦り合わせていた。
好いてもらえたから好きを返す、一時的なものかもしれないが今私は彼のことを憎からず思っている。
嫌いじゃない、ぎこちないけど続く会話。
悪くないかも、謙虚な姿勢。
『何でもない根岸さん』が自分の中の好きなものランキングの階段を駆け上がって行く。
食事は和やかに、互いのことを開示し合って本当にお見合いみたいだった。
趣味や家のこと、好きなものや苦手なもの、共通点があれば嬉しかったし差異もまた当然だと受け入れられた。
「美味しかったですね」
「はい、ご馳走さまでした」
「いえいえ」
もっと知り合ってから好意に気付きたかったけれど、不意打ちな告白もありと言えばありだろう。
そもそもよく知ってからなんて同じ職場じゃないと無理だし、世の中の大半の人は片想いからのスタートだろうからこれはむしろ普通なのだ。
私が彼を好きになれたらクリア、達成、ゴール…決定的に嫌な所も無いし纏まるのは時間の問題かな、なんてぼんやり思う。
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