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しおりを挟む証拠を集める気にもならないくらいゲンナリするし、運転前に聞かなくて良かったと思うほどには精神力を削られた。
共通の部署に居るだけで簡単に手を出せる女扱いされているのが腹立たしい。
私が拒むという選択肢を加味していないところも図々しい。
「うへ…」
「なのでね、その…御幸浜さんと宇陀川さんを引き剥がすのが精神衛生上一番良いのかなって…僕にも、御幸浜さんにも」
「確かに…まぁでも、直接言われるんでなければ我慢しますよ」
「…すみません、僕が付け入る隙を与えたばかりに」
2月の空は16時を過ぎるとどんより暗くなってきて、二人の行く先に影を落とす。
両想いでもっとハッピーに浸りたいのに宇陀川が煩わしい。
どうして他人にここまで干渉されねばならないのか。
私だけなら宇陀川に冷遇されても何て事はないのだが、根岸さんを挟むと私は彼を守るため不要な我慢を強いられることになる。
根岸さんだって同じこと、彼は私と雇用を守るために弄りを受ける。
共にウダガワから離れるならそれが一番、でもあんな奴のために労力を使うのも癪だという気持ちもある。
二人して「うーん」と渋い顔をしていると、
「あ、」
根岸さんの携帯電話に着信が入った。
「宇陀川さんですか?」
「…はい」
「……根岸さん、私は何を言われても大丈夫ですから。根岸さんの仕事がやり易いように」
「……」
彼はしばし百面相をした後に真顔になり、
「今からの僕の発言は著しく虚偽を含みます。ですが事態が変わるかもしれないので…許していただけると嬉しいです」
と告げて受話ボタンを押す。
「もしもし、お疲れさまです、はい、ええ」
『……、………、……、』
ごにょごにょと漏れるのは宇陀川の肉声で、聞き耳を立てていると根岸さんは空いた右手で私の左手をギュッと包み込んだ。
何を伝えるんだろう、席を外さずに聞いて良いということなのだろう。
そして相槌の切れ間に息を吸った彼はいつもの調子で、
「……、そうですね、半日デートしてみましたけどね、彼女、どうやらフロア長よりもっと偉いムラタの人と交際してるみたいなんですよ」
と大法螺をこいた。
「(…何だそれー⁉︎)」
耳を疑うとはこのこと、彼の前置きが無ければすぐさま声を上げて通話の邪魔をしていたに違いない。
「誰とは言えません、僕も聞けませんでした。でも相当にズブズブの関係みたいですよ、ホテルどころかディナーにも漕ぎ着けられませんでした」
「(何だそれ何だソレー⁉︎)」
「僕ごときがとても手を出せません。義理でデートには誘われてくれましたけど、何かあれば『セクハラパワハラで言い付けるから』ってピシャリですよ……宇陀川フロア長も軽口に気を付けて下さい、彼女、気に障る発言とか全部記録取ってます。誰とは言いませんけどリーチ掛かってる人もいるみたいですよ…え、そりゃ、ムラタ側の人事権を持つ人ってことじゃ…ないですかね?」
『……』
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