お嬢の番犬 ブラック

あかね

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「お嬢、今日はスイミングやけど、そのまま行く?まだ時間あるからどっか寄ろか?」

運転席の和久わくが、バックミラー越しにみやびへ声を掛ける。

「え、水泳道具が要るやんか、帰らんと」

「あぁ、任してよ。トランクに載せてんよ、プールバッグ」

そう言って助手席の垣内かいちがドヤ顔で振り返ると、彼女はひどく困り顔をして口を尖らせた。

「…はや君、うちの部屋に入ったん?」

「へ?入ってへんよ。新しい付き人の…和久、何さん?」

「ミユキさんや」

「そう、あの人が…俺らが出る時には準備してくれててん。よう気が回る人やね」

「…ふーん…そう…」

 主人が不在の間に使用人同士で仲良くしている、そんなことは毎日当たり前に行われている。

 なのに雅は面白くなく、途端に露骨な不機嫌を表す。


 今までは特別な着付けやヘアセットの時だけだったのに、つい先日からは彼女専属の女性使用人が付くようになった。

 なので雅に関わることは垣内と和久とミユキの3人で行うのだが、少女は自分のテリトリーに同性が入り込んだことに対して、形容できぬモヤモヤを抱えている。
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