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しおりを挟む更衣室から出て来た雅は何故か浮かない顔で、
「お嬢、おつかれ…どしてん、なんや…」
と垣内が声をかけると涙ぐんで足早に靴箱へと歩いて行ってしまう。
「?なん…和久ちゃん、俺何かしたか?」
「いや…プールで何やあったんや、聞こ」
二人は駐車場の車へ向かう雅に追い付き、後部座席へ入れてから話を聞くことにした。
「乗りや、どしてん…」
垣内も彼女の隣へ座り、和久はキーロックだけしてミラー越しに雅を見つめれば、彼女ははらはらと涙を流して言葉を必死に紡ぎ始める。
「お、泳いでる時、プールの、中、で、」
「うん、」
「…見せ、てる人が…居って…」
「は?」
「水着、の、なか、見せてる男の人が…隣に居てて…ゆっくり歩いてて…怖くて…ゔ~…」
「垣内、露出、てことやろ…一般の客か」
この施設は県営で、スイミングスクールに使うのは壁際の第1コースだけ、授業中も一般のプールの利用者は他のコースで普段通り泳いでいるのだ。
「お嬢、水の…中か、どんな奴やったか覚えてへんか?」
「分がらへんッ…水着も…覚えてへん…」
「せやな、うん…隣はウォーキングやったよな、和久ちゃん…見せつけながら歩いてたってことか、」
第2コースは水中ウォーキング専用、子供の方を向いて局部を露出して歩く不届き者があの時間居たらしい。
垣内は歯をギリギリと鳴らし、黙り込んでしまう。
「正面は監視員が居てたけど、水中やと見えんか…どやろ、特定までは出来んぞ?帽子にゴーグルやと…もう帰ってるかもしれんし…他の子は何も言うてへん?お嬢だけか?」
「前に見た子も居るって…うち…初めて…いやや…」
「…常習犯やな、これくらいの子は見てもうても恥ずかしゅうて親や大人に言われへん…ちょっと職員さんに言うてくるわ。垣内、お嬢と…」
和久がロックを解除してドアレバーに手を掛けると、
「俺が行く。特定出来んでも注意くらいしたる、待ってろ、お嬢」
と金髪の弾丸が車を飛び出して行った。
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