胸に手を置かれたら、朋也くんのことしか考えられないじゃん。ー無気力系後輩がグイグイ来るのは想定外でしたー

茜琉ぴーたん

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7…胸に刻む(最終章)

45(最終話)

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 それから、毎夜のルーティーンであるストレッチを朋也くんは見届けてくれた。
 そして「せっかく北海道まで来たのになぁ」なんて恨めしそうにボヤくも、その顔はどうしてか笑っている。
「……ふー…毎日しないとね、関節とかなまっちゃうから」
「わざとらしてる訳じゃないんすよね?」
「焦らすほどの大層なカラダしてないって」
 ケラケラ笑ってカーペットの床から腰を上げると、ベッドの上で胡座あぐらをかく彼の表情が変わる。無気力なりに朗らかだった目元は、一旦伏せられて鋭くなり戻って来る。
 あれ、怒らせたかな、引き伸ばし過ぎたかな、と固まる私。
 その腕に手が伸びてきて、グッと掴まれた。
「…焦らされて、ジブンはいっぱいいっぱいですよ」
「え、あ、」
「初夜、ね」
「う、ん…」
「この胸も、ジブンのもんっすよ」
 引き寄せて薄い胸に顔を埋める。鼻先はすぐに肋骨を叩き、呼吸が困難になるほどの肉の阻害も無い。
「こんなんで、良いの?」
「何でも良いんすよ…美紀さんなら」
「…何回も同じやり取りしちゃうね」
「ジブンの前でだけなら構いませんよ。何度でも言いますよ、美紀さんの胸、ジブンは好きですよ」
「ありがたいねぇ」
 心臓の音を一番近くで聴いてくれる存在、その彼の頭をぎゅっと抱える。
 いとしみが溢れてまるで母性みたい、ヨシヨシと硬い髪を撫でた。
「恥ずかしがるのも良いし、開き直るのも可愛くて好きっすね…ドヤって反応待ってるのも…可笑しくて可愛い」
「なら自信持つね」
「過度な露出はダメっすよ」
「しないって」

 喋りながらも次第に体は深く絡んでいき、朋也くんの
「まだ、新婚だし勿体ないからしたくないんすけど…外に出しますからお願いします、このまま、」
の声でひとつになった。
 子どもが出来たとしても問題ない、むしろウェルカムだけどそれは天と朋也くんの制御能力に任せることにする。
「……♡」
 初めての感触に目の前がぐわんと回る。
 ぼやけた視界がクリアになれば、それいっぱいに愛しい朋也くんが映る。
「愛してます、美紀さん」
「ゔ、んッ♡」
「美紀さんは、ジブンの、活力っすよ、」
「なに、それぇ、」
「気力が出る、みなぎる、なんて言うんすか、萌え、うあー…マジ気持ち良い…」

 色っぽく腰をスライドさせる朋也くんに惚れ惚れして、ついて行こうと必死にしがみ付く。
 ピタッと張り付く互いの体、離れた時にコミカルな音が鳴るくらいに密着して張力が効いている。
「(ぺったりくっ付く感じ、気持ち良い)」
 これも私の体が扁平だからだよね、言ったら白けるだろうか。朋也くんの前でだけ許された私の戯言ざれごと、定期的に放っては保険を張っていないと落ち着かない。
 自虐しては「そんなことないっすよ」を待っている。
「ひとつになってる感じ、します」
「うん、私も同じこと考えてた」
「ん…愛してます、美紀さん」


 朋也くんはその後、私にたっぷりな愛の言葉を叫び達した。最後は少し遅れたが、ナカではなくおヘソに噴射して。
 そして煮え立ち制御能力の落ちた頭で、顔に声に体にと私を作るあらゆる要素を褒め讃えた。
「ハァ…美紀さん、イく時の顔超カワイイ…こういう時の声もすげぇそそられるし…気持ち良かったし…こんなに出た……うっかり中出しするとこだった…まだ二人で新婚したいから…でも…美紀さんに似た子供とか、超カワイイだろうなぁ…悩むわ…」
 ぶつぶつと、独り言のようでそうでもない言葉は聞いていて恥ずかしい。
 あっさりさっぱりな私の女性の部分を、これでもかと引き立ててくれて本当に恐れ入る。
「…そういや、私が胸の自虐するのは朋也くんの前だけって決めたじゃん?」
「ええ、こうしてる時のみの約束っすね」
「朋也くんが脱・無気力になるのも私の前だけってことでオッケー?」
「…そうなりますね。無気力に生きてるつもりは無いっすけど」

 彼の情熱を見て与えられるのは私だけ、脈の速い心臓がさらにキュッと圧迫される。
 むふふと笑う私を朋也くんは汗を拭きつつ見下ろして、隣に寝転び小さな胸に手を置いた。
「なんすか?」
「ううん、幸せだなって」
「…ジブンもです」

 『胸に手を当てて考える』なんて慣用句があるけれど、彼が私の胸に触れた時から私は朋也くんのことばかり考えていた。
 心臓に触れるこの感じ、脈がひとつになって境界が失くなる感じ。
 私に接地する朋也くんの体温や動き、全部全部が愛おしい。

「幸せだね」
「うす」

 明日はどこを観光する?なんてぼんやり話をしながら、私たちの新婚初夜は過ぎて行く。

 今夜も彼は私の胸に手を当てて、彼を想う私のハートを優しく撫でてくれた。



おわり
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