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しおりを挟むさて、気持ちも落ち着いた私たちは車を地元へのルートへと戻して、ほんわか初々しいトークを続けた。
先程までよりもっと踏み込んで、でもまだ遠慮はあって、付き合い始めのこの空気も実に久々というかむずむずして気恥ずかしい。
私は高校生の頃に歳上の彼氏がいて、1年ほど交際してそれ以降は独り身だ。
キャピキャピできる性分でもないし積極的に合コンとかにも参加してなかったし、正直そこまで恋に溺れるタイプではないのだと思う。
「この後、どうします?根岸さんが良ければ晩ごはんもご一緒しましょうか」
おやつが早めだったので時間的にはまだ余裕がある。
出発地点の商業施設の駐車場に戻ったとしても夕方にもなってないだろう。
「そうですね、出来れば一緒に…ゆっくりしたいです」
「はい…」
彼の言うゆっくりとは何を指しているのだろうか。
隣に座ってのほほんとすることで良いのだろうか。
それとも大人の世界の不文律ではセックスを示唆しているのかな、この辺りは私はどうも察しが悪い。
スンとして運転を続けていると根岸さんは数秒後に何か勘付いたらしく慌て始めて、
「違うんです、いやらしいことはそんなに考えてません!」
と墓穴を掘った。
「そんなにって」
「違います、こうしてゆっくりお話でも出来たらって思っただけなんです」
「だけ?」
「ちょ、ちょっとは、き、キスくらいしたいとは思ってました、でもそんな、あの、いえもう黙ります…」
素直で面白い、いやはやこれは宇陀川が弄りたがるのも分かる気がする。
「あ、そういや」
宇陀川の件をどうにかせねばならないな、昼は「放っておいて下さい」と突き放して終わっているはずだ。
「なんです?」
「宇陀川さんに電話、するんでしょう?早めにしておいたら」
「あー、」
今聞きたい名ではなかったのだろう、根岸さんはピンクな気分から分かりやすく暗くなる。
しかし
「どっちでも良いんですよね、もう。僕は御幸浜さんと両想いになれて、揶揄われる材料は無くなった訳ですし」
と少々強気も覗かせる。
確かに私にアプローチを掛ける様子を弄られていたから、そこをクリアしたとなれば弄らせる理由は減ったように思われる。
元々、正当な理由なんて無いのだけれど。
となれば懸念は人事に関わることくらいか、しかしそもそも宇陀川の越権行為だし証拠を押さえれば勝てそうな気はする。
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