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4日目
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しおりを挟む4日目。
「もう朝か…ふァ………あ!」
昨夜はなかなか寝付けずスマートフォンをつついて夜更かししてしまい、目が覚めると集合時刻の30分前、9時30分だった。
「やば、シンタローさん来る…着替え…いや、顔、洗って…」
寝起きの秋花は当然だがすっぴんで、普段のギャルメイクとは程遠いさっぱり顔である。車崎とは十代の頃からの付き合いなので当然素顔も知られてはいるのだが、しばらく見られていないとやはり違和感を与えてしまうだろう。
とりあえず顔を作ろうと洗顔をして、髪はちょちょっと直して座卓にメイクボックスを開く。
保湿、下地、ファンデーション、眉、アイメイクは特に念入りに…と、アイシャドウを付けたところで玄関チャイムが鳴った。
「へ……まさか…?」
下着を隠してからドアスコープを覗けば案の定車崎で、扉の前でにこにこと元々の垂れ目の目尻をさらに下げて立っている。
「おはよ、」
「お、はようございます…あの、まだ45分…」
「楽しみすぎて緊張してん、トイレ貸して」
「え、はい…」
車崎は遠慮なく秋花宅に上がりトイレを使い、戻ってそのまま化粧台と化した座卓の横に腰を下ろした。
「あの、まだ化粧してて…」
「うん、待つよ」
「いや…」
「てか、完成ちゃうの?それ」
まだ1色しか置いてないしアイラインも引いてない、
「まだ盛りたくて」
と彼女が返せば、車崎が
「それくらいでええやん、充分可愛いよ」
と言うものだから秋花は言葉を失って顔を背ける。
「あれ、照れてる?」
「照れますよ」
「ひゃはは…へぇ…いっぱい化粧品持ってんねんなー、……今してんのそれ、付けまつ毛ちゃうの?」
「エクステです…付けまより楽ちんでいいんですよ……シンタローさん、あの、着替えるので出ててもらっていいっすか?」
「あ、悪い悪い…ん、待ってんで、」
スッキリした車崎は素直に玄関から出て行った。
そこから秋花はスピードアップして着替え、メイクボックスを片付け…やはり気になったので、普段より柔らかいブラウン系のアイライナーで目元を飾ってから片付ける。
10時ちょうど、秋花が表へ出て玄関の戸締りをしていると
「お、スカートやん、かわいい」
と車の外で待っていた車崎が賛辞を述べる。
しかし
「いや、昨日あんなこ…と…シンタローさん、それ、」
彼へ振り返った秋花はピシと固まる。
「ん?どれ、」
「それ、シャツ、」
暑くなったのかジップパーカーの前を開ければ、中に着ているシャツは燕脂色、つまりは秋花のワインレッドのワンピースと酷似した色味であった。
「なにが?」
「……こんなん…ペアルックやんか、嫌、着替えて来ます」
「おいおい、待て待て、まぁ、ええやんか、」
裾を翻して解錠しようとする秋花の手を取り、車崎は強引に愛車へ乗るよう促す。
「こんなん恥ずいわ、デニムの色も一緒やん、嫌、」
「それは知らんて、ほい、乗れ、」
秋花はアイボリーのタートルネックのカットソーに件のキャミソールワンピース、ライトブルーのデニムジャケットを羽織っている。
対する車崎は臙脂色のシャツにグレーのパーカー、そして使い古したリアルダメージのライトブルーのジーンズ、つまり全身の色味が非常に似通っていて…申し合わせたようなカップルコーデになっていた。
デニムの素材感だけ合えばいいと思っていたのに色まで同じ、
「張り切ったみたいやん、恥ずい、」
秋花はぎこちなく助手席へ座る。
「初デートに張り切った、でええやん、ほい、出すでー」
「いや…」
周囲をしっかり確認して、車崎はアクセルをゆっくりと踏んだ。
「曇ってるけど、涼しくてええな、」
「……」
「シューカ、機嫌直して」
「怒ってるわけちゃいますけど……ふー…あれ、ライト…色変えました?」
陸橋の影で停止すれば、オートライトと連動して車内のライトというライトが一斉に灯り賑やかになる。
中華料理屋の行き帰りに乗せてもらった時は運転席と同じブルー色のLEDが足元を照らしていたはず、秋花は少し首を傾げて光源を覗き込んだ。
「うん、助手席だけピンク。シューカ仕様やで、ひゃは」
「は、ピンク好きちゃいますよ?」
「雰囲気、好きな色あったら言うて、替えるから」
「はぁ、」
デートが決まってから取り替えたのか、おそらく昨日の休日に作業したのだろう。
専用席を作るなんて可愛い人、それは素直にそう思える。
日の元に出ればライトは消え、その後はトンネルに入る度に点灯した。
「ん、高速?」
「うん…淡路島。デートっぽいやろ?」
「そうっすか?」
「遠出ってほどでもないけど、ドライブしたいから」
「ふーん…」
普段は街中のチョイ乗りのみ、車好きの彼なら長距離運転も苦ではない。しかも景色のいい場所をノーブレーキで走るなんてご褒美のようなものだ。
下道でも瀬戸内海を臨みながら沿岸を走るのも楽しい、島の沿岸もさぞかし気持ちが良いことだろう。
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