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しおりを挟む商店街は平日ということもあって人もまばらで、地元客が夕飯の買い出しに訪れているくらいの人出の少なさだった。
「ねぇ…はや君、歩くの速い…いつも言うてるやんか…」
週初めから履き始めたローファーはまだ足に馴染んでいないのか、男を追う少女の靴がカポカポと可笑しな音を立てている。
「あ、すまんすまん…速いか……んー…手ぇ、繋ぐか?」
「え、ええの?繋ぐ!」
雅は待っていたと言わんばかりの笑顔で垣内の隣へ駆け寄り、久しぶりに触るその手の感触にうっとりとした。
「なかなか…久々やな…」
「うん……嬉しい」
「足、痛ないか?」
睦じい雰囲気の二人はさながら恋人の様、しかして身分も年齢も隔たりの多い関係はやはり子供と保護者の枠から抜けられはしない。
「平気!ふふ…」
雅のそれは幼い恋心、同世代の男子を知らぬ彼女は狭い世界でただ、なんとなく、ほんのりとゆっくりと…垣内へのそれを育んできているのだ。
垣内は二人きりだと、彼女の想いをはね付けも察しようとも受け入れもしない。
なんせ番犬は主人の仰せのままに傍に侍り、言い付けと彼女を守ることを目的としているのだから。
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